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    夢見集【38】〜【42】『……報酬の話に移ろうか』/『光明のない闇に流され』/『支柱に活を見出せ』/『そんなリリーに騙されて』/『ファイル星雲』





     『……報酬の話に移ろうか』(952字)
     袖口が十字に避けた真っ赤なコートを着ている男はヴァッシュ・ザ・スタンピードと相対している。大兵肥満の男は灰色の髪を逆立て不敵に笑うが、そこにあるものは単に自分の膂力への盲信や相手に対する侮りというよりも、なにやら策を持ち合わせている自信の表れと見えなくもない。とはいえスマートとは言い難い、いかにもな外見のその様はやはり、初回か次あたりにでも登場しそうな雑魚の雰囲気。鶴ひろみ扮するメリル(?)が傍にいてなにやら耳打ちをし、最後には彼を励まし援護する旨を伝えて十数メートル後ろにそそくさと下がる。
    「せいぜい頑張って思いっきりやってや」とか「追い詰めた」と口にするヴァッシュ。しかし手付金を受け取らないと彼は動かないらしい。とりあえず様子見をしながらも弾倉に弾込めをする。銃弾は一発あたり15万円もするので、節約するために銀のコーティングをした弾丸をとりあえず一発のみ。

     古い民家でヴァッシュは敵と睨み合いを続けている。一日掛けて弾を節約しながら戦えば時間あたりの金額単価はさほど高くないと本人は考えているが、だとしてもやはり高い。いつからか受け取る報酬を自分自身で交渉しなければならないことになっていて、今回のスポンサーと話し合いをする状況になったようだ。
     相手は、『フロントミッション2』に登場するバングラディッシュはアロヨ運輸(?)の豪腕社長。その肌は耐えぬいた暑熱の歳月を語り浅黒く、非常に恰幅よく頭は綺麗に禿げ上がり、相当に膨張した腹部に窮屈そうなピンクのポロシャツはボタン一つだけ嵌め、残りは風通し良く開け放たれている。どう遠慮がちに見ても暑苦しいと言わざるを得ない体の割に、口髭のもとにある赤黒い唇は静かに閉じ、元々太い眉は細めに整えられ、大きな目は伏せがちに思慮深げとなっては何やら気怠げな印象すらある。下には微風に揺れる涼やかな灰色地の麻ズボンを穿いていた。
     社長の娘(確か主人公か、その仲間のことが好きだという設定……?)が登場する。綺麗な長い黒髪に褐色の肌、父親似の愁い瞳と長い睫毛が一層の美しさを映えさせる。父親とヴァッシュのどちらを応援していいかと悩んでいる彼女に、しばらくして『フロントミッション4』の日本人パイロット、サヨリのイメージがその顔に重なるのだった。


    ※※訂正:三箇所訂正します。本文には〜バングラデシュ〜アロヨ運輸(?)とありますが、ゲーム内(『フロントミッション2』)では「アロルデシュ」となっており、バーグ運輸が正しいものです。また、サヨリはサユリ(三塚さゆり)が正しく、登場作品は4ではなく『フロントミッション2』です
    おそらくですが、記憶違いをしたままの情報が夢に出たのだと思います





    『光明のない闇に流され』(1045字)
     薄暗い道を進み階段を降りていく。行き止まりの正面にドアが二つある。両方共を開けてみると同じ部屋に通じている隣り合ったものだった。内部を隅々まで三回見回してみてから中に入る。どこからかの照明が目の前にある男性用小用便器を薄ぼんやり浮かび上がらせる。
     後からついてきたはずの男が部屋の中に入ってこない。どうやら怖がっているようだ。私も何となく幽霊が出そうに思えてきて、一旦部屋を出ることにする。足元が揺れている気がする。地震かもしれないと思う。狭い地下の奥の奥で地震に遭遇しては最悪だと感じつつも、いざとなったら目を開けて夢から逃げればいいのだと素晴らしい発見をした気分で安心し、もう少し成り行きを見守ってみる。

     目が覚める時に近い、半ば意識された上での場面転換がある。目の前は真っ暗、空には厚い雲が立ち込め、私はどこかの岩壁の一部が砕け崩れた、周囲3m厚み5mあまりの岩石の小さな浮島にうつ伏せになっている。首を上げ周囲を確認すると隣りを並走する岩塊の上で父母も似たような体勢で身を縮めているが、兄の姿が見当たらない。安否を気遣う。当初は動きを感じさせず、徐々に勢いを増し、なにやらそれぞれの乗っているわずかな地面は泥流の中を流され進んでいるのだった。父母はヘルメットをかぶっている。
     方々では岩が無数に流れ、着の身着のまま不安におののきながらも状況の変化に身を任せざるを得ない、家族の集まりや個人がばらけて点在している。少し離れた場所にいる恐慌と絶望に駆られた数人の若者グループは、いよいよ狂気に転身して以降、身軽に次から次へと不安定に揺れ動く足場を飛び移り、あるいは根っからあったものが開放された結果の凶暴性がむき出しとなり略奪を行っている。
     兄はどうやら生きているらしく、コンパスを握りしめ、自分たちの近くで流される方向を測っているみたいだった。父は何故か懐からたくさんの棒磁石を麻紐でくくった束を取り出し、目視の可能な範囲内で他に流されている数家族に渡そうとするが、その前に簡易の方位磁石にしなければならないと考えていて、かじかむ指先で重心の部分に紐を結び直す作業に手間取っている。
     略奪者に見つかるのではないかと私としては内心気が気ではない。後でいいからとりあえず家族単位でばらばらにならず、出来るだけまともな人間同士で集まったほうがいいのではと、同様に流される人々に声をかけようとするが、頭を上げると若者の暴徒たちに見つかりそうな気配があり、父に注意される。





    『支柱に活を見出せ』(781字) 
     居並ぶ道着を来た連中の中から、代表として名乗りでてきた男と柔道の試合をすることになる。中学校の先輩で、かつて伝説的な不良と恐れられた人がどうやら私の相手となるみたいだ。ニヤついた顔のまま近づいてきて、いきなり組み付いてくる。
     小外刈りのような技。思いっ切り畳に打ち付けられるが、何度も同じ手を使ってくるので、ひょっとしたら返し技を使えるかもしれないとの閃きがあり、体落としの動きで身体をぐるりと反転し、軸足とは反対側の足をつっかえ棒に相手の突進する勢いを利用して躓かせた。技ありくらいの感じで綺麗に伝説の不良は倒れる。

     いつの間にか場所が変わり、夜祭の盆踊り会場のようなところで先輩と向かい合っている。自分の手の内を読まれていると知ってか警戒してか、なかなか組んでくれない。祭りのために設営された、白いカバーの掛けられているやたら長いテーブルの周囲をいつまでもグルグル逃げまわっているので、こちらは段々と面倒になり、積極的に追いかけることはしていない。
     いきなり懐から黒縁の瓶底眼鏡を取り出すとぎこちない手つきで掛け、こちらにも同型のもの薦めてくるのだった。よく見ると眼鏡を扱い慣れていない人間がよくやるミス、というか無神経さでレンズが直接指で持たれ、随分汚れ脂が浮き上がっていたのであまり使いたくもないのだ。似合いもしない瓶底眼鏡をかけているその姿は、昔のドラマなどに端役として出演する村の駐在さんか、『キテレツ大百科』のベンゾウさんにも見えた。


    ※夢を振り返って:返し技は組手をしている最中に『YAWARA!』のことが頭に浮かび、瞬間に真似してみようと思ったのだが、おそらく返し技としては間違っているだろう。本来は成立しないのではないか
    そう言えば不良の顔は妙にマンガ的な造形で、当作に登場する下級生の柔道部員、須藤を丸刈りにした感じだった





    『そんなリリーに騙されて』(540字)
    狂死人病:生きている人間を見るとニヤリ笑いをしながら死体を見せてやりたくて仕方なくなる病気
    黒猫懊悩症:西日本の人間が100%の確率で罹る

     タイガーマスク――1・2・3……マスター!! タイガーマスクの顔のアップから徐々に全身へと画面に現れ、それを覆い隠すように太い赤字のタイトルが流れる。
     タッグ・マッチかハンディ・マッチらしく、私は二人のタイガーを選ぶ。画面には現代風の洗練された線の細い洒脱な姿。敵は「○○リリー」という、全身をピンクのタイツで固めたスタイルのいい欧米系の女が、ひとりだけでこちらの相手になるようだ。眉毛は金、瞳は鳶色、唇はぽってりと熱くセクシー。『○○リリーは上海リリー♪』といったテーマソングがどこからか流れる。
     試合が始まると彼女は様子見をすることもなく、早速腰をかがめにじり寄りながら、タイガーに近づいたところでさっと伸ばした腕で包み込み抱きついてしまう。組み伏せて相手の体液を吸い取る戦法みたいだ。どうやら「○○リリー」は蝶の化身のようで、唇が20cm程度に伸びたかと思うとそのまま先端を尖らせていった。
     髄液は案外甘いとか、大腸から下の液は吸わないが理由は言わずもがなだとか。


    ※夢を振り返って:○○の部分は伏せてあるわけではなく、目が醒めしばらくして忘れただけ





    『ファイル星雲』(1488字)
     ゲームエッセイ(仮)というジャンルの新しい文章をどうやって書こうと考えていた。一つの文章ファイルに対して子ファイルのようなものが作られ、ゲームタイトルを冠した親ファイルの下には、
    ・と感じ
    ・~を思って
    ・~……
     等の名前を有する無数のファイルが出来てしまっている。中身はいくつかの単語を記した程度のもので、親ファイルの文章に組み込めばいい、というか、第一そうしなければどちらも形として成り立たないのではないかと感じさせられた。

     フォルダ内部のファイルの関連付けや偏在の分布を調べるソフトを使い、中身がどんな状態になっているのかを確認することにした。
     イメージとしては360度の円の中心点から全ファイルが、その数の分だけの直線が伸び等間隔で並び、最終的には円形へと展開する。例えばファイルの数が6ならば、60度ごとに直線が円の中心から外側に向かって一本引かれ計6本となる。10ならば36度間隔で1本、12ならば30度で1本という具合だ。ちなみに、直線の長さはファイルの情報量の大小(関連付けファイルの多さ)により伸縮する。

     それぞれの直線の頂点をつなげ結果的に形が正円になる場合は、フォルダ内におけるファイルごとの使用容量が等しいことになる。
     ソフトを使いグラフを確認すると、フォルダ内の他の文章ファイルに比べてゲームエッセイに関する部分の値が飛びに抜けて多く、正円とは程遠い歪な形になってしまっていた。

     次に表示方法を変え、子ファイルに該当する情報が親ファイルに対してどれくらいあるか、より視認しやすい3D表示で調べて見ることにした。
     先ほどと変わらず、ただ今度は中心点からフォルダではなく、子ファイル数/親ファイルを360度の域内に数値に沿った角度で空間が分けられている。他の文章を選択して値がどう見えるのか確認する。
     とりあえず、一般的な親ファイル各自に対して関連がある項目の中でもさらに分類される。続いて種類の識別に応じて角度が割り当てられた空間内には、子ファイル(関連付けのあるファイル)の存在は都会の秋の夕闇時に見える特等星のように、ポツポツと数個確認出来るだけだった。
     しかし、例の文章を扱った親ファイルを展開しその中の子ファイルの値を表示させると、まるで空気の澄んだ高原の夜か、いやプラネタリウムでも目の前にしたかの圧倒的な広がりを持ち、断片的な単語を内に宿した星々が空間に散らばっている。なんだか気味が悪くなった。
     これら全て、いつのまにか訳の分からない下位ファイルがたくさん作成されているからだと理由ははっきりしていたものの、だからと言ってどうしたらいいのか私には対策のしようがなかった。


    ※夢を振り返って:眠る寸前に、タイトルだけつけたゲームに関する文章のファイルを大量に作ったことは事実
    まずは忘れないうち、外側のパッケージだけでも可能な限り整えておきたかったからだが、結果的にどういったゲームを扱うか、機種やジャンルに加えて実際にプレイした時期も、特に整理・分類もしない状態のままにしていた

    それらの文章は、ゲームの遍歴と当時私の関わり方を記すのが目的だったので、本来は年代に合わせつつ順序に沿って表されることが正しい姿であると感じていた。が、しかし頭に浮かぶままの適当な順番でも仕方がないだろうなどとも思うのだ
    そうでなければ、いつが最初であったかなどといった実際に触った時期や発売年に囚われ、または調べなければならず、一向にタイトルが決まらないということにもなりかねない
    見ている時は非常に苦しい夢だった



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    夢見集【33】~【37】『いやなことを思い出す』/『和解・成長・疑惑再燃・復讐』/『代わりといってはなんだけど』/『濡れた布団もいつかは乾く』/『嘘栄養学入門』『俺は遠慮しておく』





    『いやなことを思い出す』(423字)
     N上とW森、そして私の三人でビリヤードをやっている。初めは順調にゲームを重ねていくが、N上はこちらに対して一人でやれといってくるのだった。何故だと思いながらも一人でやることにすると、二人で女の子についてやら何やら、密談めいた感じで勝手にやり始めた。どうにも気分が悪い。その話には混ぜてくれないみたいだ。
     ビリヤード台のラシャの端あたりには太さキュー一本分と同程度の棒が立っていて、そこに様々な大きさの木材が紐でくくりつけられたりネジ止めされている、一見乱雑に見えるが最終的に示される運動の終着は単純な目的となるところのもの、そのために作られた木製のピタゴラスイッチがくっついていた。邪魔に思い取り外そうとするが、N上は外さないほうがいいと少し遠くから、後ろを見せていた顔を半分だけ向け注意してくるのだった。
     結局何も出来ないしさせてくれない。彼らの関係は時々そんな感じになり、私もまた時々嫉妬をどうにも隠せないほどになることがあるのだ。





    『和解・成長・疑惑再燃・復讐』(1715字)
     かつて働いていた職場でいざこざになった高校生二人組のうち、その片割れの一人と街中で座って話している。
     場所は個人商店の前にある小さな石段。雰囲気はあの街の現地の近くといった感じだ。俺が下から二三段辺りに座り、何故か後ろで脚を広げこちらの体をそのあいだに挟む、妙な体勢でI岡が座っている。元高校生は時々近くの地面に腰を下ろし向かい合い、また背を向け身体を左右に揺らしながら周囲を小さな輪を描くように歩く。
     俺は目の前をふらふらしている相手に、人生ではどれほどの困難が待ち受けているのか、お前たちの知っている世界はどれほど狭く、またどうやって生きていくことが正しいことであるかなどをそれとはなしに語っている。一応話を聞く姿勢を向こうは持っているようだった。当時よりも少しだけ大人になって落ち着いたのか。
     こちらにも怒りや不快感、憎しみなどの感情はあまりなく、であっても話しているときには相手に色々と教えることを通して、どれほど自分たちが無知無力であるかを知らしめさせたいと思っている。それとなく不安や悲観の植えつけによって頭を抑えつけてやれればいいと、ちょっとした復讐心も混じっている。

     現在座っている石段から十メートル程度先に、薄めの灰色によれた半袖のYシャツ、下は群青色のだぶついたスラックスと風采が上がらない男性(ホームレスよりは小奇麗にしているが、生活保護を受け昼間から何することもなく街をふらふらとしているイメージ)がいて、近くの植え込み周辺を手ぶらでウロウロしていた。何かを探しているようにも漁っているかにも見えた。どちらにしろ安酒に呑まれている酔っぱらいの調子で、顔はニヤついている。
     元高校生は当時を思い出させる相変わらずのイヤな顔をしだして、目の前の男性にちょっかいを出そうと窺っているみたいだった。その人に何かをすれば、俺は少年を躊躇なく遅疑なく全力で殴ろうと、自分の中で固く強く決意する。目的もはっきりせず所在なげに、あるいはめぼしいものがないか探しているのかもしれないが、昼間の街中で自らが異様な姿として目立つことすら気付かず、植えこみ周辺をウロウロしているように見える男性の姿は情けなく、醜いと言っていいものだった。
     しかし様々な辛苦を経験してきた人生である。末に現在の惨めとも映る状態になったのだろう。あくまでもおそらくだが。
     家族だったり、例えばだが支援機関の人間や役所の生活保護課の人間に生活態度を指導され、改善を促されるために多少きついことを言われるのは場合によっては仕方ない、あるいは必要であるとも言える。ただ、何の苦労もせずに親に甘やかされ庇護されて育てられてきただけの子供(夢の中では二十歳くらいのイメージ。大学生の雰囲気はなく、フリーターかニートという感じでまだ親の脛かじりをしているようだった)が、彼の存在を否定したり目の前の姿を馬鹿にしたりするのは絶対に許せない。

     後ろにはI岡がいるので、それなりには援護してくれるかもしれない無闇な期待はあった。仮に彼が手を出さなくとも公平な審判者の顔でいてくれるなら、何より巡りが悪く話し合いのきっかけがすれ違うとして、互いからの自棄気味な問題解決という力任せの場面にエスカレートするかもしれない状況を抑える役割を担ってくれるのではないか? それに特にこちらが不利となった場合でも、正当な理由を有する教え諭し、叱りつけの行動であるとする判断の後押しを友人の情において多少の贔屓も期待したかった。
     話し合いや言い聞かせの段階で過剰な暴力的・拒絶的な反応をするなら、とりあえず冷静さを装っていても単純に頭数の問題で相手への沈黙を促せる。また単に無視しようとすれば、I岡の無言に見透かす視線は自分が怒りを込めて睨みつける以上に心中を掻き乱す圧力になることは間違いない。なにしろ、彼は俺や眼の前の冴えない中年男性とは違いまともな側の大人だったから、元高校生のあらゆる点に対して上位に立つ存在なのだ。
     まだ人間的に成長していなかったことに対する苛立ちと、これで事によればぶちのめす正当な理由がつくれたと思い、薄暗い熱に浮かされる。





    『代わりといってはなんだけど』(491字)
     宴会場に入って長テーブル前にまで来るとN上とその姉が座っていた。こちらのことにも気がついたようだ。二人は本当に似た顔をしていて、1.5卵性双生児くらいの感じだ。彼らの斜め前あたりに腰を下ろしたかったが、どうやら駄目らしいというので遠慮しないといけないことが分かる。仕方なく離れた位置に座る。
     なんとなく残念な気持ちでだらりとあぐらをかいて足を休めていると、後ろにも同じテーブルがあって自分の背中越しに中学の同級生Y田部がいるのだった。懐かしい顔だ。あの頃と変わっていない。肉付きの良い大きな四角い顔は当時では老けている印象すら与えたが、時を経た現在となってはむしろ子供っぽい顔付き。彼に声を掛けられるが特に話すこともなく、一応の愛想を込め挨拶だけを義務的に返す。中学時代から特に仲が良かったわけではないから。
     N上と話が出来ないのならしょうがないと恨めしい気持ちを残しつつ半ば諦め、しかしこれじゃせっかくの飲み会なのに話をする相手がいなくなった。一言の短い会話を終えて自分の着く席の方へ向き直ったY田部の肩口を軽く叩いた。再度相手になってくれるように促してみることにしたのだ。




    『濡れた布団もいつかは乾く』(916字)
     所長のH守氏から私へ、あの組織で働くことの社会的意義についてありがたい話。

     彼は盗んでいないと、面と向かい一度も目を逸らさず至極冷静に、一切言葉をつまらせることもなく、穏やかな抑揚で告げた。そうなんだ――……だとしたら誰が。

     正座をした人の腿の上に正座をして座っている。目の前は幅十数メートルの擬似レンガ造りの階段の下り。右と正面にも同様の階段があり、それらに囲まれるようにして広いスペースの踊り場には、色とりどりの花が植えられた花壇は材質をやはり一[イツ]にしてある。顔を上げると奥には四、五階建ての巨大ショッピングセンターがある。最上階は庭園となっていて、一階下の外周もぐるっと囲む形にテラスとなっている。その外壁には地の色がピンクに、踊る勢いの白い筆記体で宣伝文句が書かれている横断幕。雰囲気は何故か厚木か海老名だ。
     布団を四つ折りにして脇に抱え件の階段を降りていく。乾燥機にかけ終わったので家へ帰ろうと思っている。途中で誰かに呼び止められ、今自分が運んでいるものが姉のものだったと知らされる。

     場面変わる。結婚式場なのだが、キャンドルサービスのために部屋の照明が消され、正面の新郎新婦と彼らの両親が座るテーブルだけが地面に埋め込まれた数個のスポットライトによって、光に浮き上がっているのだった。
     いつの間にか集合写真を写すために、列席者が全員三列に並んでいる。金ボタンの紺色ジャケットを着て蝶ネクタイに半ズボン、という出で立ちの小学生が視線の外から突然表れ、新婦に向かってにやりとして話しかける。どうやら初夜はどんな具合だったかとか、そんな感じの下卑た話題だ。周囲の人間は止めようともしないで無表情にカメラのレンズを見つめている。新婦だけが口に手を当てたり顔を背けたり、目尻の涙をショールで拭ったりしている。この地方の全く馬鹿げた習慣とかで、しかも子供達も最初の幾分かおどおどした、命令されて仕方なしにやっているいたずらといった感じはすでになくなり、彼自身が十二分に楽しんでいる実にグロテスクな光景だ。彼女は外から来た人間なのだろう。
     集合写真の最前段には黒い留袖を着た私の祖母が写り込んでいた。





    『嘘栄養学入門/俺は遠慮しておく』『嘘栄養学入門』(333字)
     ビタミンDやカルシウムなどといった栄養素は体にとって非常に重要なものであるが、一見バランスよく食事を摂っているつもりでも、どうしても当該物質に関しては身体に取り込まれる量が長じては過多となってしまう。
     その場合「酢」を食事に加えることによって、体に吸収される量が適正なものとなる。「酢」の『ケンドロース』という成分が影響しているからがその理由なのだ。しかも吸収量は抑えられつつも、それを摂取しない時に比べてより短時間で効率的に身体に摂り込まれる、至れり尽くせりの成分だ。
     仮に知らずにいて、または怠ってしまうと最大で20倍くらいの不要な栄養素が体の中に入り込み、高ビタミンD症や高カルシウム症に罹るのだとか。

    夢を振り返って:もちろん正しくない情報だ。 





    『俺は遠慮しておく』(494字)               
     下水道を通り、通路の進行を塞ぐ赤錆の浮き上がる鉄柵の前に設けられた、一時水量調整池の前で一旦足を止める。水深は50cmもないだろう。手にしていた中ジョッキにはビールの素と呼ばれる粉末があらかじめ入れてあって、しゃがみ込んで下水を直接容れ物に取る。そうすることによって綺麗なビールが出来上がる。
     泡立ちも細く、柔らか。ジョッキの外には細かな汗をかいている。居酒屋に入店直後の彼らが抱え今にも轟かんばかりの興奮の高まり、それらをうまい具合になだめ落ち着かせる最もふさわしい飲み物として、『乾杯』という一言がおもむろに弾け、続いてたおやかな笑顔が互いに交わされる。爆発と収束の混在とした一杯が空気を満たす。そのために運ばれてきた、キンキンに冷やされ黄金色に輝くアレだ。匂い立つような、労働者の命の水といっても良い、いかにも美味そうなビールだった。
     あくまでも見た目はそう映るだけであって、私は勧められても絶対に口につけるつもりはなかった。
     お笑い芸人のHは手に持ったジョッキを傾け実に美味そうに飲む。私は一瞬見た目に騙されそうになったがやはり中身は下水ではないだろうかと、信じられない気持ちになる。




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    夢見集【28】~【32】『謎スープ』『誰かの通信簿』/『お茶目なブギウギ』/『どいつもこいつも好き放題言いやがれ』/『バブルのツケを今払え』/『落ちぶれた山師が獲物を探す』





    【28】『謎スープ』(358字)
     黒く大きな虫の入ったスープを皆が美味しそうに食べる。濃茶色でラーメンの汁っぽい。
     中を見ると死んでいるようだが、俺は絶対に食わないし近づけるなと逃げる。ニヤニヤとした顔をしながらこちらににじり寄ってくる友人の一人は、どうやら無理やり食べさせたがっているのだ。彼が敷居に足を引っ掛け、つまづいた拍子で丼が傾き虫が飛び出してくる。生きているかのように爪が服に引っかかり、思わず「おわっ」っと悲鳴を上げて虫を必死に払おうとする私。
     何とかその場から逃げなければと近くに敷いてある布団に潜り込む。ところが、掛け布団を持ち上げた時に作った隙間にそいつらは再び飛び込んで来ていて、奥に入り込んでいた。姿は見えない。体の一部がちぎれた虫五匹がさらに捲り上げた先の方にいるはずだ。恐々確認すると、やはりいた。死んではいたが。





    『誰かの通信簿』(340字)
     薄汚れ、ちょうど真ん中に縦の折り目がついた固紙、大きさはB4くらいか。中は隅々にまで細かく文字が書かれ、右上には四コマ漫画も載っている。左側中央部に数十個の枠で出来た何かの記入欄があり、よく見ると数字が書かれている。欄の一番左端には教科名が印刷されているので、どうやら通信簿のようだ。
     国英社が95~100で右の欄は「5」となっていた。数理は0と20で「1」「2」といった五段階評価。数学はともかくとして理科がこんなに悪かっただろうか、と思う。他にも体育の項目があるがこちらは予想通りの「1」。ただし、横の備考欄に教育委員会に要相談とあるのは少し気になる。

     父にそれを返してくれないかと言われる。何故かと疑問に感じていると、どうやら兄弟の通信簿だったのだ。





    【29】『お茶目なブギウギ』(793字)
     ブックオフっぽいゲーム屋でなにやら物色していると、近くに高校生三人組がいることに気がついた。一人は昔働いていた酒屋でアルバイトをしていた男の子に似ている。何故か彼らに近づき、色々とゲームのことについて話をする。
     眼鏡をかけた彼の家に行くと居間に通される。大きなチョコレートブラウン色のテーブルがあり周囲には椅子が数脚、部屋には物が散乱としていていかにも落ち着く。誰かが帰ってきたようで、鴨居にかかった暖簾を片手で面倒臭げに払い中に入ってくる男が一人。彼の父親らしい。私は土下座をして迎える。どうしてかは分からず自然としていたのは、そうでもしないと許されないと感じたからだ。
     彼の父親は慢性的に何かがあるとすぐ酒を頼る。とはいえ普段は大抵一杯気分で妙なおおらかさをも見せる酒飲みの親父だが、機嫌がいつ急変するのか分からない恐ろしさが嫌な圧力の気配として、近くにいると常に伝わってくるのだった。とりあえず今はろれつの回らない舌でも、つかえつかえにこちらのことまで色々聞いてくるところから気を回そうとしているらしき様子、つまり思考が健全に働いている部分もあるようだった。ぎりぎり程度の悪くない状態だったので私は早めに逃げようと思っていた。

     自宅で寝ている。部屋がノックされたので誰かからまた逃げなければと感じるが、首を出して確認してみれば、窓の外は現実の自室同様に隣家の裏庭までの高さが4、5メートルあるようだ。これは無理かと観念し、仕方なくドアを開けるとそこには現実世界の父親が立っていた。「ここは北海道だからお前の部屋じゃない」と告げられる。
     一瞬訳が分からず後ろを振り返ってみれば、やはり全く私の部屋そのもの。布団の敷いてある位置、窓の高さ大きさ 、家具の種類、色味など全てが。何故北海道に自室と見紛うほどの部屋があるのか不思議に思う。





    【30】『どいつもこいつも好き放題言いやがれ』(814字)
     いじめ撲滅アンケートが学校で採られる。一応書いたが提出期限を過ぎていたために出すのが億劫になり止めてしまう。どこか普段使われない薄暗い教室の一角にあるスチール棚の上段の引き出しに隠すことにする。

     高校同級生W来が空手部を作らないかと誘ってくる。もう高校二年生だし、お前は野球部だろうとあしらうように返事をするが、もう野球はやらないとあっさり答えるのだった。
     どうにも渋った気持ちのままで彼と一緒に暫く廊下を歩いていると、正面玄関付近にまで近づいたところで随分と人が多いことに気がつく。こちらに向かってぶつかりそうな感じに避ける素振りも全く見せず、ぎりぎりのタイミングでさっとよけて振り返らずに行ってしまう、微妙にデザインの異なる制服を着ている男子生徒。少し顔を俯かせ、視線はこちらを眺め値踏みするつもりか、どうやら新入生のようだ。
     さらに下駄箱に近づくと、赤いジャージを来た二人の女子学生が「汗臭い」だの「薄暗いし、ダサい感じ」だのと文句を垂れつつ、やはりこちらに向かってくる。男子がほとんどの高校なんてそんなもんだと口が開きかけるが、やはり余計なことは言わないでいいやと女の子たちの横を通りすぎる。

     続いて、体育会系の部活にでも入りそうな体格のいい坊主頭の新入生とすれ違う時には、「押忍」と声をかけてみると相手も少し驚いた顔で、それでいて一瞬のちニヤリとした顔で「押忍」
     後ろからは先程のいじめアンケートを集計していた男子生徒が現れ、彼と目が合うと廊下の隅に連れて行かれてしまうのだった。あれを提出してくれと十数分前に収めた泣き顔や、大げさな懇願やら随分な義憤やらこちらに対する無限責任追及をするかの勢いで迫るのだ。どこに入れてしまったのか忘れていたし、提出期限も過ぎているのに面倒なやつだと感じながらも、どうやらそれを口にすることは許されないのだろうからと、すっかり弱った気持ちで何とか思い出そうとしていた。





    【31】『バブルのツケを今払え』(872字)
     埼玉の女の子とどこか道端で偶然出会い、今でもかつて潰れたはずのあの会社「N」は存続していると教えてもらう。
     古びた雑居ビルの二階に向かい薄暗いフロアにある一室のドアを開くと、仕事をしている後ろ姿のN野氏。「別に仕事を探しに来たんじゃないんだったらいいよ、ところで挨拶は?」それとも金でも借りに来たのかと、言葉の内容は刺々しくぞんざいなものだったが、こちらに見せた表情が力なく影が差し込んでいるのは日当たりが悪いだけでは無さそうだ。
     仕事があれば呼ばれているはずだし、そうでないということはやはりうちらには仕事を回してくれるつもりはないのか、なんとなく分かっていたが残念な気持ちになった。最近請け負い始めた、ガス会社の警備をしている青いツナギを着た派遣スタッフの男性三人が、いつの間にかN野氏の周りに集まっていたから。
     帰ろうとすると、壁際にロッカーがずらりと並んでいるためひと一人しか通れない道を数人のスタッフらしき人間によって通せんぼされ、特にツナギの若い男は念入りにその役割を果たしていた。自分の前のロッカーに両手を伸ばし、背中を丸めてスペースを出来るだけ開けないようにして通さないつもりなのだ。腹が立ったので、目の前の男性が塞ぎきれていない隙間から手を伸ばすと若い茶髪の兄ちゃんの腰をがっちり掴み、徐々にこちらに引き寄せるとふんぬと力を込めブレーンバスターを掛けた。見事逆さから落ちる。垂直落下式!!
     
     後ろを返り見ると地面に崩れ落ちたその姿があったが、身体の傾きの感じからして首の骨は折れていないみたいだった。少し安心して部屋を出ようとした際に仲間のツナギ連中に呼び止められる。「あいつは前にもやられているんだ、手を出すことはないだろ」「こっちの知ったことじゃない、お前らが悪いんだろうが」と応戦。

    夢を振り返って:N野氏は藁半紙の答案用紙に赤ペンで採点していた。机の右に置かれたものには100点、正面に置かれまとめられたのは60点とどうやら教師のバイトも始めたのかもしれない、と。その姿を見たときは奴さんも少なからず大変そうだと思わずにいれなかったものだ。





    【32】『落ちぶれた山師が獲物を探す』(620字)
     一般的には有名なA駅前は意外と栄えていないと思っている。すぐ近くの私鉄や地下鉄駅のB、C駅の方がずっと人の流れも多いし、店も色々とあると友人に伝える。彼はこちらの話を聴いていない。無表情に正面を向いているだけなので間違ったことを口にしたか、言い方が不味かったかと何かを失敗した気分になり、再び彼の顔をそっと窺う。
     A駅構内を出ると目の前は視界を妨げるくらいの高さの花壇が広がっていた。地面からの高さは2mくらい、横幅は数十mあるようだ。
     ふと視線を上へやると焦げ茶色の旧いビルが見え、屋上の少し下あたりに『デザイン学校』との名称をロゴにかたどったピンク色の文字。中は事務所みたいな造りで雑然としていて、学生の姿は見えない。コピー機の前を一人の男性が行ったり来たりと忙しそう。

     信号を渡ろうと、足を一歩進め終えたそのときに中年男性に声を掛けられ、自分は宇都宮あたりに住んでいると突然告げられる。話を聴いてみれば、大学が自分の家だということなのだとか。信号を渡ったところでいい話を教えてあげるとの耳打ちがあり、男性の携帯電話番号をメモするようにと話を継ぐ。怪しく感じるが、番号を聞くだけならまあいいかと画面を見せてもらうことにする。
     自分の電話帳に登録が済むと、目の前の人物の名前として打ち込んだはずの「箱崎」が「箱龍」に勝手に切り替わる。この名前は以前に登録した怪しい男リストの中の一人だと気がつく。やはりそうだったか、と。




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    夢見集【23】~【27】『ついにこのときがきたか』/『焚き火と音楽と破れた世界』/『かなり単純な連打ゲー』/『昔の友達待ち惚け』/『真夜中ァ~電気ィ~保安ン協会♪』





     
    【23】『ついにこのときがきたか』(544字)
     雨の中暗い道を歩いていると段々と身体がだるくなり、近くの電柱に凭れ掛からなければ倒れてしまいそうなほどになっていた。
     しばらくじっとうつむいていると、被っていた帽子を後ろから歩いてきた女子高生にひっペがされる。帽子を指先につまみながら暗闇に向かって遠ざかり、笑い声を上げている。黒い傘を持っていたはずだったので、それで殴りつけて奪い返してやろうと思った。

     目の前に、太いマジックインキで乱雑に殴り書きしたようなぐちゃぐちゃな文字、または記号ともはっきりしない線の集まりや模様らしきが現れる。B3サイズ画用紙に書かれていたが、しばらく見ていると突然に回転したり拡大や縮小を始めた。続いて何も描かれていない部分、入り組んだ線で作られた模様の空白部分が激しい明滅を繰り返す。紙の中心には何も記されておらず、そこにいつからかボールペンで書いたくらいの細い文字が現れる。何とか読めるかどうか、文章として意味が解読出来そうだと感じる。

     夢と覚醒の境で、もう一度あそこに行って今度こそ絶対女子高生に復讐しようと頭に浮かんだ。恥を雪がなければ自分も許せない、世界も許せない。

    夢を振り返って:紙の中心に文字が現れたあたりから、ああ、ついに頭がおかしくなったかとそんなことを思っていた





    【24】『焚き火と音楽と破れた世界』(1438字)
     旧いタイプのラジカセから初音ミクの歌が流れる。
     曲名は分からないが現実に存在する、私の知っている歌だった。
     しばらく耳を傾けているとステレオのスピーカーから父の声が聴こえてくる。「ここが聞こえたら録音して欲しい」
     私はその二秒後くらいに録音ボタンを押した。父親がどこからともなく歩いてきて隣に立つ。「普通、声がした直後に押すよね」とさも当たり前のことのように言ってきたので、イラッとして「だったらだったら、だったら――これからやるからってさ、巻き戻して録音するように言えば良かったんだ。あの、あれだよ、そもそもさ、」と言い争いになる。どうやら父が旧友のYさんに頼まれていたらしいのだ。
     感情が先走って言いたいことが言葉にならないと自分でも分かる。まだ余裕のありそうな平静を装った向こうの顔を見ると、なんとも口惜しく自身に対しても腹立たしい気分になった。いつもこんな感じだ。
     スピーカーからの声を聞き取り、理解して行動に移す一連の流れが二秒くらいで出来たのだから、問題はないじゃないかというのが私の本音だった。

     場面は変わり大地震か戦災の後の世界。目の前には壊れた世界の現状を表すかのように地図が広がる。どうやらそこに示されている範囲は、町の丁目単位がいくつか一緒になった広さくらいか。色彩は乏しく青みがかった灰色の地面、数十年前のコンピュータで描かれたものに見えなくもない粗末なCG画だった。ファミコンのゲームグラフィックと似たりよったりな感じかもしれない。
     上部中央あたりと、それぞれ左右斜め下の地面の部分が破れギザギザになっている。少なくない土地が失われ、地上から消滅したのだろう。示されたいくつかの地点は地図で確認した限りでもある程度の広さを持っていたが、孤立したそれぞれを繋ぐ部分は一二箇所しかなく、しかも道幅は狭く頼りないものしか残されていないようだった。

     目の前が真っ暗になり、白い文字が画面の端から縦書きで現れ始める。何故こんな世界になったのか説明がされた。どうやら中国とどこかの国が争っていた、とか。日本はどちらにも与しないという風に思われ、適当に扱われて放っておかれたとのことだ。そういったわけで我々は、なんとか被害を受けながらも生き残ったのだ。

     壊されたスーパーマーケットで食料を千人分くらい確保する。私は家族とともにいたようで、発見した物の奪い合いや分配についてを気にする必要はないと知りつつも、とりあえず三十人分をまとめて貰うことにする。早速手をつけ始めると、腹が減っていたせいもあってすぐにでも一食分を平らげてしまいそうだったのだが……。
     ­­夢中になって齧り付いていたところで何気なく顔を上げる。手を休め周囲を見渡し、次いで店の外の荒廃した光景を遠目にするうち、食料に限りがあるだろう現実に改めて実感が至るのだった。もはや原材料の生産地はことごとく荒れ果て、収穫・加工・物流に至るまでのほとんどの供給システムが機能していないのではないか? 市場に出回る段階にまで完成した商品を調達することはおろか、穀物や菜物の自給さえ適わないほど世界が破壊や汚染を受けている可能性も否定しきれない。
     最後の方は噛みしめ味わいながら、出来るだけ満腹感を得られるようにゆっくりと食べることにした。そんな自分に少し笑ってしまうのだった。

    夢を振り返って:食べていたものはきしめんで作られたインスタントの鍋焼きうどんだったと思う





    【25】『かなり単純な連打ゲー』(537字)
     陸上競技トラックの上でスポーツ刈りの短髪高校生と向かい合い、彼の肩を殴る。向こうが後退りするのに対して、一方的に何十発も同じ場所を。上空に半透明の枠が現れその部分が電光掲示板のようになっているが、相手の体を打つ度に数字が表示される仕組みらしい。枠の下の方では累計値も分からせるためにか、同時に計算され数字が加えられ続けている。
     高校生もやがて応戦してくる。向こうのほうが若干パンチ力が強い。今では互いに肩を打ち合う格好だ。【私】197:【高校生】203くらいの値だった。こちらのほうが分が悪く、少しずつであるが徐々にHPの減りに差が開き始める。ちょっと調子に乗り過ぎたかもしれないと、私の頭によぎる後悔。

     何度か連続して殴られているうちに、こちらの疲労が溜まり手が出なくなる。一方的に攻撃されることになってしまい、HPがどんどん無くなっていく。元々は3000くらいのものが1000を切ると自動的に回復するとはいえ、その回復値は2000……1800……1500といった具合に小さくなる。つまり上限が下がってくるのだ。
     何度も繰り返しているうちに、次第にほとんど回復しないところにまで追い詰められる。私は肩を殴られながらひたすら陸上トラックを後方に押され続けた。




    【26】『昔の友達待ち惚け』(439字)
     弟の友人が迎えに来た。数十年前に一緒に遊んでいた彼らだった。しかし、イマイチ気が乗らない。停車中のバスの中で待っているというが、それらは一般的な大型路線バスのように見える。一番後ろに座り、窓枠に肘をついて手のひらで頬を支えている、いくらか暇そうな憂鬱そうにも映る横顔。多分二人いるはずだったが一人の姿しか確認出来ない。
     そういえば自分と同年の友人と遊ぶ約束をしていたことにふと気が付き、外に出ようかとするが思い留まってやはり止めてしまう。

     仕事の時間が迫っているので、弟に対してはバスの中の彼らには会えないと伝える。大文字のFの形に配置されたボロい木製の桟橋にはいくつかの手漕ぎボートが係留されている。下に覗ける海は底まで透き通る、とても綺麗な水色だ。海の上に掛かる桟橋の上を歩きながら仕事に向かおうとするが、後ろで何もせずに突っ立っていた弟から突然に文句を言われたのだった。
     時間は07:28だったので、その感じからすると以前勤めていた工場だったのだろう。





    【27】『真夜中ァ~電気ィ~保安ン協会♪』(1947字)
     知らないバアさんの家。築十年も経っていないか、壁にはシミ一つなく、いくつかの洋服タンス等の家具は現代的でお洒落なデザインだ。おそらく後ろを振り向けばいわゆる機能的なキッチンがあるだろう。
     時間は夜10時以降、天井の一箇所だけが消されずに残され、暖色系の白熱灯が広い部屋の隅を柔らかく包み、そこはフローリングの床になっていて直接布団が敷かれている。バアさんは上掛けをまくり上げてちょこんと座り込んでいる。
     なにやら心配事があり眠るに眠れないのだとか。話を聴いてみると隣家の住人が大きな声で自分や自分の家族の悪口を言っているのだというらしい。突然、玄関に通じるドアの上部に設置された機器が作動すると、凄まじい音がなり、しばらくすると自然にドアが外側に向かって開いたのだった。
     新手のガス検知器なのだろう。そして、機器が誤作動を起こすのは隣家のせいなのだと。だったらコンセントを抜けばと応じるが、本来動く時の目的と状況(つまりガス漏れ)を考えると抜けないと首を力なく横に振る。最近はずっと寒さも続いてガスストーブを使っているので心配なのだ。ただやはり大音量が鳴り響くのと、ドアが何度もバタンバタン十数分ごとに強制的に開けられるのが気になってバアさんは眠れない。というわけで、どうしたら良いか分からない八方塞がり状態だった。

     同じ部屋で私も寝ることにしたようだ。本当に検知器はそんなに頻繁に鳴るのか調べるため、またドアを開けたままにしてどれくらい寒いか、また開けっ放しにすれば勝手に閉まったりはしないのか調べるためでもある。部屋を真っ暗にして寝っ転がり、横を向いて顔を上げてみるとガス検知器が正常の待機状態である証しの、緑色の常時灯が数メートル先に見える。
     しばらくそのままでいるとランプが点滅を始め、やがて赤色に変わった。私は例の大音量を思い出し、起き上がりすぐに駆けつける。近くにおいてあった三段梯子に昇り、コンセントを外してしまおうと触った瞬間にかなり強い電流が流れていたと気づくがすでに遅し、感電する。体中がしびれ、痛みが走り、指先を自由に動かすことも出来ない。何とか我慢しながら力を振り絞って、ぎこちなく時間をかけながらもコンセントを抜くのには成功する。
     体のしびれは徐々に時間を経るにつれて抜けていくが、その間梯子の上でグルグルと回っては周囲の光景を見ているのだった。普段視線の届かない冷蔵庫の頭頂部や、寝る前に脱いでおいた上着が食器棚の半分開け放たれた開き戸にかかっているところやら、回転している最中にも新手のガス検知器に肩がぶつかりそうになるが、触れればまた感電することになると思い、回転自体は止められないので遠心力に逆らって、ぎりぎりの間隔で何とか体を反らせて避ける。
     
     父方の祖母が登場。再び寝床について検知器を見上げ、とりあえず修理をするか漏れの心配のない新品でも買うかしてしまおうと考える。そして今日のあいだはガスストーブも、当然ストレスの元となる騒音機器は消してしまおう。面倒な機械は半永久的に停止してしまったっていいんだ。
     実はコンセントの横にはスイッチもあり、それを押せば感電もせずに電源を落とせるのだと、いつの間にか知っていたのだ。ハシゴに登ると動かないように祖母が押さえてくれているみたいだった。早速スイッチを切ろうと手を伸ばそうとした時、足下から声がかかり白いビニールに包まれた手のひらくらいある大きさの、ヒヤリ冷たい物を手渡される。いわゆるアイスノンだ。
     どうやら誤って加熱したコンセント周囲の部分に触ってやけどをしないために、本体も冷やしたほうがいいと考えているのだろう。しかし温めて表面に水分が滲んでくると感電してしまう。こんなものを使うと逆に危険ではないのかと、もしもの想像を巡らせた瞬間におののきを覚えては、それでも怖々本体に当ててみれば、あっという間に冷たく固まっていたアイスノンが柔らかくヘタってしまうのだった。ということはかなり熱いのだ。祖母は経験的にかあるいは勘か、とにかくを知っていたに違いない。……これは、やはり冷やすべきか?

    夢を振り返って:そういえば以前、天袋に閉まってある荷物を整理したいだとか、タンスの上を掃除したいなどの言葉を顔を合わせるたび祖母がしきりと口にしていて、なにやら難儀なことを言っているなあと思いつつも、時には一念発起して手伝いをしたのだ
    足腰の悪い祖母に変わって私が梯子や椅子の上に乗り作業をするのだったが、その際には下で支えてくれながら「○○(私の名前)あっちはどうだろうかね」「あのさ、おばあさん、もうこんなもんで良いんじゃないか?」などとやり取りをしていたものだ。そんなことを思い出した




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    夢見【19】暗躍する勢力とビッグブラザーの帰還(了)






    (663字)
     電話からおかしなアナウンスがして使えない。母に相談してみたがやはりそうだったという。「デジタル電話は回線買取方式だから、旧い電話は使えなくなるとか」と父が落ち着いた口調で説明する。
     元総理K議員が電話をかけ、故障した際強制的に繋がる回線のオペレーターと話をしているが埒が明かないのだとか。さらに彼が近所に頼んで合計十数件の電話からかけたところ、ほとんど専用オペレーター以外には繋がらないようだ。いつの間にかその頭は随分と白髪が増えているように見えた。それでも何件かはまともに外線を使える電話があるとのこと。I議員も別の場所で同じことをしている。

     故人であるはずの某政治家が入院先で無事手術を終え、そこを後にする場面。正面玄関から出てきた彼は少し空を仰ぎ見て、一瞬目を細める。入口付近で立ち止まる姿をこちらは植え込みの隙間から覗き見ている視線だった。
     病院スタッフがずらっと並んで退院を見送るつもりか、全く大袈裟に見せないほど真摯に心からの一糸乱れぬ最敬礼をしている。
     しかしその服装を見ると白衣や事務職員用の地味な制服ではなく、襟の大きなクリーム色のブレザーで縁の部分は黒く厚いビロードの生地で装飾され、両胸を肩口から胴まで横幅十五センチ程度に金糸で蔓草模様が薄く刺繍されている。まるで、東京あたりにでもありそうな高級ホテルで採用されていても不自然でない、瀟洒なデザインだ。
     彼の髪の毛は年齢にしては真っ黒でものすごい量があり、偽物ではないかと思えるほどだったが、質感や生え際、風になびく様子を見ているとどうやら本物のようだ。




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