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    タイ旅行、後日まとめ記【6月30日】~9 修正版






    (2080字)
     相方は無神経で言ってみれば動物的な直感のようなものに従って動いているわりに、却って功を奏するときが多くその度に閉口させられるのですね。
     この文章を彼が見ればもちろん否定するでしょう。私とはだいぶ視点や感覚の異なる――場合によってはありえない、いささか常識に反する気さえしていた――、言動や物の見方をこの旅記でうまく描けていないことは、現実に1日中接している自身が一番分かっています。それを伝えるにこの筆は拙いのだと常に感じている以上、他の人の賛同が得られなくとも仕方のないことなのかもしれません。

     私は自分自身についてこう考えています。非常に薄情で残酷なところがあって、というのも結局はプライドだけやたら高いわりに身が伴わないので他を遠ざけ、自己中心的になっているからなのだと。
     それらが時として大体悪いように影響し、人よりいくらか多感(臆病、の間違い)なあまりに自らの考えや行動について否認のあいだで揺れるのです。まるで無数の針の山の上を転がる風船、ではないかと思いました。風船に水が入っていなければ割れることはありません。その水は今回の場合、彼のいい加減さに対する感情であり、同時に結果として見れば要領が悪かった、上手くやれなかったのは私のほうだったという心を重く々々させる屈辱感、疲労感もなのです。
     いつでも風船の口は開いているようでして、許容量は常に少ないのです。ところが自分の感情をごまかしてそのことを考えまいとしても、穴から全ての水が抜けて過去から溜まってきた感情が無くなるというわけではないのが困りものなのです。あるいは、本当に面倒なのはいつまでも入れ替わらない古水が作り出す、水垢か澱のような記憶なのかもしれません。
     随分とケチ臭いながらも少しばかり病的な感覚を持ってしまっているのではと、常日頃無闇にも患うのですね。実に漠然としていますが、異常なのは彼でなくて私のほうなのではないかというふうに。

     彼は少しわがままで、見栄張りで自分に正直なわけです。頭ではある程度分かっているつもりで書いてはいても、所詮はどこまで行っても私が知っている姿であり、近くで目にしていない部分も含めた全てを理解出来ているわけでは、もちろんないのです。今まで書かれたいわば彼への理解に表現の適切さの問題がないとはいえませんが、全て実際に起こったことであり嘘はありません。
     ただ嘘ではなくとも、彼の態度に対して受け入れられないとの感覚を抱くことが決して少なくはなく、そうなってくるとむしろ自分のほうの問題なのではないかと逆転した捉え方をしてしまうのです。当然の反応として生まれたはずの感情は大袈裟で釣り合いの取れない、実は本来必要なかったものを過剰に作り出し、こねくり回しているだけなのではないかといった疑念に目を向けざるを得ないのです。

    追記〈3〉2013・10・08 再度件の場面を振り返り、自分自身についてこう考えさせられました。私は実際他の中身などない、薄弱さのみで出来たその塊みたいな人間なのです。
     どうにかこうにか勘違いした末で作り出した自らへも見え透いて寒々しい克己心まがいやら、人へ押し付けしない自信のなさをあえて正しさや慎みとでもすり替えて理解させておく道徳感情などに支配されているのです。私は自身のみが配役された安芝居を演じる側の立場にいて、人生や友人の前で表面的に演じているのです。本性は徹底して底が浅く、基本が欺瞞に満ちているのだと。 追記〈3〉了


     正直、彼を殴ってやりたいと思ったこともありました。しかしそれでは自分の気が晴れないのです。瞬間の怒りや不満の感情には一つの休息を与えることになるかもしれませんが、行動によって一時的に感情を表に出すことにはなったとしても、同時に原因となるものを棚上げにすることでしかなく同じようなことがやがて繰り返されるでしょう。
     何より、向こうがこちらの感覚を理解していなければ根本的な解決にはならず、それがないから私は彼とのあいだに齟齬を感じるのですから。
     ただ確かに大切な友人であり、私をこの旅行の相手として選んだことについては事実嬉しくあるのです。
     旅の地での新たな喜びなどに遭遇するたび、そのことが相方の助力や存在あったればこそと感謝することも、ごく自然な感情として沸き起こるのでした。また今回の旅を受け入れたのも相手が彼だったからで、他の友人からの誘いだったらどうだったかはなんとも言えません。少なくとも、今までに異国の地においても互いに心から笑いあっていた数多い瞬間を忘れてはいませんし。
     分かりあえない部分が例え小さくない違和感として在り続けたとしようと、これは現実的な問題としてやや情けなくもありますが、英語も碌に喋れず異国の地に一人放り出されるなぞは、私にとっては心細いという程度の不安では到底言い表せない、非常に恐ろしいことでした。
     結局、遅かれ早かれ別れを選択する以外に道はないのではないか、特に当時いずれ避けられぬ瞬間について考える際、胸にある空洞を一陣の風が吹き通るように悲しくも多少虚しくさせられたのでした。




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    日記2004【4】輪郭が風化する。残されたものは~2






    (1550字)
     周りの(クラスの)人間は「いきなり今さら来られたって」とか「迷惑なだけだ」などと口々にする有り様。とはいえありがちな、予定調和へ傾いた波風の立てない反応を試し々々口にしたのだろうと理解したところへ、しかし結局、彼らから期待に続く言葉は発せられなかった。比較的席の空いていた昼下がりの教室では各々、あくまでも自由な楽な姿勢でテレビに身体を傾けていた。
     クラス全体で見ると残っているのは半分の人数しかいなかった。元々人気があるとは言い難い講義だったし、後の半分近くは早々に学校から立ち去ったか、家に帰るか街中でうろうろとしていたのかもしれない。

     話を戻すとつまり、戦争を共にした男たちにはO氏と同じく過去の現実が現在にまで重みとしてのしかかるべきであって、決して忘却のかなたへと逃げ去ることは許せなかった。おそらく自分自身に対してはさらなる苛烈さでだろう。
     時代も異なる当事者でもないこの身で、責任意識を感じてみる困難さ、自ら判断をせずにいられる立場にあることで私に差し迫る息苦しさは無く、目の前に示されたO氏からの要求・糾弾を受け入れるか拒否する以前に、ひとまず冷静に考えられる幾分かの距離感を少量に意識しつ、それでもやはり至極当然だと思えた。

    追記 2013・10・20  クラスメイトへ手前勝手な弁解を少ししたい。当時の私は正直にいえばこんなこともまず感じた。
     古いフィルムへ着実にその場で動くことなく封印された、古い空気や彼から主張される熱気もまるで位相がずれていて、現代人に理解しづらい昔流行った感情表現のように阻害要因としてあり、色彩の不鮮明な牧歌的なカラー映像は妙に読み解きの難解な錯綜したグロテスク映像と勝手に受け取れつつ、同時に一歩間違えば滑稽さに転落しそうな暗黒シュール劇の雰囲気に拍車をかけているふうに、まずの第一印象として持ってもいたのだった。 (追記了)

     彼はそれを明確に意識していて、一方で目を背けようとする――ほとんど忘却の彼方の出来事として――元戦友の精神の深く底流にも、薄まり弱まったとはいえ未だ流れているもの、一言でいえば〈呪い〉だ。
     これは主に日本古来から存在している、例えば密教や陰陽道等の教えの中で取り扱う、特殊な儀式を行うことで超自然的な力によって現実に影響を及ぼそうとする呪術のことを指しているのではない。
     いわば宗教的特殊技能の一連で体系化されたオカルト的力能ではなくもっと原初的な、つまり死者の感情。〈呪い〉とは、死者の記憶が然々であったに違いないという強い囚われから逃れられない心理状態を指し、またそこから発生する。

     死者であるがゆえ感情の行き場も収まりも無く、結局は感情の質や方向を想像する(考える)生者側から産み出された想起である。しかし生者が一方的に見出した感覚であっても、死者の感情(どこまでも想像でしかないが)から生者の想起へと、単に偶然の思いつきによって見いだされたわけではないのだ。
     死者の感情は当然形がはっきりしない。ただ、起因も理由もそれからであったにしようとも、関係性の深浅に関わらず、受け取れる人間と受け取れない人間がいる。共鳴する周波数(これを規定するのも生きている受け取り側、正確に言えば意識・無意識的にせよ受け取りたい側ではある)を持つ死者と生者の同調によって増幅され固着化した想念と感覚、それが〈呪い〉なのだ。
     氏の過去を悔いる感情が強ければ、また死んだ戦友についてを考えれば考えるほどに自身を囚らえ、苦しめる。一方、寝床で過去を忘却の彼方に葬り去ったことさえもしばしのあいだ失念としていた戦友は、老体に及ぶ自然な生理としての忘却が理由ではなく、資格を喪失または放棄した者となったからこそほとんど受け取る(〈呪い〉を実感)ことが出来ない。
     ゆえに、失望と怒りが今にも覆い尽くさんとする身を以ってして、彼に思い出させたい、せめてこの現実が「あの」過去から続いているのだと認めさせたいのだ。




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    夢見【16】揺れる(了)





    (1120字)
     大地震に襲われる。家で寝ていて頭まで布団をかぶっている。揺れが収まるまでじっとしているしかないとまんじりともせずに、それでいて身体の表面積は出来るだけ小さくしておこうと丸まることにした。なかなか収まらない。重量による強い圧力で頑丈に組み合わされ、普段は絶対に動かせないような家屋の接合部が『ガーガー』と鳴るくらいの揺れだった。ガタガタではなく、『ガーガー』である。
     震度は間違い無く7だった。家が潰れないのでこんな古い木造の家なのに随分と頑丈だなと、驚くとともに安堵する。十年以上前に行った外壁補強のおかげだろうかとも思ったがよく分からない。
     しかし数秒後、徐々だが静まりかけているかに感じられた揺れが再び大きくなりだした。今度は反対方向への激しい横揺れが始まる。すると気持ちは一変し、次の瞬間には二階部分を支えていた柱が折れ下が圧し潰されてしまうのではないかという、不吉な想像が突然、そしてじわりと胸に迫る。
     そうなればもう助からない。床がすっぽり下に落ちるだるま落としのような光景、もちろん自分も一緒にだ。無事では済まないだろう。

     相変わらず揺れている。部屋の中にはいくつもの重たい家具が布団を囲む格好に屹立している。こうなっては自分にやれることは限られているがと、今ではほとんど諦めに支配されているものの、半ばヤケクソ気味に両足を天井にむけて突き出してみる。うつ伏せになって寝ているので、その格好はさながらプロレス技の逆エビ固め一人バージョンといったところだった。
     そのときに考えたことは、倒れこんできた家具を掛け布団が覆いかぶさる形で上に突き上げた足へとうまい具合に一旦載せられれば、少しの間は支えながらゆっくりと脇に下ろせるかもしれないという、馬鹿力ならぬ火事場の馬鹿閃きだ。一瞬でも自分の脚力で耐えられないものであったとしても、足にぶつかって倒れる場所が逸れてくれればいいのではないかと。
     幸い分厚い掛け布団に守られているので、家具を受け止めたとしても足に与えるショックは小さくてすむかもしれない。足が伸びきった状態の上に相当の重量物が載ってしまうのが一番まずい。特に地面が上下左右と大きく揺れるにただ体を任せざるを得ないこの今の状態では、そこから持ち上げ隙間を作って引き抜く作業は困難なものだろう。極限的な状況の中で自分に出来ることは何かないのか、考えた挙句に勝手にそう思っただけだが。

     目が覚める。地震はいまだに収まっていない。一体どれだけ続いている。鼓動が激しくなる――夢じゃなくて本当に大地震が起きたんだ。

     次に本当に目が覚める。家は揺れていない。一人逆エビ固めの体勢もとっていない。『ガーガー』といった音が耳に残っている……。
     



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    タイ旅行、後日まとめ記【6月30日】~8





    (1790字)
     ところでエアコンの脅威に晒されているのはみんな同じでした。今走っている場所が熱帯の国だとは車内からでは全く感じられないくらい、この体は熱病にうなされる患者さながらに震え、かすかに窓に伝わる外気の暖かさを頼りにそちらに出来るだけ凭れ掛かっていたのです。次に一つ右側、つまり最後部座席の真ん中に座る乗客は私以上に肥えた女性とあいなります。
     バス旅行(!)中に最も肌を多く接触させるわけで、それが好みのタイプとまではいかなくとも……。いやいや、容姿のことはともかくとして、車中に占める彼女の面積が他乗客一人あたりの平均を超えていることで、車体が左右に揺れるたび、汗が引いたとはいえべたついたお互いの腕を幾度も引っ付け、相手の様子を窺った上で恐縮しいの引っ込めなければならないのがなんと最早なのです。
     しかし隣りの女性には劣るとはいっても、こちらも決してスマートな体型をしているわけではありません。自分がそのように思われる次の役割交代が無いとは言い切れないと考えるならば、早々簡単に件の女性を非難する行為は自らの首を絞めることにもなりかねないと、無理やり納得させたのです。
     バスも出発して数十分が過ぎたあたりには同乗者への観察も一旦終わり、身体を縮こめ外の風景を見るともなしに眺めていました。ですが、しばらくしてまたカーブへ差し掛かった際、その勢いで身体が一方へ寄せられ腕同士がべたりとくっついてしまったのです。ミニバスの狭さにうんざりしつつも隣の女性へ余計な他意の与えない感じに(やり方によっては失礼に当たるかもしれないので)そっと離しました。

     一人忘れてました。一番最後の紹介になりましたが、後部席右端の乗客はこれまたマレー系の若い女性です。この地方の人がまず表面に育てる明るさは確かにありながら、しかし同時に私が想像し期待をしもする、また漠然と知る独特の甘く憂いた雰囲気、それらがない交ぜになったもの。車内照明の加減で青黒い女性のその肌へゆるやかに纏っているのでした。
     右側(彼女にとっては左側)の豊満な女性とは終始にこやかと話す一方、ほかの人物の会話にも興味ありげな顔を向け時々はやや早口気味で話へ参加したりもするのでした。また次々に通り過ぎる窓からの風景が如何にも物珍しいと言いたげに、新しい刺激に対し反応が良いというか良過ぎるくらいでして、何かが耳に目に入るたびやたら気を取られてみたりもするのですね。まるで小さな子供であるかの落ち着かなさで絶えず視線を方々へやり眺めているのです。
     そういった点からも少しばかり年齢不詳系の彼女。豊満な女性とは親子なのだろうかと思ってみたりもしましたが、やはり傍から見ているだけでは分かりません。
     
     以上の人々と小さなミニバスに乗り込みマレーシアの国境へと、そしてその先のまだ見ぬ異国の地へ様々な気分やら目的やらを乗せては、エアコンをガンガンと効かせながら疾走していくのでした。
     途中イミグレーションで止まり、少額のタイバーツを運転手に渡し我々もすぐに同乗者に続いてバスを降り入国管理所へ。管理事務所の窓越しに職員が審査用の紙、さらにもう一枚何かの紙を渡してきたのです。数秒遅れて到着した相方は私が受け取ったことだけ一旦確認すると、碌にそれに手をつけようともせずに遠目で眺めているだけでした。
     結局馴れた手つきで入国手続きを済ませた同乗者は先にバスに戻り、やっと手をつけ始めた私たちは彼らをだいぶ待たせてしまい、辞書をバックパックの底から何とか引っ張り出し、書類に示されている項目を一言ずつ調べて穴を埋めていったのです。相乗りの乗客に申し訳ないような、何よりも彼に腹立たしい気持ちでしたが、そんなことを言っていられる状況ではありません。
     当てをつけて辞書を引いても理解出来ない箇所がいくつかあり、記入出来ずに悩んでいると彼は横から顔を出しガムを噛み平然とした顔で、「別に気にしないで出してみよう」と言い放ったのです(こう書くといかにも私が悪感情を抱いている風に聞こえますが、確かに事実こういうことがありました。例の炎天下での迷子も多少しこりとして残っていたとは認めないわけにはいきませんけど)。
     その態度にはかなり不満があって、同時に待っている人たちのことを考えると、いえ、本当は彼らに対してよりもバスが行ってしまうのではないか、実はそれが一番心配だった自分のことは棚上げにして……。




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    日記2004【4】輪郭が風化する。残されたものは~1





    (1180字/2004年3月1日に記す/2013年10月補筆修正)
     今日はこんな話。
     戦時中に仲間をくじ引きの結果殺し、その肉を食べた人の話。
     元戦友の一人をついに執念で探し出した当ドキュメンタリー作品の主人公である老人(O氏)。居場所を突然尋ねられ運命の忌まわしき日のことについて詰め寄られた老人(?氏)はO氏以上に随分と弱弱しい様子で、はっきり言えば病み老いさらばえた悲しい老人としか映らない。しかし相対する二人は、かつて残酷にもくじ引きで生死のやり取りをした、固い絆に結ばれた部隊の仲間であった。

     彼らは一体どんな戦場を体験してきたのか? それはもちろん私にも現代の若者にも分かりようが無い。旧友でありかつては戦場で命を預けあった仲間の家を初めて尋ねた彼は、土産一つ持たず玄関の前に仁王立ちになった。老人同士の挨拶ついでにといった具合に、ありふれた昔話を持ち出して話の端緒を作り出すことも一切せず、蒲団に寝付く老人に早速詰め寄る。
     O氏の表情や言動からすると、やはりどうしても当事者である元戦友が忘れてしまったり、遠い過去の出来事として、価値のないものであると打ち捨ててしまったりを断じて許さないという、決然たる様子なのだ。自分たちが平穏な世界で安逸に生きることは許されないとし、また過去の罪業を背負った形であれ、それを一人で胸のうちに隠し続け、人生もろとも墓場に持っていく貝の如き罪人の真似も認められないと頑なに主張をするのだった。

     O氏は当時の出来事を白日のもとに晒す中で、戦争を幻想化し兵士と戦場を美化する傾向のある当時の若者に、実際にあった現実の不条理さや残酷さを伝えんとしたらしい。
     言動は一見すると冷静で、過去の自身の行為に強い自責を感じ、そのような行いにまで至った部隊に所属する同僚の極限的な心理状況を理解すること、つまり過去を振り返り真摯に現実へと向き合うことが最も重要だと考えていた。どうして最悪の結論を導いてしまったのかについて理由を、自分自身の記憶やある意味では煎じ詰め過ぎた観念だけでなく、当時の共犯者の話を聞き明白にしたいというのだった。
     その姿勢自体は自分たちの行為の罪深さを真正面から見つめ、最大のタブーとされる一線を何故踏み越えてしまったのかを、自身に向かってひたすら問うているようにも見える。
     罪を受け入れ、受け入れつつも一瞬のちには再び罪を犯せずにはおれない人間の原罪ともいえる愚かさ、とある瞬間に突然姿を表す我が身を滅ぼしかねないほどの強烈な生への執着、そういったものから目を逸らさずにいる、あるいは何かを見出そうと希求する精神をO氏に見ることも出来なくもないが……。
     何かにつまづいたかのように、少しよろめきながら前のめりになる勢いもあってか玄関から土間を一気に渡りきった。氏は至って冷静な顔をしているとも見えたが、やはり内心は名状しがたい想いに囚われていたのではないか。蒲団に寝入る、見るからに病身と思われる戦友に掴みかかったのだった。




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    夢見【15】退屈な肝試しツアー(了)






    (805字)
     黒くジメジメとした地面。一日中まともに日が射すことがなく、完全に乾ききらず湿ったまま固まった大きめの土塊がそこかしこにごろりと転がっている。歩くたびに靴底の溝に柔らかくも粘りつく土が入り込む。
     墓石が見える。後ろにはそれよりもいくらか高い、錆びた鉄の棒が数本刺さっている。棒の上部には裸電球がひとつ備え付けられているとはいっても、なんとか明かりの周囲が頼りなく見える程度に過ぎず、少し離れた辺りは新月の夜と感じるほどただ暗い。
     老人が私を含めた五人くらいを引き連れて何かを案内するかのように、どこかへ向かう。墓石の前に向かう道は、人ひとりがすれ違えるくらいの幅に柵がされているのだった。
     目的の場所の前に行くたびに目の前の墓石の意匠に関してだったり、葬られている人物にまつわるちょっとしたエピソードを話す。その際には必ず軽いジョークを交える。私はなかなか気の利いた墓守だと思い、彼の軽口についつい声を出して笑ってしまう。近くにいる同行している人間もつられて笑う。

     それぞれの石はちょっとした仕掛けが施されていて、少しずつデザインも違っている。
     電球を括りつけておく棒から垂れ下がっている紐を引いたりすると地面に突然穴が開いたり(おそらく骨壷か遺体の入った棺を収める穴)、墓石自身が左右に踊ってグラグラ、さらに何もない中空からびっくり箱の中身のような、バネの収縮を利用して目の前の人間を驚かす、ちぐはぐな目とパッチワークの原色のベスト、三角帽をかぶった雑な作りのいくらか不気味なピエロの人形だったりが飛び出してきたりする。
     墓場では周回コースが決まっているみたいで、順番に墓の前まで歩きながら出口を目指しているらしい。目に前にたどり着くたびに墓守は前と似たことを繰り返す。次第に皆がうんざりしだしているようだった。老人のジョークに対しても誰も反応しなくなっていた。私だけは相変わらず面白いと思って、自然と笑ってしまっていた。




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