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    タイ旅行、後日まとめ記【7月2日】~11





    (1519字)
     果たしてコンビニは見つかりましたが買い物をして店を出たときのこと、今回の旅で初めてといってもいいでしょうか、雨に降られたのです。
     初めのうちはそれほど強くもなく、我々は少しの時間を潰すつもりで買ったビールとつまみを店の軒先で食べていました。彼の話によると、ここら辺はすぐに雨が止むから心配はいらないといっておりましたので、だったらと思いしばらく雨宿りをさせてもらっていましたが、弱まるどころかいよいよもってざんざと勢いを増していったのです。

     当時私たちが有するタイ周辺の気象の知識といえば、乾季と雨季と冷期があり、今はまだ乾季だから大丈夫なはずだという、冷静に考えれば非常にざっくばらんとした頼りないもの。今回の雨が単に一時[イットキ]降って通り過ぎるのか本格的に長時間続くのかは、現地の人間でもないのでおおよそにも判断出来ないのです。
     情けないやら腹立たしいやらで、今回で初の活躍となる合羽をそそくさとバッグから取り出すこととあいなりました(実は雨具を持ってきたこと自体を内緒にしてあったのです。旅の打ち合わせの段階で彼から教わる、現地の気象に関する知識を全く信用していなかったわけではありません。が、しかし1ヶ月のうちに1日でもそれなりの雨に見舞われることがあっただけでも、十分持ってきた甲斐があるのです。合羽を持たずに雨に何日も降られたりとなれば、誰に文句を言えましょうや?)。
     馴れないせいかなかなか着られずに、ともかく雑にでも被ってしまいました。
     彼に対して後ろめたい気持ちもいくらかありましたが、とにかくすごい雨でしたので風邪を引いても困りますし、体調が悪くて相方の立てた予定を変更させたりすると、ネチネチと後で文句を言われるだろうことが容易に想像されるというのが憂鬱でして、つまり最終的な決定打なのです。風邪を引いてしかも文句を言われたのでは堪ったものではありません。

     我々は店々の軒先を利用出来るところは庇[ヒサシ]の下を通りました。早いうちに宿かそうでなくとも落ち着いて食事を取れる、時間を潰せる場所がないか左右の確認を怠らずに走ったのです。
     そこは店の前面が開け入り口は広く、右側には調理済みの食品がずらり、金属のバットごと種類別に並んでいるといういかにもな大衆食堂。少し奥にはウェイター係の中年男性がいて、テーブルの上を拭きながらも周囲に目を配っているのでした。また客が使い終わった食器を洗面台に戻したり料理の入った金属のバットを陳列台に運んだりと細々と忙しそう。店の中ではそれよりも若い調理人が鍋を振っている最中にも顔をいくらか後ろに傾け、一人だけいる客に対して何か声を掛けているようでした。
     私はすかさず彼に言い、何とか当面の雨宿り先になってもらう店に入ることにしたのです。これからでもそうでしたが、何か用件があるときにはしかとこちらから伝えないと、要件を満たすに準ずる対象が目の前にあったとしても、平気で素通りしてしまうことがあるのですね。
     
     我々は相当の距離を荷物を抱えたままだったので、周囲を確認しながらの小走りとはいえだいぶ息が上がり喉も渇いていました。この国でもタイ同様に、特に大衆食堂などでは最初にジュースの注文を受け付けてくるようでした。暑いときには非常に暑くしかも湿度も高い気候のため、私はそのシステム(慣習?)に馴れていましたし逆に便利だとすら感じるようになっていましたから、特に不要とも過分とも思わずにいたわけです。
     早速アイスコーヒーを頼み、それに続いて彼も同じものを。5分後にちょうどアイスコーヒーが来るか来ないかのときでしょう、隣りのテーブルに現地の人と思しきマレー人の若者4人が腰を落ちつけたのでした。




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    テーマ : 旅行記
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    日記2004【4】輪郭が風化する。残されたものは~4(了)






    (2517字)
     何よりも相手は色々な理由を並べ ――平穏な生活を営む一人間に対しては、過去の罪過を何とかしてまで突き止めていくのが(外圧・内圧を問わず)難しいのも当然ではあり――、彼の言う贖罪をどうあっても頑として撥ね付けるだろう。
     それら態度は、第三者の目から見れば仕方がないのではとも思わざるを得ない。もっと根本的なレベルで言うと、やはりそれを認めてしまえば、現在の自分を否定することになりかねない感覚を危惧したと想像するのは容易い。 
     理屈はおろか感情すらも伝わらない歯がゆさはO氏自身にあったとして、にしても実はかなりの程度で目の前の反応が当然なのだろうと、あらかじめ察して(諦めて)いた部分があったのかもしれない。
     そこで彼は「天罰」という言葉を持ち出してきたわけだが、かなり場違いな感じと言ったらいいか、口にした自身にすら、半ば自棄になって口をついて出てしまった瞬間のちに、後悔か羞恥かせいぜいバツの悪さを抱かせはしなかったか。

     事件が事件として意味を持つのは、一定の規則と合意によって秩序が定められ、多数の人間によって求められる姿が平時であると仮定している状態に対して、それを乱すことやまたは否定したときである。
     しかし今回は戦争という異常な状況の中で起こったとされる事件であり、となると変化が乏しくとも平穏安寧が最大の価値であるとする主張で形成された秩序の意味と、それが保たれている日常とは異なる規則と論理が戦争に存在することは、無視して論じたりは出来ない。確かに戦場での個々人の行為は軍規や戦争法によって厳しく戒められている一方、正式な手段を用いれば合法的に殺人が認められている状況は、常に人間性の逸脱を孕んでいると言っていいのだ。
     較べれば、憎しみや金銭に絡む個人の利害による殺人はある意味では健全ですらあるのだ。普段生命の尊厳や個人の権利の尊重をひたすら主張し、いずれ全地球人類に適用されるべき価値があると理念に掲げているはずの国家が一転、突然掌を返したように殺人を肯定(推奨)する。
     今回の事件(?)は、後数日で餓死するであろう現実を前にし人肉を口にしたという話だ。
     戦況の絶望感は生きる気力を失わせるほどであり、それでもやはり生存への欲求といったものはかなり強く、空腹になるにつれ増大する飢餓感は、あるいは戦場で生き残ることだけを正義とする一兵卒の倫理ではなく、またのみならず、ただ生きたいと願い行動する人間の最大最後に表れる欲求ではないだろうか。そう考えると、例の事件(?)を起こした当人を責められるのか、そもそもそれを事件と呼べるのだろうかという疑問に突き当たるのだ。
     
     ミッドウェイ海戦以降急速に制海権の範囲を狭め、補給路を立たれた南方戦線に向けて次々と送り込まれた兵士たちは、劣勢を告げられずにたどり着いた戦地で惨状を確認することとなった。
     銃弾で身体を貫かれ地雷で吹き飛ばされることは苦痛であっただろうが、一瞬で死んでしまうならばまだマシだったのかもしれない。
     南方戦線では物資の不足は食料どころか薬品にもおよび、赤痢やマラリア等の伝染病に長期間にわたって苦しめられた末に、なんの手も打てずに衰弱して亡くなっていった兵士が相当な数に上るといわれている。運よく病気に罹らなかった兵士、何とか病状を押さえ込み部隊に随伴する半死半生の敗残兵、現場では士官すらも空腹にあえぎ一兵卒ともなれば尚更であったと思われる。

     人間の掌を縦半分に切断してそれを口にするとき、結果的に元の形が分かれば分かるほど当然食べづらい。まずは人間の肉を口にすることに対して口腔や消化器内部からの拒絶感が、そして消化されるに従い自ら全体(身体・心・存在)が穢れへと苛まれる感覚があり、よしんば現在身体の一部になり命を繋いでいるものだとしても、やはり〈呪い〉の発生源の一つだといえるかもしれない。
     人間として「人間の倫理に背き、また純粋に沿い過ぎた行為」よって、身体性の保持の過程から統合に至る観念的なレベルの――O氏の場合あるいは越えた感覚で――異物・違和感、一種強烈な穢れの意識が引き起こされているのではないか。

     いつまでも打ち捨てすることを許さず(許されず)囚われた想いに従うが正しいと信じ、そうせざるを得なくなった彼はさらに自身に追い討ちをかけるように同じ言葉を発する。どこまでも自分を強迫・服従させ続けんとする、それが正に〈呪い〉なのだ。
     言葉で言い表せない感情は、元上官(病身の戦友とは別に訪ねた)との面会の後日にその長男を拳銃で撃ってしまうという、悲しき凶行の形で表わされたのだった。
     もはや、彼らの戦時中の行為を――特に組織的に行われたわけでない、個人的生命における最後に発せられた要請の末の蛮行であるとすれば――断罪することの不可能性について考えを及ばさなければならないのかもしれない。
     そこで彼にはいわば苦し紛れというかある意味のすがりつきとして、「天罰」という形で自らも戦友ももろともの断罪に最後の望みを託す以外、選択肢は残されていなかったのではないだろうか? 
     しかし「天罰」が覿面[テキメン]に彼ら(O氏はおそらく、自分の罪はもっとさらに重いと考えていたから)を罰してはくれない以上、ああいった全国行脚[アンギャ]のようなことをさせる自身の暗流とも表現出来る囚われの極まりに生きるしかなかった。結局は〈呪い〉からの解放を願い救いの求めすらも許されない、無間[ムゲン]地獄の絶望にしか居場所を見出だせずにいる姿、はっきりとした「天罰」の訪れをひたすらに待ちわびるむなしい姿だけがある、と感じてしまうのだ。

     戦場から数十年経て、法は変わり人心はそれを状況として認めざるを得ないか目を背けた。戦争犯罪人として最終的に総括されなかった者、特に一般兵、現代ではそんな罪無しの罪を裁く方法はない。
     彼が求める限りには自ら明確に残された輪郭も、ただ外側の人々にとっては色褪せた時代が後退する速度に付随して風化する。その中身(極限状況下における人間の「異常」心理)に理解の試みを全く止めた以降の時代では、元から存在していないとさえ見做されるかあるいは永久に棚上げされた罪だからなのだ。




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    夢見【18】暇人にも1日は彩り多き(了)





    (1546字)
     腰の曲がった婆さんを歩道橋のスロープで見つけ、自分の散歩ついでに道案内して誘導する。向こうはそのまま大きな道路を越えどこかへ行くのだろう。こちらに振り返り丁寧にも会釈を繰り返す。気持よく返事をしたいとの意味も含め、私も少し大げさなくらいに手を何度も振った。

     巨大SCのようなところの一角に入るとauショップとドコモショップがあり、横目で見ながら通り過ぎるが先は行き止まりとなっていた。
     引き返すとショップの店員に笑われていることが分かった。女性はタイトなベージュスカート、襟に小さなひだひだのあるシルクの白ブラウス、男は質の良さそうなYシャツにライトグレーの細身のスラックスで体型も細身ながら、いかにも週三はジムへ通っている感じの程よい鍛え具合。デパートで購入したそこそこの値段がする舶来品だろう、小洒落て洗練された感じだ。一方こちらは薄汚れた白のツナギを着ている。
     私は段々と腹が立ってきていて、モップを振り上げると剣道の面よろしく思いっきり振りかぶった。激しく怒りを込めながら。モップの柄の部分に少し亀裂が入る。

     いつの間にか学校の校庭、隅の方へ行くと平面式の交差点があり、そこを六十代半ばくらい、中背で年齢の割に骨も太く肉付きはしっかりと、白髪頭をした初老の男性が通りすぎようとしていた。ボサボサの髪に銀縁眼鏡をかけ、白いチノパンに緑のポロシャツといった風貌、自然にゆったり閉じられた口元と真っ直ぐな視線からリラックスして歩いていることが窺える。
     遠くにいた若い二人連れの男が彼に対しおちょくるように声をかけると、白線の途中であった彼は唐突に足を止め顔をいくらか赤く変化させ、全身に力を込め腹を胴囲2メートルくらいまで異様に膨らませた。その姿は非常に滑稽なものであったにしろ、彼は『どうだ』と言わんばかりにしてやったりのどや顔。一種の挑発、あるいは威嚇行動としても自信あり気であるのだ。
     急に息み過ぎたせいか、歯を四本ほど口内から弾き飛ばし歩道部分に散らばらせるが、そのことを本人は気にもしていない。仕方がない拾ってやろうと手に持ったところ、かなりぬるっとして不快なものだった。やめとけば良かったかと思ったりもしつつ、結局残りの二本の歯も探すしかないかと地面に目をやると、どこからか若い女が駆けつけてきてしゃがみ込み一緒に探すことになった。
     なんの躊躇もせず汚れた歯を手づかみに、私のものと合わせて老人の手に渡す。彼は前歯の抜けたいくらか間の抜けた表情で、それでいて憎らしくなるくらいの満面の笑みを浮かべ去って行った。
     女が走ってきた時に落としたものや、何より眼の前に立つ姿を見て看護婦だと分かった。白衣にナースキャップ、支給品の黒いカーディガン、そこまで美人というわけではなかったが、年齢相応に少女の面影を残した可愛げもありながら、同時に人の生死に向きあう人間特有の控えられた覚悟の顔つきが窺え、キャップにピンでまとめられたショートの黒髪は清潔感もあり、覗ける表情からは自信と誇りがかいま見える。

     やはり看護婦は違うなと感心も一頻りするとほぼ同時、そう言えば汚れが気にならなかったか、ふと疑問に思った旨を遠慮がちに尋ねると慣れているから平気だという。「でも、男性のパンツを洗濯する時と、さっきの男性の歯が似た臭いがするのは何故かしら?」と質問を返される。
     まあ似たようなものだからと濁すが、詳しくは教えない。怪訝に感じた女が自分は別に気にしないから教えてくれと、こちらの顔を真っ直ぐ見据えて迫る。どちらも垢だからというのがその時考えていたことだった。しかし時間の経った恥垢の臭いは強烈でも、ある程度新しい歯垢はそこまでは臭くないことを、後になって思い違いだったと気がついた。




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    タイ旅行、後日まとめ記【7月2日】~10





    (1972字)
    【7月2日】に記したメモから
     マレーシアに着いたときにはすでに夕方でした。我々の乗ったミニバスはマレーシアのペナン島へ向かう途中でしたが、広い鉄橋と思しき建造物に差し掛かった途端にそのまま動かなくなりました。渋滞のせいだと思っていたらそれは船の一部だったのです。
     前の座席から漏れる、思いも寄らないほど無防備な彼の驚きやら感心のため息。さらに少し興奮も混じった声を聴きながら、他の乗客がそうしていることに気づいた私も左の窓を開け放ったのです。久しぶりに気持ちの良い天然の風、やや粘り気を含んだ甘い汐の香りを顔全体で浴び、周囲に行われる伸びやかな喧騒へ身を委ねているうち、彼と同じ言葉がふと口をついて出たのでした。「こりゃ、あぁすげえ船だなぁ」

     陸に着いたミニバスは港を後に直進しながら市街地に入り、やがて車から二人三人と客は降りて行きました。
     我々は最後のほうまで残っていましたが、途中何かを聞いてくる運転手へ何も応えることをせず、時々小声で彼と話す以外はほとんど窓の外ばかりを見ていたのです。実際のところ、ホテルの位置なども聞かれても反応せず(出来ず)に、やはり運転手の顔も一切見ないで、というか敢えて目も合わせることなくぼーっとした感じに聞き流していたのでした。
     これは別に運転手に意地悪をしていたわけではなく、どこで降りたら良いか全くわからなかったからでして、仕方なしの薄い反応なのです。
     大方、乗り合いバスは自分の望む場所で降りても構わないシステムなのでしょう。先に降りた乗客は目的の場所か最寄の地点を把握していたのでしょうが、当然初めての入国となるマレーシアのしかもペナン島となると、元々行き当たりばったりの私たちには、とりあえずどこで降りれば良いかと見当さえつかなかったものですから。
     車が停まり強制的にでも降ろされる終点がおそらくあるはずだ、そこまで乗っていればいいと考えていたのです。ルート設定に終点やらタイに向かう客を待つターミナルがこの先にあると、希望的な観測を大いに含ませて。

     その後すぐに車から下ろされ、近くにホテルがあるから自分で探せといった類のことを言われたと、運転手の英語とジェスチャーを解釈しました。車が去る姿を多少心細い気持ちで見送り、しかしいつまでもじっとしているわけにもいきませんので、我々はまず(これは定番となりつつあるのですが)コンビニへとアンテナを向けることにしたのです。人が集まるところにコンビニあり。
     バンコクなどの都市部では日系企業のコンビニの姿を目にするのは全く珍しくもありませんが、これらの観光地でも、特に生活の利便性が極度にも発達した日本の都市部(いや、ある意味では離島を除いた全国津々浦々でしょうか?)に住んでいるような人間がこの地に旅行者としてきた場合には、コンビニは十分な需要があります。日本人以外でも、都市部へ住んでいる他国の人々にあっても同様に受け入れられるのではないでしょうか。
     特に日本人の場合傾向が強めな感じでしょうか? 現地の人が経営する店を利用することに二の足を踏む人は少なくないのではとも想像します。いまいち品質に不安があるとか、適正な価格で自分達に売ってくれるのかを心配する人もいるでしょう。
     色々あって日用品はコンビニや、例えば名の通ったチェーンストアのほうが品質に信頼が置けるし買い物に余計な気を使わなくていいと、長期滞在者ではない一旦立ち止まり通り過ぎるだけの旅行者の中ではそういった考え方は少なくないのでは。 

     私たちは街中に無数に存在する現地の人が経営する店を頻繁に利用し、食事はほとんど麺類などで済ませていました。これは、相方がそれを望んだからという理由もありますし、まあ何をかいわんや節約の意味合いが一番大きいのですけれど。
     ただ外で食べる際はほぼ毎回でしたので、少々飽きてきていた、と言いますか……。少なくとも安いなら安いなりに店を探す楽しみやらもなく、とりあえず最安値のスープ入りの麺、そこへ肉団子をトッピングするかしないか、といったメニューですからどこで食べても大して変化がないわけで。感じとしては自宅で一人採る義務的な食事と似たようなものかもしれません。
     ちなみに、これまででは貧乏性分の我々がコンビニを訪れた理由は酒のためのみなのでした。
     彼の言っていたことなので丸々全てを信用出来るか分かりませんが、タイは敬虔な仏教徒の多い国なので酒屋は街中にはあまり無いとのこと。言われてみれば確かに私がコンビニ以外でタイで買った酒は、町外れにある酒屋のメコンウィスキーだけです。
     日が落ちれば酒を飲んでも構わないというルールが私たちの中にありましたので、手持ちの酒が切れた状態で酒屋を目にすることがあれば、余程急いでいるとき以外大抵は覗いていたはずですが、タイの酒屋に関してほとんど記憶にないのですね。




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    日記2004【4】輪郭が風化する。残されたものは~3






    (1530字)
     兵士たちを代弁するという形で彼は熱に浮かされ、数十年前に死んだ若き日の戦友が乗り移ったかに激越して力強く、生き残りの老人に問いかける。映像を見た限りでは元戦友は半身に不自由を感じさせる身体を寝床に横たえていた。
     何故あのような行動に出たのか――ついに掴みかかろうとするところはさすがに相手の状態を考えれば暴挙としか言えないが、であろうとどうしてもせざるを得なかった――、それが分からない人間には後のことも、取っ組み合った事情も理解出来ないはず。O氏は一見すると、というよりもあの場の相手からは狂人じみて見えたに違いない。しかしもちろん彼は狂人なのではなく、ただ単に、純粋にと言っていいほど戦中の忌まわしい事件について究明したいとの気持ちと、さらにより強い謝罪心だけが――本当は自殺願望だったのかもしれないが――前面にあったのではないか? 
     もはや戦後四十年ののち、自らを騙し々々それすらも到底意識に上らなくなった戦友たちや、直接関係の無い家族にしてみれば、突然の不吉な訪問者の行動は「なぜ今さらそんな話を?」「わざわざ思い出させないでくれ」と戸惑い、疎ませるものだったかもしれない。
     確かに家族は実際当事者でないのだからとしても、やはり親(親世代)の体験を記憶することが望まれる責任に近いものを負っているし、老人に対して酷な言い方かもしれないが――当事者に至っては絶対にそのことを忘れたり(忘れた振りをしたり)、無視をしていたりするのが許される問題でないことは言うまでもないのだ。


                    3月5日

     Hello!! (ひさしぶり)
     一連の行為は戦争犯罪というものなのではないだろうかと設問し、そもそも戦争犯罪とは何であるかについても考えを及ばせつつ(可能ならば)、さらに如何ばかりか筆を進めたい。
     私は元戦友の居場所を突き止めわざわざ老身を推して迫り、さらに掴みかかろうとするまでに至った行為を呪いと書いたが、それを証明したり裏付けるとでも言おうか、囚われていると感じさせるような実際の行動を画面で目にした。彼からはしきりに「天罰」という言葉が口をついて出、あなたが足を悪くしたのも「天罰」だし、こうやって戦後四十年近く経って、なおも思いを吹っ切ることが出来ずにいる自身も同様であるとO氏は断言する。
     天罰とはなんとも耳慣れない言葉であるし、贖罪[ショクザイ]を求める人々の頭を押さえつけまたは罪人を裁くための口実としては最適のものだ。私は最初ここに胡散臭さを見たことは確かだ。彼自身(O氏)仏教徒であれキリスト教徒であれ、神仏を熱心に拝している場面であったり、直前までの言動からしても深い帰依[キエ]をしているところは窺えず、少なくともそんな様子は映像内には表れない。
     突然「私がこうしているのは――」とまではいいとしても、続いて本来は感情を伝えるのみでなく自分の行動が意味するところへと理解を求め、思い出し振り返って真に過去を認めさせなければならないはずの相手に向かって、何故天罰という目に見えないまるで一足飛びの論理を持ち出し、それを求めるものにとって都合の良いかなり強引な言い方に変えてしまったのか。
     しかも、実際に身体を悪くし長い間苦労を味わっている人間に対して、「あなたの足が悪いのは」天罰が理由だなどと言ったら、とりあえず心証を悪くすることは間違いないのだが。実に不思議でもあり、多少滑稽にも映るといった反転した印象は避けがたい。
     それらの見方でいると、ついに足の悪い戦友を殴った行為や警察を呼んだ行為も白々しい茶番のように見えてしまうのだった。つまり、彼は自分自身の気分を完全には整理も出来ず、仮に相手へ伝えても罪の意識を植えつけるだけの効果が無いこともなんとなく分かっていた。




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    夢見【17】イミテーションと公共放送(了)





    (1550字)
     NHKを観ている。番宣番組のような感じだった。最近のNHKはそういった番組編成がかなりの時間を占めており、新たに放送されるシリーズなどをダイジェストを交えて紹介することのみに数分の枠が費やされるのだ。
     視聴者へごり押ししたい番組の放送時期が近づくと、それ以外の通常営業にある番組のエンディングと次のオープニングが始まるまでの短い合間などを利用して、必ずなんらかの短縮バージョンが挟まれる。私は『放送開始までもうすぐ、○○特集』がこれから始まろうとするところで、ちょうどリモコンのスイッチを入れたみたいだった。そしてなんとも辟易した。「またかぃ、しつこいなぁ」

     ただ、今回の番組は本放送などを細切れに伝えることはせず、番組の出演者だか、とにかくゆかりのあるゲストを呼び話を聴くという構成のようだった。聞き役は紺色のスーツをきっちりと着ている細身の男性アナウンサー。名前は出てこないが、子供のような顔をしている三十少し過ぎくらいの若手の一人だ。顔はなんとも童顔だったが鼻が人より心持ち大きく、口ひげは画面を通しても少し濃いなと分かる程度に生えていた。
     ゲストはH・A、アナウンサーに紹介されアップになったところで、ものすごく私の好みの顔だと画面に思わず釘づけになった。長い髪にゆるやかなウェーブがかかり、品の良さとほんの抑えられた程度の静かな色香。細い縁の眼鏡を掛けて目はぱっちりとしている。
     輪郭も綺麗な卵型と言ったらいいだろうか、鼻筋は通っているが低過ぎず高過ぎず、唇は昨今流行りの肉厚なものではなく横にも控えめな大きさだ。頬は化粧のせいか血色が良く映り、肉付きは若干薄めで化粧は全体としては抑えられたもの。ちなみに服装は、光沢の落ち着いた水色でさらりとした質感のカジュアルドレスだった。
     彼女のことは昔から知っていたはずで、それなのに何故か名前を言われるまで分からないくらいかつての顔とは異なって見えていた。

     久しぶりのメディア出演となる彼女の近況報告から始まる。どうやらIT系だか新興企業の経営者と結婚したというのは、暮らしぶりを語るそれっぽい口調や内容から何となく分かる。
     まあこんな感じが上々のアガり方なのだと思う。言っちゃ悪いが、はっきり言って一発屋だったのだ。賞味期限が切れるまえにどこかの社長と結婚して悠々自適の生活とは、これまたうまい具合に玉の輿に乗ったというものだ。いまでは旦那の金でエステやら旅行やら、遊び半分の思いつき起業なんかもやりたい放題なのだろう。

     番宣に関わることか近況報告の続きか分からないが、とある職業について語った彼女の態度が男性アナウンサーの気に触ったようだった。
    「そんな程度でしかない仕事とは、どういう意味ですか」
     少し気圧され気味になりながらも、あくまで余裕を失っていないと示すために自然に見える笑顔を決して絶やさない。しかし感情は抑えられず、無理がたたって口元が多少痙攣しているのだった。
    「ところで、あなたのお名前はなんとおっしゃいましたか?」
     H・Aはなぜか聞いているはずのアナウンサーの名前を知ろうとする。というよりも、相手の口から再び言わせることを目的としていた。それはとりもなおさず、アナウンサーごときの名前などいちいち憶えている必要はないとの挑発的な表明でもあった。

     その質問に笑顔で簡潔に答えると、表情は数秒前の取調室の検察官然とした謹厳なものに一瞬で戻った。再び同じ趣旨の質問を繰り返す。
     心持ち体勢を整えるため、肘置きに置かれた両手で身体を椅子の奥に移動する。そして心理的優位の表現と、尊大さを遠慮無く主張するステージのちょうど中間くらいの地点にまで一気に踏み込むよう、いままで揃えていた長い脚を大袈裟に組む。
    「その意味はね、あのね、ところで……あなたのお名前はなんとおっしゃいましたっけ?」
     私はH・Aは整形したのだとその時にやっと気がついた。 
     



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