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    エッセイ1話まとめ(物語構成)【5】人生の仕事はじめに




    (7910字)
    〔1〕/〔5〕
     僕のような人間であっても、ある程度の年齢に達すれば何らかの仕事をしないわけにはいかなくなる。またはそのことに気づく。
     今までにいくつかの職場を経験してきた。長くて五年半くらい、短ければ一ヶ月といったところか。楽しみつつも自分にしては長く勤まった、アルバイトの貴重な記憶が胸の内を様々な糧となって巡りもすれば、如何ともし難い上司の元で仕事も碌に覚える前に辞めた(クビになった)正社員もあった。
     ともあれ、現在のこの地点にいるということは、連綿(おそらくボロ綿に違いない)と続く過去と呼んで差し支えないものが一応曲がりなりにも存在していた証でもあり、つまり過去を振り返るのならばあらゆる物事には始まりというものがある。
     今回語ってみようと思う事柄は仕事始めについてだ。それは一般の例に漏れず、学生アルバイトからの始まりを見ることになる。

     アルバイトと言えば通常高校生からだろう。まずは仕事のそれより一歩手前でなされた、新たな生活の始まりへ少し触れたい。
     当時僕は男子校に通い始めた。別にどんなとこでも入れさえすればいいやくらいに考えていた僕には、入学式から続いていたなんとなく浮かれた気分があったのだったが、それも醒めやらぬままの第一週目の終わり、不意討ち的にこれから試験をやると告げられた。
     週明けに朝一で早速結果が配られ、点数と順位を記す細長い巻き紙の簡易的な成績表を見て目を疑った。しばらくして壇上から教師に声を掛けられ周囲の視線が一点へと集まる。こちらの曖昧な返事をほとんど受け流し気味でさらに一方的な話は続き、若干目元を緩ませた彼の口からのあくまでも他意のない風でしかない調子で報告がされた。直後には今回の全体テストで学年でも結構上位の成績だった人間がクラスにいるのだと皆に知れ渡った。なんで、……俺?

     ともかく、答案用紙の返却と同時で学力テストの結果が正式に発表される頃になると、僕の周囲にはいくらかの人が集まることとなった。勉強を一緒にやろうぜ、教えてくれないか、今度の試験のときにカンニングさせろ云々と様々に。試験の成績が少しの自信につながったことは違いなかったが、それだけだった。
     どうにも未だに実感がなかったというのもあったし、公立高校の受験を無勉強で受けて失敗したような人間である僕は、結果の点数や順位はたまたま問題の巡り合わせと運が良すぎただけと理解していた。滑り止めの私立高に無事入学し、いわば命拾いしたつもりで充分に満足していたので、さらに自分が望んだりする必要のあるものなどない――。と、本気で思っていた。これを機に心を入れ替え勉強にもう少し注力してもいいか、などとの考えは露ほども頭に浮かんでこなかったのだ。
     学校の成績自体や、まじめに取り組む姿勢等々の価値を認めていないわけではなかったし、「社会に出ていく際には重要な武器になるんだろう」くらいに、当時は当時なりの感覚で大まかに世の中の仕組みを分かっているつもりではいたが。ただ、わざわざ試験前に教科書を開き重要な項目をチェックして理解が及ぶまで数度読み込み、ノートを見なおして練習問題を繰り返しやる、という程度に面倒を進んでやる気にはなれなかったからだ。
     クラスの同級生とぼちぼちに上手くやって無事に卒業出来ればいい、そのことだけが目標だった。


    〔2〕/〔5〕
     高校生活初の席決めは出席番号順だったか、隣に座ることになったD村はサッカー部に所属しているのだと、早速本人から教わった。この学校の運動系の部活はなかなか精力的に取り組んでいて成績も悪くなく、一部の球技などでは都大会上位や全国に出場するほどの実力だという。
    彼の背格好は大体僕と同じくらいに、いや、向こうはスマートな筋肉質の身体といった大きな違いはあった。
     朝練から帰ってきて教室に上気した顔で入ってくるサッカー部員の姿は、毎朝の日課となっていた。どうやら彼はまじめに練習に取り組んでいたみたいだし、特に身体の肉付きは充実したものにも映る。チームにも貢献出来るくらいの結構なレベルの腕を持っているのではないかと、傍目からに過ぎずも感じさせた。
     
     しかし彼は国立競技場に出場する(真面目に目指す)選ばれた高校生たちの多くがほぼ例外なくであるように、常にサッカーのことだけを四六時中考え、それを中心にして生活が廻っているというわけでもなさそうだった。
     大事な試合どころか他校とのちょっとした親善のイベント戦が近づくにつれ、周囲に張り詰めた空気の如きを伝播させる(場合によってはちょっと迷惑)でもなく、また将来の国立のスターになるかもしれない自分たちとお前らでは住んでいる世界が少し違うんだぜと、特にスポーツに力を入れている学校ではまま見受ける、校内エリートにありがちな傲岸さを欠片も持ち合わせていそうもない感じは好ましかった。
     言ってみれば彼らの雛型と、中学時代に少しの関わりを持った程度からの勝手なイメージで敬遠していたから。
     クラス内では自分が所属する部活の仲間以外との付き合いのほうがむしろあったくらいで、僕以外の多くの帰宅部連中とも普段から色々と馬鹿話をして笑い合っていたようだった。
     高校第一号の友人と言って間違いない。三年に進級する頃には徐々に付き合いが薄れていったものの、彼がいたからこそ、非常に充実した学校生活となった。まず始めるにあたっての順調な滑り出しとなり、以降もある意味ではその勢いがあったから上手くやっていけたのだ。とても感謝している。

     あるとき彼は「アルバイトをしないか」と誘ってきたのだった。確かに彼とは教室でよく話したし時々一緒に帰ったりもしたが、なぜ僕なのだろう。
     時折、途中から少しばかりの緊張と困惑が僕自身に生まれつつあるとはたと気づかせる。
     彼との会話、笑顔自体は明るいあけすけなものの中にも真剣な表情をもって、ほとんど一方的に何かを質問してきたり時には相談をしてきたり、そうしてこちらの言葉に目を逸らさず、要所々々で相槌[アイヅチ]を打ち頷きながらも真面目な顔つきで聞いてくれているその姿を目の前にしていると、どうにも居た堪[タマ]れなくなってくるのだった。必要以上に自分が買われているこそばゆさがあり、照れくさいような何やら落ち着かない気分だった。いつか化けの皮が剥がれ、彼は失望して僕の元を去っていく――。
     そんな嫌な想像が時々頭に浮かんでくるのだった。人によっては考え過ぎだと笑い飛ばす類のものであっても、自分の中では正体の掴めない妙な焦りや苛立ち、諦めに似た感覚が完全になくなることは高校生活中、他の友人と接しているときも常に片隅にあった。


    〔3〕/〔5〕
     結局あちらの提案により、バイト候補に挙げていた店の下見に行くこととなった。自分にとっては親から貰う毎月の小遣い8000円があれば大体充分で、よほど金に困るなどの事態に遭遇したりもほとんどなかった。
     働くとなれば、面倒なあれこれを当然覚えないといけないのだろうし、嫌な目にあってしまうかもしれないとの漠然とした不安はある。
     ただ、彼にはそれなりに頼み込まれたとでも言おうかノリとしては軽いものに見えはしても、やはりプライドも相応にあるに違いない高校の同級生に一緒にやろうと誘われたのだ。多少なりの恥を忍んだ発言の裏には、初めてする仕事に対しての不安があったのかもしれない。それを少しでも和らげ解消するために僕が力になってくれそうだと判断したのではないか。ある意味では負担でもあったことは認めないわけにはいかないが、同時に嬉しかったのもまた事実だ。

     その店は関東一円にフランチャイズ展開している定食屋だった。普段の通学路とは異なり駅をまたいだ反対側に位置していたために、帰りは人通りもなくなり静まり返った夜の商店街を抜けて来なくてはならなかった。結構離れた地下鉄の駅まで戻らなければならないのは少し面倒ではあったけれど……。

     人生で初めて履歴書を書き二人同時に面接を受けた。向こうからすれば友達同士の応募にはリスクを当然感じたのではと、容易に想像がつく。
     一緒に来るというのは仲が良いわけで、二人で遊びたいから休む(もちろん、はっきりと正直には言わないのが高校生の狡賢[ズルガシコ]さだ)だとか、まだそれはいいとしても『仲が悪くなったからアイツとは同じところにいたくないです』だったり、『顔を合わせたくないから辞めます』といったいささか身勝手な発言は如何にもありがちだ。偏見だが、女子学生の場合はなおさらその可能性が高いのではないかと思う。
     メリットもあると言えばある。学校帰りの短い時間が店側にとってはちょうどいいくらいだと募集をしても、長時間働きたい人間は敬遠する場合が多い。それはまあ二人連れ特有のメリットではないが、あえて言えば平日のシフトを一気に埋める人材を確保出来るという意味では都合がいい。
     もう一つ、二人で遊びたいから休むのではなく、どちらかがどうしても開けなければならない穴を友だちとして助けるために代わりに働く。といった、やや美しくもあるちょっとした青春シーン。そんなものを多少でも信じられる経営者であるならば、二人同時に雇うことも可能性としては排除しない、かもしれない。
     
     結局彼が平日の週三、残りの二日を僕が担当するシフトになった。面接の際には、休みの日には無理だと伝え漏らしがないように二度三度、半ば無遠慮なほどに伝えた。高校生には他にもやることがあるし、まあ仕方ないとでも経営者は思ってくれたのではないか。時間がかかるところから休みに来てもらうまでしなくてもと、都内在住ではない旨は強調してまでは口に出さなかったが、履歴書を一読して判断したのだろう。
     
     仕事の内容と言えば、注文を受け出来た料理を運び、食べ終わった器を流しに入れ、最後客が帰った後に冷水の入ったコップをレジの手前にある流しで洗う簡単な作業など。なにより忘れてならないメインの仕事はレジスターを担当することだ。
     テーブル三卓にカウンター六席くらいの狭い店だったので、慣れてしまえば別段大変でも難しい仕事でもない。夕食時の掻き入れ時に忙しくなる時間帯があるくらい、それが済めばもうあとは気楽なものだった。店長に聴こえない程度に、有線放送より潜めた音量で下手な鼻歌を奏でながら、適当なリズムを取ってテーブルを拭いたり割り箸の頭を揃えたり。中々上手くいってる。順調だしバイトも悪くないもんだ。


    〔4〕/〔5〕(残3909字)
     飲食店の仕事には、多くの場合賄いがつくという役得がある。産まれて初めて働いた僕は当然そんなことは知らなかったので、毎回の仕事終わりに食事が提供されるシステムには随分と感激したのだった。
     なにしろ、客が金を払って食べに来ているものをこちらは只で選び放題なのだから。
     どんなメニューにしてもいいし、普段の店頭では扱っていない超大盛を注文してもかまわない。基本的にメイン料理は厨房の中にいる人間に作ってもらうが、他の作り置きしてある小皿メニューやご飯の盛りなどはこちらの自由なのだ。バイトをしていた一年数ヶ月で5キロも太ってしまったのは、致し方がないことだったと言いたい。そう、無料の誘惑には勝てなかった。

     バイトにも慣れてきた頃、D村が「○○さ、たくさん喰うのはいいけどひとこと言えってさ。副店長が「あの子は遠慮がないね」って言ってたぞ」と、教えてくれたのだった。文句を言っていた副店長の真似をしながら笑って見せる彼に対し、こちらはそれどころではない冷や汗ものの心境。
     僕は次の仕事の日には、今日はこれで上がりますのですいませんが肉野菜味噌炒め定食(これが恐ろしく美味い!!)をお願い出来ますかと頼み、さらに許可をとってからご飯をよそったのだ。
    「遠慮がない」と口にしていた彼は、こちらの顔を一瞬だけ確認すると「別に、いちいち確認しなくてもいいから好きにしなよ」と言いつつも、なんとなく気が晴れたように目元の緩みは穏やかなものだった。その日いつもより肉が多い定食を用意してくれたのは、ちゃんと一言断ってご飯を盛るとのルールを学習した、謙虚に注意を受け止めたらしきバイト高校生に対するご褒美、だったということにしておこう。

     ふと思い出したのだが「嫌な」出来事が一度だけあった。バイト先の店はフランチャイズ店だったので当然オーナーが存在している。時々本人は顔を見せ責任者と雑談をして帰るだけだから気にもしなかったが、ある日夕食時の一時間少し前に、事前の予告どころか一切そういったことを触れた話もなく、奥さんが子供を連れ二人で突然現れたのだ。
     僕は普段以上の接客を心がけた。コップを置くとき下に指を半分はさみ音を立てないようにと、以前教わったやり方をさらなる馬鹿丁寧さでやることにした。しかし緊張していたのだろう。テーブルに軽く底が当たり音を立ててしまい、二人が帰るまでの一時間ほどは客も全くいない静かな店内だったせいもあり、なおさら少し気まずい雰囲気を感じながらの食器の上げ下げとなったのだ。
     二人が店に来てから雑談が終わり席を立つまでのあいだ、結局オーナは姿を表さず、コップのことについては何も言われずいた。やはり考え過ぎかもしれないと、夫人と息子が帰った後は気にもせずにいたところ、それから数日後またもD村に忠告を受けることとなった。
    「なんか、ちょっとやばい感じになってるみたいだぜ。オーナーの奥さんが、お前をクビにしたほうがいいんじゃないかって言ってたんだって。なんかさ、子供に結構言われたらしいんだってな。コップとか食器の運び方とか置き方が雑だってさ。細かいこと気にする連中だなぁ」
    「なんだよそれ、普通にやってたのにさ。いや、俺は結構丁寧にやってるよ。文句を言われるような適当なことしてないけどな」
    「あぁあのさ、店長が○○は普通に働いているからクビにする必要はないって言ってたらしいよ」

     かなり腹が立った。オーナーの息子は小学校高学年かせいぜい中学一年生くらいの小僧だったのだ。そんな子どもに仕事を判断される筋合いはないわ。コップ運びが簡単そうに見えてどれほどに奥深さのある作業であるか……。ボンボンのドラ息子が調子に乗り腐っておってからに、バイトひとつ探すのがどれだけ大変かチミには分かるんかい?!
     最初の反応、気分は確かにこうだった。ただ子どもというものは、大人(少し年上でも)へ対し相当に冷徹、あるいは残酷なまでの推し測りや値踏みをみたいなことをする時がある。彼らはそれぞれの人間が持っている、器の大きさや質をほとんど本能的に察知しているのかもしれないと、すぐにでも感じさせられるようになっていった。
     僕は友人にあれこれ言っている当の最中[サナカ]にも、自分の核の核にある、意識を逸らし薄目でしか見ていなかった本当に本当のどうしようもないどうしようもなさを、子どもの目で見透かされた気分になっていったのだった。努力でどうとかたまたま学校の成績がちょっと良かったとかは全く関係なく、生まれつきの問題だから絶対変えようもない「駄目」を。
     以降二度と、経営者本人は別にしてもその家族に会うことはなく、問題も自然と収束していったので、ある意味では不幸中の幸いだった。


    〔5〕/〔5〕
     しっかりとした傷による痛みとは違う、突然に知らしめさせられた不吉な病名の息苦しさ。当初胸へと広がっていった染みのようなそれは、僕のなかで時間の経過とともに次第に薄まっていった。日々、平凡で順調な毎日を重ねていくにつれて、あまり意識するまでは強く感じられなくなっていった。

     働き始めて一年後くらいだったか、女子大生風の女の子二人が新たにバイトとして入ってきたのだった。一人は黒髪で落ち着いた雰囲気をした長身の美人、もう一人は少し茶色がかったショートカット、こちらは対照的に頬が少しふっくらとした可愛らしい顔で、身体も小さいせいか少し幼くも見える。早速数日のうち彼からどっちが好みかなどと、体裁は質問実際には問い詰めを受け、どちらもまあまあ魅力的ではないかとの無難な応えでとりあえず茶を濁すことにした。
     ただ、仕事を教える機会があったから本当は茶髪の子のほうがより親しみが持てる、などということは冷やかされるので彼には言わなかったのは、高校生男子特有の照れと自意識なのだ。

     あるとき、休みの日に店から近いJRの駅前にでも待ち合わせをして、バイト先の四人でボーリングに行こうと突然の企画が持ち上がった。
     ショートカットの彼女はボールを両手で抱えるようにしながらちょこちょこと不器用な走り方から、ほんの先に落として転がす少し変な投げ方。そのせいもあってかは分からないが、七十点から九十点台のあいだの成績ばかりだった。まあ点数が伸びないのはこちらも似たり寄ったりなので楽しければいいのだ。あまり経験がないとレーンに対してどうやって助走をつけるか分からないので、愛嬌があってそれはそれでいいじゃないか、とも。
     次の日D村と前日の遊び全体も含め色々と話していた際、彼女についての話題から思い出したのか、走り方を少しからかうかのように笑いながら話すのだった。ちょっとその様子が気になったのと、僕の多少の気がバレてしまったかと思い、「お前はあっちの子と付き合えよ。お前のこと、高校生のわりにしっかりしてるし仕事の面でも頼りになるとか言ってたぞ」などと黒髪の女子大生と彼をくっつけてしまおうと企む演技をしてみせた。
     あえて大げさに茶化したこちらの発言を受けては少しヘドモドし出し、普段の活発で積極的な感じからは想像のつかない純情さを露呈、話題は逆転、立場も攻勢に転じたのだった。
     結局僕が知る限りでは、それ以上の深い交流もバイト仲間という関係からの進展もなかった。

     互いがいつ店を辞めたのかはっきり憶えていない。おそらく彼の部活が忙しくなり、こちらも勉強にどうしても集中しないといけない時期が重なったのではと推測している。どちらが先に店を去ることになったのか順序は定かではないが、ともあれ仕事は無難にこなしていき、中の人間とはまあまあ上手くやっていたのだ。友人は年上の人間との付き合いが上手くオーナーや店長に可愛がられていて、つまりその辺に関しては問題はなかったろう。
     以前に軽い小言を口にしていた副店長とも、それ以降記憶している限りでは良好な関係であったはずなのだ。もちろん他人と一つの場所で働いている以上、小さな軋轢やすれ違いは完全には避けられないものだから、多少のことはあったかもしれないが。
     ある程度のマトモな理由があり、しっかりと手続きを踏んで迷惑をかけないように最後を迎えたと思う。一年以上世話になっていたので、立つ鳥である僕が跡を濁し過ぎてしまってはさすがに申し訳ないし、あり得ないと信じてもいるのだ。
     以降オーナーからバイトの進退に関しての話が出ることもなく、上にも書いたように奥さんや息子が出張[デバ]ってくることもなかった。少なくともそちらの点では、店長やらあるいは副店長も壁になってくれていたのかもしれないと、今では思う。最後まで一応だけれど全うさせてくれた。

     あれらの経験が、現在の自身にどう活きているかは分からない。ただ、人生の仕事始めにしては我ながら上出来ではないかと、総合的最終的に評価している。確かに胸を探れば小さな影みたいにある、現在にまで続く正体のない不安感や所在ない気分、自分自身を頼りなくする感覚はあった。であっても、一方では追いつかなさをあえて押し込め、空回りや失敗を繰り返しては徐々に学んだのだ。僕なりの拙い仕方でもトラブルに対処しようとし、嫌なことから逃げずに耐え多少は乗り越えもしたからだ。
     不甲斐ない自分の今の状態を見るにつけ、あのときの若い身でも何とか頑張れたんだと奮起の材料の一つにでもなれば――。そしてそれらが良い仲間や上司に巡り会えてこそだった。最良の形などというものは分からない。あれらは「僕にとって」の出発の地点であり、美化や多過ぎる含み込みを理解した上でもやはりなお、現在このときにでさえ振り返れば目標とする、働く姿のひとつでもあるのだ。
     だから自身に対してだけは声を大に、いや、少しだけ潜めて遠慮して言おうか。……全く意味のあるアルバイト時代だったと。




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