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    タイ旅行、後日まとめ記【全7月2日分】





    【7月2日】に記したメモから
    〔1〕/〔4〕(1972字)
     マレーシアに着いたときにはすでに夕方でした。我々の乗ったミニバスはマレーシアのペナン島へ向かう途中でしたが、広い鉄橋と思しき建造物に差し掛かった途端にそのまま動かなくなりました。渋滞のせいだと思っていたらそれは船の一部だったのです。
     前の座席から漏れる、思いも寄らないほど無防備な彼の驚きやら感心のため息。さらに少し興奮も混じった声を聴きながら、他の乗客がそうしていることに気づいた私も左の窓を開け放ったのです。久しぶりに気持ちの良い天然の風、やや粘り気を含んだ甘い汐の香りを顔全体で浴び、周囲に行われる伸びやかな喧騒へ身を委ねているうち、彼と同じ言葉がふと口をついて出たのでした。「こりゃ、あぁすげえ船だなぁ」

     陸に着いたミニバスは港を後に直進しながら市街地に入り、やがて車から二人三人と客は降りて行きました。
     我々は最後のほうまで残っていましたが、途中何かを聞いてくる運転手へ何も応えることをせず、時々小声で彼と話す以外はほとんど窓の外ばかりを見ていたのです。実際のところ、ホテルの位置なども聞かれても反応せず(出来ず)に、やはり運転手の顔も一切見ないで、というか敢えて目も合わせることなくぼーっとした感じに聞き流していたのでした。
     これは別に運転手に意地悪をしていたわけではなく、どこで降りたら良いか全くわからなかったからでして、仕方なしの薄い反応なのです。
     大方、乗り合いバスは自分の望む場所で降りても構わないシステムなのでしょう。先に降りた乗客は目的の場所か最寄の地点を把握していたのでしょうが、当然初めての入国となるマレーシアのしかもペナン島となると、元々行き当たりばったりの私たちには、とりあえずどこで降りれば良いかと見当さえつかなかったものですから。
     車が停まり強制的にでも降ろされる終点がおそらくあるはずだ、そこまで乗っていればいいと考えていたのです。ルート設定に終点やらタイに向かう客を待つターミナルがこの先にあると、希望的な観測を大いに含ませて。

     その後すぐに車から下ろされ、近くにホテルがあるから自分で探せといった類のことを言われたと、運転手の英語とジェスチャーを解釈しました。車が去る姿を多少心細い気持ちで見送り、しかしいつまでもじっとしているわけにもいきませんので、我々はまず(これは定番となりつつあるのですが)コンビニへとアンテナを向けることにしたのです。人が集まるところにコンビニあり。
     バンコクなどの都市部では日系企業のコンビニの姿を目にするのは全く珍しくもありませんが、これらの観光地でも、特に生活の利便性が極度にも発達した日本の都市部(いや、ある意味では離島を除いた全国津々浦々でしょうか?)に住んでいるような人間がこの地に旅行者としてきた場合には、コンビニは十分な需要があります。日本人以外でも、都市部へ住んでいる他国の人々にあっても同様に受け入れられるのではないでしょうか。
     特に日本人の場合傾向が強めな感じでしょうか? 現地の人が経営する店を利用することに二の足を踏む人は少なくないのではとも想像します。いまいち品質に不安があるとか、適正な価格で自分達に売ってくれるのかを心配する人もいるでしょう。
     色々あって日用品はコンビニや、例えば名の通ったチェーンストアのほうが品質に信頼が置けるし買い物に余計な気を使わなくていいと、長期滞在者ではない一旦立ち止まり通り過ぎるだけの旅行者の中ではそういった考え方は少なくないのでは。 

     私たちは街中に無数に存在する現地の人が経営する店を頻繁に利用し、食事はほとんど麺類などで済ませていました。これは、相方がそれを望んだからという理由もありますし、まあ何をかいわんや節約の意味合いが一番大きいのですけれど。
     ただ外で食べる際はほぼ毎回でしたので、少々飽きてきていた、と言いますか……。少なくとも安いなら安いなりに店を探す楽しみやらもなく、とりあえず最安値のスープ入りの麺、そこへ肉団子をトッピングするかしないか、といったメニューですからどこで食べても大して変化がないわけで。感じとしては自宅で一人採る義務的な食事と似たようなものかもしれません。
     ちなみに、これまででは貧乏性分の我々がコンビニを訪れた理由は酒のためのみなのでした。
     彼の言っていたことなので丸々全てを信用出来るか分かりませんが、タイは敬虔な仏教徒の多い国なので酒屋は街中にはあまり無いとのこと。言われてみれば確かに私がコンビニ以外でタイで買った酒は、町外れにある酒屋のメコンウィスキーだけです。
     日が落ちれば酒を飲んでも構わないというルールが私たちの中にありましたので、手持ちの酒が切れた状態で酒屋を目にすることがあれば、余程急いでいるとき以外大抵は覗いていたはずですが、タイの酒屋に関してほとんど記憶にないのですね。


    〔2〕/〔4〕(1519字)
     果たしてコンビニは見つかりましたが買い物をして店を出たときのこと、今回の旅で初めてといってもいいでしょうか、雨に降られたのです。
     初めのうちはそれほど強くもなく、我々は少しの時間を潰すつもりで買ったビールとつまみを店の軒先で食べていました。彼の話によると、ここら辺はすぐに雨が止むから心配はいらないといっておりましたので、だったらと思いしばらく雨宿りをさせてもらっていましたが、弱まるどころかいよいよもってざんざと勢いを増していったのです。

     当時私たちが有するタイ周辺の気象の知識といえば、乾季と雨季と冷期があり、今はまだ乾季だから大丈夫なはずだという、冷静に考えれば非常にざっくばらんとした頼りないもの。今回の雨が単に一時[イットキ]降って通り過ぎるのか本格的に長時間続くのかは、現地の人間でもないのでおおよそにも判断出来ないのです。
     情けないやら腹立たしいやらで、今回で初の活躍となる合羽をそそくさとバッグから取り出すこととあいなりました(実は雨具を持ってきたこと自体を内緒にしてあったのです。旅の打ち合わせの段階で彼から教わる、現地の気象に関する知識を全く信用していなかったわけではありません。が、しかし1ヶ月のうちに1日でもそれなりの雨に見舞われることがあっただけでも、十分持ってきた甲斐があるのです。合羽を持たずに雨に何日も降られたりとなれば、誰に文句を言えましょうや?)。
     馴れないせいかなかなか着られずに、ともかく雑にでも被ってしまいました。
     彼に対して後ろめたい気持ちもいくらかありましたが、とにかくすごい雨でしたので風邪を引いても困りますし、体調が悪くて相方の立てた予定を変更させたりすると、ネチネチと後で文句を言われるだろうことが容易に想像されるというのが憂鬱でして、つまり最終的な決定打なのです。風邪を引いてしかも文句を言われたのでは堪ったものではありません。

     我々は店々の軒先を利用出来るところは庇[ヒサシ]の下を通りました。早いうちに宿かそうでなくとも落ち着いて食事を取れる、時間を潰せる場所がないか左右の確認を怠らずに走ったのです。
     そこは店の前面が開け入り口は広く、右側には調理済みの食品がずらり、金属のバットごと種類別に並んでいるといういかにもな大衆食堂。少し奥にはウェイター係の中年男性がいて、テーブルの上を拭きながらも周囲に目を配っているのでした。また客が使い終わった食器を洗面台に戻したり料理の入った金属のバットを陳列台に運んだりと細々と忙しそう。店の中ではそれよりも若い調理人が鍋を振っている最中にも顔をいくらか後ろに傾け、一人だけいる客に対して何か声を掛けているようでした。
     私はすかさず彼に言い、何とか当面の雨宿り先になってもらう店に入ることにしたのです。これからでもそうでしたが、何か用件があるときにはしかとこちらから伝えないと、要件を満たすに準ずる対象が目の前にあったとしても、平気で素通りしてしまうことがあるのですね。
     
     我々は相当の距離を荷物を抱えたままだったので、周囲を確認しながらの小走りとはいえだいぶ息が上がり喉も渇いていました。この国でもタイ同様に、特に大衆食堂などでは最初にジュースの注文を受け付けてくるようでした。暑いときには非常に暑くしかも湿度も高い気候のため、私はそのシステム(慣習?)に馴れていましたし逆に便利だとすら感じるようになっていましたから、特に不要とも過分とも思わずにいたわけです。
     早速アイスコーヒーを頼み、それに続いて彼も同じものを。5分後にちょうどアイスコーヒーが来るか来ないかのときでしょう、隣りのテーブルに現地の人と思しきマレー人の若者4人が腰を落ちつけたのでした。


    〔3〕/〔4〕(1532字)
     服装の簡便さからしてもそうではないか、と(隣の客はおそらく現地に住まうマレー人でしょうが、別に街中では中国系やインド系の人々も多く見受けられました。彼らもだいぶ長い歴史をともにし、大小の争いはあったかもしれないにせよ、やはり共に生きるその土地の人々なのでしょう)。
     彼らも何かを注文したようでして、来た物を傍目から見た限りではレモン三分の一ほどの切れ端の入った炭酸水でしょうか。数分後テーブルに置かれた大皿には、インドのナンに似ているパンが何枚かほど。彼らは談笑をしながら時々我々のほうを気にしているみたいで、少し会話の余韻を残した笑顔でこちらのほうを見てくるのでした。

     二人とも特に店の中で目立つ格好をしていたわけではありません。ただ、地元民が夕飯にしようかと馴染みの街の食堂へ行ったら、ひどく雨に降られたであろう異国人がのっそり(あるいは一見むっつり)座っていたとして、しかもその異国人が自分達の普段食べている物を何食わぬ顔でがつがつ食べているところを見たら、逆の立場でも少しは興味を持つでしょうね。
     例えば、日本の「吉野屋」で東アジア系の外国人が牛丼を食べているのを目撃したとしても、都会であるなら大して気に留めることでもないでしょう。しかし街中のこじんまりとした個人経営の大衆食堂にそんな人たちが突然扉を開けて入ってきたら、少しばかり興味を惹かれます。
     また、「吉野屋」にいる外国人が欧米人だった場合は、東アジア系の人たちに対してよりは関心を誘われるのではないでしょうか。ですが日本の中でも欧米圏の、外資系が多く進出しているような(高給取りでも、昼飯はたまにファストフードを利用するのでは)土地では珍しい光景ではないかもしれませんから、やはり土地柄によりますね。つまり、土砂降りの影響で閑散としているペナンの食堂にポツリといた、私たちの姿が少しばかり珍しかった。
     
     さて食事について。我々が注文した物は無事運ばれて来たわけですが、その直前、頼んでもいない小皿料理やらサラダやらが何故かテーブルの上に載せられていたのでした。私はその後に起こるであろう避けられない現実を想像しては、どうにも閉口しないわけにはいきませんでした。
     頼んだ品物は羊の肉と野菜を炒めたご飯でしたので、それがテーブルにあるのは当然いいのです。ただ、食事を始める前も後もなく次々と皿が運ばれるのですね。半ばわけも分からないままようやく注文した料理が目の前に現れ、さあ手をつけ始めようかとしたところで、今度は一匹丸ごとの姿煮が入った魚介カレー風、ついでにフライの盛り合わせまでが出て来る始末。円形のそれなりに大きなテーブルが皿で溢れんばかりになっていました。

     私は、正直なんとも腹立たしい気持ちになりつつありました。あくまでも単品の料理を頼んだつもりでいましたから、貧乏旅行者である私たちがコースで料理を注文するなど!!
     つまりこちらが頼んだ物以外にも勝手にテーブルの上に載せ、その分の代金まで請求されるのではないかと、何やら嫌な予感を覚えずにはいられなかったわけです。片言の英語による抗議を早速行いましたが全くウェイターには通じず、何故か口元を緩めてこちらを見ているだけ……。
     そうなってくると、さっきまでは若い旅行者に寄せているのであろう好意的に思えた笑顔すら、何らかの含みがあるものに見えてしまう被害妄想が起こってくるのですね。
     私たちはぶつぶつと一言二言口にして、結局全てを平らげました。この時点でどちらにしろ金は払わなくてはいけないことになっていたわけですから。手をつけていないのに金を払わされるのはさらに業腹ですので、胸へのつかえが大いにあったとしても、半ば自棄になった気持ちをなんとか宥めすかしつ。


    〔4〕/〔4〕(1290字)
     雨も止みこちらも新しく注文をする意思がない以上、いつまでも店に長居するわけにはいきません。食事が終わってからも会計をどうするかとなんとも吹っ切れない気分で相談していましたが、隣りで軽食をとっていたマレー人の男性達はそんなぐずぐずしている我々の姿に対し、段々と奇異なものでも見るような目になっていったのでした。
     新たに注文もせずにこれ以上居座ってはいられませんから、ついに覚悟を決めて店を出ることにしました。そのためにはまず勘定を払わなければいけませんので、重い腰を上げ店の手前にある食品陳列台の脇にあるレジへと。ウェイターが近寄って来る最中、手元にある一枚の紙を拾い上げちらと確認しましたが、おおよそ当初に予定した以上の値段の示された会計伝票であるに違いない、……。

     私たちに彼の早口のマレー語が分かるはずがありません。それに気がついたのか、今度は随分ゆっくりとした英語で伝えてくれたのです。彼の何度も口にする、おそらく数字らしい短い単語へ耳を傾けているうち、私は意味をようやく理解し始めました。すると、理解したはずの単語では金額的におかしいのではないかと感じ、彼に伝票を見せてくれないかと頼みました。
     相手があっさり見せてくれた伝票は日本で使われているものにも似た細長い用紙でして、罫線の中に青ペンで殴り書きにされた文字があるのは確認出来ました。が、メニューの品目自体を読むことは出来ません。各段ごとに分かれている左側の項目は多分品名で、右側が金額でしょうか。金額記入欄を目で追いかけると、一番下には『10』と枠からはみ出し気味にかなり乱雑に書かれ、数字の下には強調するための二本線が引かれていたのです。

    「Ten-リンギット?」私はそう訊ねました。「yes,yes」
     1リンギットあたり当時は32円くらいでした。食前には二人でアイスコーヒーを飲み、いわばフルコース(少しオーバー表現ですが)を食べたわけですが、二人分全てを合計しても350円にも満たないという、まさに信じられないくらいの安さ。全くもって私は感嘆を抑えることが難しいほどでした。
     タイよりもっと物価が安いんだってな。と、食事の後になって相方から聞かされました。ともあれ、店の人間のボッタクリバーの如き押し売りのやり口や、隣りにいるマレー人の男性たちまでも、カモの観光客が騙される光景をつまみにしている悪趣味な連中なんだ――。そんな風に勝手に憤慨していた十数分前の自分が非常に恥ずかしく、店を後にした私は一人天に向かって謝罪をしたいほどの気分だったのでした。
     彼らは普段通りに食事を提供し代金を受け取っただけですが、こっちとしては緊張や誤解から開放されたためからのやたらな反動があったわけですね。マレーシアという国はなんと素晴らしい国なんだと、内心では結構本当に感動していたのです。当然、相方にはそれらを口にするはずもなく、自分の胸にしまっておきましたが。
     ペナンにいるあいだはこの店をこれからも利用したいものだとそのときは思ったのですが、常に移動し続ける私たちは旅行中に同じ店の暖簾を再びくぐる機会は、残念にもありませんでした。




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