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    エッセイ(物語構成)【6】幸せ一粒、二粒~1





    (2160字) 
     クラスには男子の憧れの的になるような可愛いらしい子もいれば、とりあえず中学生の示す拙い形のものであっても恋愛の対象とされない女生徒もいる。そのことと人物として魅力が乏しい――または少なくとも友達がいない――ことがイコールというわけではもちろん無く、相手にもよるわけだが、場合によってはむしろ接する際に男子側は気兼ねしないで済ませられる分だけ、彼女たちには同性の友達に似た感情を持っていたりすることもある。
     なかなか面白いもので、相手との関係性が同性(特に擬似的な男子同士として)の友人間に近いと互いの意識が合致している場合、相手の女の子は自分を女として扱われることをほとんど望んでいなかったりもよく見受けられる。別に気にするほどのことでもないなどといって、必要とあらば体の一部分を露わにしてまた触らせたりもある。特段仲の良いわけでもないクラスメイト程度のつながりのある異性へ向けられる、思春期特有の両性が半ば意固地に迷信的に持つ接し方、あるいは関係の各段階ごとに正しいとされる一般的なあり方を知っている場合。それらへの囚われが強まれば、この関係性の上ではマイナスでしかないと当人(女の子)が感じているからだ。
     とはいえ中学生くらいになればいくら気安く肩を叩き合うような間柄であったとしても、さすがに胸の周辺を触ったりするのは男子側にも憚られる気持ちは強くあるし、言うまでもなく膝より上の下半身部分などもそうだ。小学生当時に比べれば気安く触れられない秘匿の部分が増していることは、一方で成長の過程においては至極当然であるとも言える。
     たとえ仲の良い女友達であったとしても完全に男同士に向けられるものとは違い、ある一線を踏み越えそうな瞬間に突然の気恥ずかしさを知り、やはり相手は自分とは違うのだと厳然とした事実に気づかされるのだ。
     
     彼女達が女の子らしさを伴う照れや戸惑い、微かな弱さの表情を見せる瞬間に遭遇する機会は決して多くはないかもしれないが、それは意外なほど突然に現れる。いわゆる「女の子」からの、女性的に映るありがちな予想された反応よりもいくらか急激な、不意打ちの変化として受け手によっては感じられるのだ。ここには何故かしら、当たり前の事実を確かめただけのはずが発見の意識があり、同時に一種の寂しさもある。
     そんな時、何くわぬ顔でこちらも対応しようとするが、大体いきなり変わってしまったかにも見える印象や、発言や行為を促すに至った本意に内心は相当どぎまぎしていたりして、数分後には互いにバツが悪くなって結局いつも通りに戻ろうとする。
     
     触る触らせる云々とは誤解を招くかもしれない言い方なので説明を付け加えると、僕は柔道部だったので同じ部活に所属していたN海とは、当然練習の際には身体を合わせることにならざるを得なかったのだ。女子部員は彼女一人しかいず、そうしないわけにはいかないからだ。
     ところが、同級生のI畑は彼女と打ち込みや乱取り等の組み合う練習を一切拒んだ。――「女に手を上げるなぞ自分には出来ん」やらなんやら、そんな感じに。僕は、訳の分からないことを言わずにやらないと向こうは相手がいないんだからとか、あと女だからやらないなんて失礼だろうなどと諭してはみたのだったが、彼は頑として組もうとはしなかった。
     やり取りを見ていた彼女は、「○○(僕の名前)の言うとおりだからね。別に気にしないでよ」と、彼の肩にふっと手を掛けそう告げた。僕としては道理の分かる味方が出来たとばかりに、横から少しばかり調子に乗って口にしたのだった。「本当だよ、胸に触ろうが股間に触ろうが、練習なんだったらしょうがないだろ」「それはさすがにダメでしょ」背を向けていた女子部員はこちらに振り返り、呆れ顔で釘を刺されたが。
     
     彼女たちにも好きな男はいたのだろう。ひょっとしたらいつもじゃれあっているクラスの連中にいたのかもしれない。しかし相手は、例えば学年のアイドルに夢中になっている。自分はその女の子とも友達だし、いつも一緒にいるアイツも気になるしと微妙な心境。恋愛漫画ではありがちな設定だが、もしキューピット役などを頼まれたりしたら複雑な気分だ。 
     
     中学二年生のバレンタインデーの日、昼休みにN海からチョコレートを受け取った。義理チョコではあっても、確かに嬉しかった。口には出さずそれでも微かな期待を捨て去ってはいなかったとはいえ、結局は誰からもなどと内心は考えていたので、実際には放課後を待つまでもなく想像したままになるであろう僕のことを気遣ったのではないか、と。
     ただ、その瞬間は突然にしかも随分とあっさりしたものだった。意中かどうかはそれぞれとして戦利品を手にした周囲の男子連中のような、殊更になされる照れ隠しの過剰な反応すら追いつかずにいるほどの。向こうはまるで、先生に頼まれた教科のプリントでも皆に配るみたいな気安い調子とでもいうか、ほとんど事務的な感じで渡してきたのだった。 
     受け取った後、伏せていた顔を上げても視線を追わせることが精一杯となり、何を考えているのか少しだけを溜めを作ってから振り向いた彼女は、いつもの笑顔を見せた。
     馬鹿話をする時のように大口を開けて、あけっぴろげに楽しそうに、本当に心から楽しそうに。




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