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    エッセイ1話まとめ(物語構成)【6】幸せ一粒、二粒





    (3920字)
    〔1〕/〔2〕 
     クラスには男子の憧れの的になるような可愛いらしい子もいれば、とりあえず中学生の示す拙い形のものであっても恋愛の対象とされない女生徒もいる。そのことと人物として魅力が乏しい――または少なくとも友達がいない――ことがイコールというわけではもちろん無く、相手にもよるわけだが、場合によってはむしろ接する際に男子側は気兼ねしないで済ませられる分だけ、彼女たちには同性の友達に似た感情を持っていたりすることもある。
     なかなか面白いもので、相手との関係性が同性(特に擬似的な男子同士として)の友人間に近いと互いの意識が合致している場合、相手の女の子は自分を女として扱われることをほとんど望んでいなかったりもよく見受けられる。別に気にするほどのことでもないなどといって、必要とあらば体の一部分を露わにしてまた触らせたりもある。特段仲の良いわけでもないクラスメイト程度のつながりのある異性へ向けられる、思春期特有の両性が半ば意固地に迷信的に持つ接し方、あるいは関係の各段階ごとに正しいとされる一般的なあり方を知っている場合。それらへの囚われが強まれば、この関係性の上ではマイナスでしかないと当人(女の子)が感じているからだ。
     とはいえ中学生くらいになればいくら気安く肩を叩き合うような間柄であったとしても、さすがに胸の周辺を触ったりするのは男子側にも憚られる気持ちは強くあるし、言うまでもなく膝より上の下半身部分などもそうだ。小学生当時に比べれば気安く触れられない秘匿の部分が増していることは、一方で成長の過程においては至極当然であるとも言える。
     たとえ仲の良い女友達であったとしても完全に男同士に向けられるものとは違い、ある一線を踏み越えそうな瞬間に突然の気恥ずかしさを知り、やはり相手は自分とは違うのだと厳然とした事実に気づかされるのだ。
     
     彼女達が女の子らしさを伴う照れや戸惑い、微かな弱さの表情を見せる瞬間に遭遇する機会は決して多くはないかもしれないが、それは意外なほど突然に現れる。いわゆる「女の子」からの、女性的に映るありがちな予想された反応よりもいくらか急激な、不意打ちの変化として受け手によっては感じられるのだ。ここには何故かしら、当たり前の事実を確かめただけのはずが発見の意識があり、同時に一種の寂しさもある。
     そんな時、何くわぬ顔でこちらも対応しようとするが、大体いきなり変わってしまったかにも見える印象や、発言や行為を促すに至った本意に内心は相当どぎまぎしていたりして、数分後には互いにバツが悪くなって結局いつも通りに戻ろうとする。
     
     触る触らせる云々とは誤解を招くかもしれない言い方なので説明を付け加えると、僕は柔道部だったので同じ部活に所属していたN海とは、当然練習の際には身体を合わせることにならざるを得なかったのだ。女子部員は彼女一人しかいず、そうしないわけにはいかないからだ。
     ところが、同級生のI畑は彼女と打ち込みや乱取り等の組み合う練習を一切拒んだ。――「女に手を上げるなぞ自分には出来ん」やらなんやら、そんな感じに。僕は、訳の分からないことを言わずにやらないと向こうは相手がいないんだからとか、あと女だからやらないなんて失礼だろうなどと諭してはみたのだったが、彼は頑として組もうとはしなかった。
     やり取りを見ていた彼女は、「○○(僕の名前)の言うとおりだからね。別に気にしないでよ」と、彼の肩にふっと手を掛けそう告げた。僕としては道理の分かる味方が出来たとばかりに、横から少しばかり調子に乗って口にしたのだった。「本当だよ、胸に触ろうが股間に触ろうが、練習なんだったらしょうがないだろ」「それはさすがにダメでしょ」背を向けていた女子部員はこちらに振り返り、呆れ顔で釘を刺されたが。
     
     彼女たちにも好きな男はいたのだろう。ひょっとしたらいつもじゃれあっているクラスの連中にいたのかもしれない。しかし相手は、例えば学年のアイドルに夢中になっている。自分はその女の子とも友達だし、いつも一緒にいるアイツも気になるしと微妙な心境。恋愛漫画ではありがちな設定だが、もしキューピット役などを頼まれたりしたら複雑な気分だ。 
     
     中学二年生のバレンタインデーの日、昼休みにN海からチョコレートを受け取った。義理チョコではあっても、確かに嬉しかった。口には出さずそれでも微かな期待を捨て去ってはいなかったとはいえ、結局は誰からもなどと内心は考えていたので、実際には放課後を待つまでもなく想像したままになるであろう僕のことを気遣ったのではないか、と。
     ただ、その瞬間は突然にしかも随分とあっさりしたものだった。意中かどうかはそれぞれとして戦利品を手にした周囲の男子連中のような、殊更になされる照れ隠しの過剰な反応すら追いつかずにいるほどの。向こうはまるで、先生に頼まれた教科のプリントでも皆に配るみたいな気安い調子とでもいうか、ほとんど事務的な感じで渡してきたのだった。 
     受け取った後、伏せていた顔を上げても視線を追わせることが精一杯となり、何を考えているのか少しだけを溜めを作ってから振り向いた彼女は、いつもの笑顔を見せた。
     馬鹿話をする時のように大口を開けて、あけっぴろげに楽しそうに、本当に心から楽しそうに。


    〔2〕/〔2〕
     N海の家は自宅から近いせいもあってか、役員だった親同士は地域の集まりで顔を合わせることが多く、幼い時分には彼女も参加していたであろう会合に僕は何度も連れて行かれていたのだった。加えて小学校から近所の同じ公立校に通ってはいたので、自分にとっては同年齢の顔見知りの少女という感覚はあった。ただ、最近の物語メディアでしばしば取り上げられるような、好意的なイメージがかなり優先したいわゆる幼馴染とは違うような気はする。
     
     中学校卒業の日、友人のN上がR川さんの写真をN海から受け取ったとの話を聞いた。式の終わった後、クラスで撮っている仲の良い友達同士のものであったり、感極まった女生徒と抱き合っている場面だったり。目を赤くし少しうつむいた彼女はピンクのハンカチで涙を拭っていた。
     その姿は何よりも清廉で、健気、柔らかな雰囲気の中に力強い美しさを秘め……。本当にこの学校生活を楽しんでいたのだろうし、友達も当然たくさんいたのだ。全力で真っ直ぐ、多分、悔いもないような毎日を送っていたのだと思う。僕とは全然違う人生だけど、それでも、同級生だった。数年を同じ教室で過ごしたのだ。同じ空気を吸い同じ黒板に向かい、正面を迷いなく見据えられた瞳の彼女、常にその横顔を見つめることしか出来なかったけれど。
     互いの家から歩いて数分の距離にある大きな交差点の近くで、N海が手渡してくれた封筒に入った写真。感謝を述べると封のシールをゆっくりと丁寧に剥がし、中身を確認させてもらった。惜しむように再度その肖像に視線を落とすと、目元を押さえる主役の脇の方に、彼女も手を前に合わせちょこんと立っていることにふと気がつく。男子が知らない、女子だけの大切な関係がある。二人は友達だったのだろう。
     
     心持ち肩をすぼめて伏し目がちに、そこには決意の強さ、揺らぎ、手探りに一歩先を踏み出そうとする者が持つ未来への不安といった、様々な思いの滲んだ瞳があった。こちらをただじっと見つめる、何かを伝えようとしているかにも写る様子を見ていると、次第にその感情がこちらにも沁み透る。彼女はいつも強かったのだ。そして、ずっと弱かった。
     切り取られた永遠の一瞬――僕は彼女たちの美しい姿を収めた写真を封筒に収めると、再び目の前の女友達に礼を告げた。
     なんて言っていいか分からないけど、ありがとう。なあ、これからはお互いに別々になるけど頑張ろうな。……まったく、感謝しなさいよ。○○がR川さんのことあれなのは、なんとなく知ってたけど。いや、なんていうか、まあ、それはそうなんだけど、N上にこのことを聞いたからさ。俺もやっぱり欲しい気がして。うん、N上も、……だったね。あのさ焼き増し料金払うから、お前の家に送ればいいかな? いいよ、ね、記念なんだから、そんなこと。みんなでカンパ集めてたくさん作ろうっていってたから、特にあの子の分は多めにね。うんうん、競争率高いからねぇ。そうか、あのさ。……なあに? ――元気でな。うん、そっちも。
     
     卒業以降彼女たち二人には会っていない。N上は二十歳過ぎまで麻雀をしたりカラオケなどに行ってよく遊んだものだったが、I畑は街中で時々見かけるくらいだった。
     時間は過ぎる。残酷に容赦無く、何もかも一緒くたに押し流すこと遠慮無く。時として胸に迫った想いさえ忘却の彼方と薄れ、この手に掴むことの出来ない記憶の蜃気楼と消え去る。
     
     最近になって再び、忘れられたはずの会話がひとつ過去の場面を伴って色づく。友達のほとんどいなかった僕にとっては、子供の頃に優しくしてくれた数少ない同級生だった。
     
     少しばかりぎこちなく、簡単に何事もなかった地点には戻れない。
     そんな時相手は、おかしな雰囲気を作ってしまって申し訳なかったとでもいうような対応をしてくることがある。
     顔を少し逸らしながら二人で乾いた笑いからいつもの調子へ、その最中にちょっとこちらも悪いことをしてしまったと、思い上がりだと分かってはいてもつい居た堪れない気にもなる。向こうがあまり出したくない、出すべきではない(と、ある種の女の子は決めつけている。これは似た立場の男にも当てはまるか)表情として務めているのに、上手く付き合えなかった。フェアではない、いや、フェアとは違う何か、か……。

     口にするほの甘い一粒、そして胸にもう一粒。




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