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    小説メモ(イメージとしての習作)【1】僕、森星~3(未完)


    (2967字)
        どうも僕は細かいことを気にしすぎるのかもしれない。もう少しこちらから積極的に聴いたほうがいいんじゃないかと思いながらも、初対面というのは大きな要因でもあって口を開くのを憚[ハバカ]られた。何気なしに口にした発言が余計な迂闊[ウカツ]なものだったりすれば、それがのちにまでほんの小さな暗い影を落とす場合もある。自分が慣れていない状況に喋り出そうとする言葉に関しては他人より慎重、というよりもある意味では臆病といえるほどだった。
     たぶん、初対面向けにふさわしい会話を、ヴァリエーションは少なくでも記したみたいな一覧表が僕の中にもあったはずで、ただなんとなく、それを口にする時に感じるよそよそしさが相手に伝わることが、その時に限っては特に間違っているような怖い気さえした。あと、無難でありきたりなやり口で接していくこちらの姿を見て、頭の悪さが相手に過剰に伝わってしまうかもしれない、それも嫌だった。

     中学校の正門を出てちょうど二車線を隔て、向かいには小学校のコンクリートの塀が僕の身長と同じくらいの高さに眼前に広がっている。そこの小学校は数年前まで通っていたところではなく、もっと自宅から近くの、ここよりいくらか旧く広い公立校に毎日6年間通い、様々なことをした。
     中身は別として、小学校時代のその建物自体に良くも悪くも特別な思い入れはなかったはずが不意に、かつての校舎は妙に他人行儀[ギョウギ]な姿として頭に浮かんできた。そのまま、いつもの通いなれた道を互いに無言で歩き出した。
     学校から家へは歩いて15分くらい。中学校の校門を出てからほぼ直線に200メートルくらいだろうか、そのあいだに一ヶ所だけ大きめの交差点があって、それ以外には目立つ施設も目ぼしいもの(中学生にとっては)も何もないといっても差し支えないだろう。別に田舎というわけではなかったが、かなりの間隔をおいてまばらに生徒何人かが束になって歩いている姿を目にするばかりなのだ。
     部活をしないで帰る場合の下校時間帯は、用事のある人間はどこかにこもって何かをしているし、用事のない人間はそれを求めてもう少し活気のある、人の集まる場所を目指す。
     女学生特有の嬌声も時には聞こえてくることもあったにしろ、なんとなく想像していた女子高生の通学風景の五月蝿[ウルサ]さや華やかさとはほど遠いものだった。

     僕らは交差点を無言で渡る。その時間帯、特にその日は自宅の方角へ向かう道の交通量はいつもよりさらに少なく、見通せる限りは車はおろか人っ子一人歩いていなかった。このまま直線の端に行くまで誰とも擦れ違わないんじゃないか、ふとそんな風に意味もなく、しかし結果を知るまでのくじの内容を期待することが許されているように、胸に留めてみた。
     交差点を十数メートルも過ぎると、ゆっくりと時には早足に、歩道を縦に横にと二列になりながら歩く。少し前を進む彼はたまにふらふらと蛇行するようにもなり、気がつくと車道の上を歩いたりもしていた。それに倣[ナラ]って、彼の斜め後ろの側道と歩道のあいだの狭い縁石の上をバランスを取りながら少しおぼつかない足取りで追いかけ、時々後ろを斜めに返り見て車が来ないか確認した。
     交差点から300メートル直進した左側には消防署の出張所がある。その少し手前の十字路を右手に3分くらいの距離を道沿いに行くと、僕がのちに勤めることになる郊外型の家電量販店が、立体駐車場を構えてちょうど道の角にK道路へ面して建てられている。
     そういえば当時、その道がK道路などという名前で呼ばれている理由が理解出来なかった。何かかなり大雑把で適当な名付けに感じられ、続いて不作為さが隠しているのかもしれない奥まった作為について考えてみたが、よく分からなかった。
     結局、目的がはっきりとしすぎているであろう名前にふさわしい特殊な使われ方について想像してみたところで、言うまでもなくやはり見た目も走っている車もよそとあまり変わることもないのだ。他にもしょっちゅう地元の道路の名称を間違え、県道○号線と○号線を逆に覚えていたりなども。そのことで僕は自分の住んでいる土地の道路もろくに知らない奴だと、近所に住む同級生に馬鹿にされた。
     しかし道路の名称やら市役所は駅の東口と西口のどちらから近いとか、ましてこの市の北の方向は本当に日本の真北を指しているのかなど、別に自分の世界には直接――少なくとも今は――関係のないことではないかと思いながらも、結局黙っていた。
     どうして道路や駅それに市役所が突然出てくるのかというと、中学生にとっては自分たちが少しずつにでも周囲の世界に関わりを持てたり、在り方自体について考える時、外につながる分かりやすいものが目印となったからだ。世界がこういった形に作り上げられた際にある核のような、または核として知り始め、より大きな物やすぐ隣にあるがなかなか触れる機会のない世界を意識し、社会性を獲得する時期だったりする。同世代の少年少女の中には、そんな事柄自体や隠された関連性を知る行為に過剰なほど価値を見出したがる者も、少なくない。
     どれだけ自分が頭の悪い人間なのかそれなりに分かっていた。理解出来る範囲のことは随分と限られているに違いなく、自然に頭と体に染みつき、毎日の生活のうちで積み重なっていくだけでも、充分過ぎるくらいに様々を知っていくのだろう。無駄なことや特に覚えなくてもいいこと、他人に訊ねればすむようなことまでわざわざ苦労をして知ろうとしなくてもいいじゃないか、少なくとも先延ばししてもいい類のものがあると考えていた。
     僕にとってそれよりもまず重要な部分が、確かにあった。

     出張所を左手に見送って200メートルばかり直進すると――学校からかなり離れてはいるが本当に真っ直線の先に、公民館の左側に一セットとして建てられている学童保育施設までを見通せる。ただし僕の弱った視力では先のほうはぼやけてしまい、なんとなく不確かに浮かんでいるように見えるだけだ。
     学童施設の手前には学校からすぐのものに比べると3分の1くらいのスケールしかない交差点があって、そこではよく信号を無視した。大した長さではないし、交通量もそれほど多くもない。何故か遅刻を人よりもいくらか敏感に恐れていた。少し家を出る時間が遅くなってしまった時など、白線の手前では左右の確認もせずに、アスファルトを刻み近づいてくるタイヤの音を耳で拾い、車両の重量により当然違ってくる音程や地面の振動などから、おおよその距離を把握しつつ少し斜め前方をにらみ小走りに渡った。

    「なあ、君の家はそこを左に曲がって、それからあそこを行くんだろう」といってポケットに突っ込まれていた手を前方に開き、指をどうとでも取れる方向へ差した。
    「あ……そうだけど、君は僕の家とは違う方向なの?」
     その場にはいつのまにか自然な会話の流れが存在していて、図らずも互いに息を合わせる親密さの芽吹きを思わせる雰囲気はありながら、相手との距離感みたいなものの変化に違和感も戸惑いも一切みることがなく、会話が終わりかけたころに僕はその妙な心地のよさに気がつくのだった。
     空の端にある流れの早い雲を追いかけるように、森星の顔は上空に向けられたままゆっくりと揺らめいた。
    「少し君の家に寄ってもいいかな」




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