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    エッセイ(物語構成)【8】ARAMAKI~2





    (1966字)
     都内某所に学び舎はあった。その街は現在では渋谷の次に嫌いな街だが、当時はいかにもな人々が集まるいかにもなエリアとして、私は好んで街中をぶらついたものだった。
     集まる若者は良く言えばくせ者、悪く言えばはみ出し者。どちらにもその振り幅が大きくないのは現代の若者特有の保守さや臆病さの性なのかもしれないと感じながら、それでもなかなかに面白い空気を醸し出しては、彼らはそれを小器用に身に纏っているかにも見えた。

     駅から続く大通りから一歩入った小汚い店の集まる細い通りに屯し、思い々々に談笑し時に何かを見定めるように一瞬空を見つめる彼ら。
     ふと見るとそのうちの何人かは学校で使うらしい教本を時々は眺め、未だ鬱屈としたところは多少残しながらも、芯の堅さのためむしろ生き伸びたのかもしれない色が確かに戻る。もう何年かは使い込まれているのであろう、色の褪せたトートバッグを肩にかけ、ルーズな上着に実用性重視のジャージをはいた連中が集団でふらつくその姿。実は雑駁な印象からだけでは隠しきれぬ、筋骨たくましい身体は程良く張り詰めた首筋や二の腕から分かる。古着屋で仕入れた一万五千円そこいらのライトグレーのジャケットにユニクロのチノパン、女は雑誌あたりで得た知識を用いて中でも安上がりで年齢相応に可愛く、そして少しばかりの上品なセクシーさと知性の両立を演出しながら、同じ学校に向かうらしい二人は笑顔で語り合い、時に親密な目配せをし手を握っている。 
     私はそんな彼らを傍目に捉え、自然に口元が緩む。ああ、なかなか悪くない。世界も捨てたもんじゃない。彼らは人生を楽しんでいるし、それでいてほどほどに謙虚であるし意欲も向上心もある。勉学の重要さが頭の片隅にすら残っていないほどの痴れ者ではない。

     駅から平坦な道を左、右と順に曲がり学校が見えてくる。小さな校舎だった。敷地も狭くキャンパスなど当然ない。近くにあるコンビニが購買部代わりというのも仕方のないことだ。専門学校で広いキャンパスを持っているところといえば、都内某所のあそこくらいしか知らない。
     綺麗どころの女性が楽しげに談笑しながら丁寧に刈り込まれた芝生の間の道を縫うよう、一緒に写る隣の友人とついでに虚空へ向かって笑顔を浮かべながら歩いている姿。そんな洒落臭いものが某専門学校のポスターデザインだったのを最近確認したが、皆の理想として紹介されてきたキャンパスライフ、あるいはエンジョイライフつまりエンジョイキャンパスを今でも大学に求めているわけで、それは学生数を少しでも確保したい少子化の昨今では大学に限定されたものではないとのイメージ戦略である、といった感じか。まあ、そんなことはどうでもいいのだが。

     入学して数日が過ぎていた。私はクラスでも四番目(同率四位だが)に年嵩の兄貴分あたりに位置していた。
     長老を始めとする四五人がゆるいグループを作り、人数が少ないながらもクラスの中心の一角を担っていた。他にも腐女子っぽい子が三人くらいいつもくっついていたので、彼女らも熟しすぎて何かを失い代わりに何かを手にした仲間を見つけたのだろう。あと、メンヘラ気取りの面倒くさそうで薄っぺらそうな詩人気取りは、安っぽい表現に堕しているだけの、ありふれた病的な空気を周囲に振りまいていた。それでもクラスの特に感化されやすい――あるいはそのために来ている――若人たちに、普通な神経を持つ人間には苦笑を抑え切れない影響力を増大させていった。

     私の最初期から卒業まで続いた友人は、結局連中の中ではかなりまともな人間だったことは間違いない。
     ラノベが好きらしかったが、卒業と同時に趣味の活かせそうな小さな出版社に就職した年下のガタイのいい彼。また入学前から既にバイトをしていた空調設備関連の仕事に本格的に骨を埋めようかと思っているんだと、一学年の途中で口にした色男はこっちの業界には別にそこまでこだわっていないらしく、随分あっさりしていた。忘れてはいけないのは、卒業後に大阪の小さな編プロに就職した憂いの睫毛が背筋に何かを感じさせる、〇〇王子君(こんな呼称は私が考案したものでも密かに心の内で名付けていたわけでもなく、一部の女子が勝手に呼んでいたのだ)だ。しばらくして彼はその事務所を辞めたが。
     他に現在でも連絡を取ることのある同級生は、皆まともな人間だった。卒業から数年の月日が流れたというその確かな時間的要請を受け入れ認め、生活基盤を得るための別の活動(仕事)へとより力を傾け始めたことをきっかけとして、踏ん切りをつけたのだろう。若さ故のほとばしる、あるいは暗く淀んだ暗流のような想いは現実の変化とともに昇華していったのではないか。あるいは、そう思いたい。
     それでいいのだ。才能もなく、そうであるならば努力を人の十倍もしないくらいの人間が小説家に成れるはずもない。つまり長老一派の中の数人や誰とはいえないが腐った彼女とか、なにより私のような奴は。




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