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    エッセイ(雑記)【10】昔見た女に再び出会う~1





    ※私自身のネット環境が変化したため、一時的に更新が滞っておりました。このようなブログへわざわざ訪問くださる皆様、いつもありがとうございます


    (2004年6月記す/2014年9月補筆修正/1694字)
     十数年ぶりに会った。彼女はおそらく家にひきこもりがちな生活を送っているのだろうと思う。僕はいつものように家から最も近い交差点に向かって歩き、途中で当然彼女の家の前を通り過ぎることになっていた。
     あれは衝撃的な出来事で、確かに出会ったそれ自体は確率として捉えるまでもなく非常に珍しいことだ。であるとしても、それを偶然と呼んで済ませるのを否定したくなる気持ちがことのほか強かった。元々接点の無いに等しかった彼女との間にある種の出来事があったという事実、同じことが他の人間との間に起こったのであれば全く気にもかけずにいるはずなのに、僕自身どうしても深い意味を感じざるを得ない。
     
     一連の流れはある意味での僕にとっての僥倖ではあっても――冷静に日を改めて考えてみれば、半ば無意味な夢に強引に意味付けをするほど――他人からしてみればどうということが起こったわけでもない。また過剰に意味付けをしたりあえて偶然性(または必然性)の演出を理解への試みに用いるのは、単純に起こった一つの出来事を、つまり現実世界に実際に出現した無色透明な事実をそのものとして捉えることを危うくする可能性がある。
     それは僕の望むところではなく、あくまでも象徴化や過剰な意味付け、いきおい物語化の文脈からの語りを可能な限り避けた上で淡々と伝えたい。過去・現在の出来事を媒介としてありのままの姿で眼前に表現される、最も単純な手法であり真実となるであろう。

     久しぶりに見た彼女は少しきつい目をしている印象を受けた。ただ現実のストレスから日常でもその目付きが癖になっているといったふうではなく、彼女の対社会への漠然とした態度や一般的な心理構成が、人に注がれる瞳をきついものにさせていたようにと思う。
     同時にその時は少しばかり怪訝さを覚えている様子だった。髪は長めのショートというか、短めのロングと表現したらいいか。体つきは細く、膝が少し内側へ向いた脚が長く。

     彼女は僕の横を通り抜けて行った。いろいろな記憶の断片やら、最近目にした誰かの写真について数葉の印象などが頭の中で複雑に絡まりあい、なにがしかの形をこの頭の中に現そうとしていることを気がつく。混乱と出所の分からぬ躊躇、僅かばかりの羞恥が無闇な方向への視線の往還を起こしているあいだにも彼女は横を通り過ぎ、さらに足早と遠ざかって行く。数メートル離れたところで記憶が巡る。数日前にたまたま見た卒業アルバムに載っていたのだ。
     僕とは全くと言っていいくらい接点の無い女性だった。というのもそれは姉の卒業アルバムだったから、載っている大半の小学生達(当時の)とは互いに顔を知らないのは、当然といえば当然だろう。
     昭和が終わりに差し掛かっていた頃のアルバムで、角もいくらか傷んでいた。ごくたまに、何故か昔の卒業アルバムを押入れから引き出してはなんの感慨も大抵はなく、クラスの集合写真やカメラ屋の指示で無理に作らされた笑顔の収められている、上半身のみからの出席番号順の写真を端から順番に眺めた。自分のものであるかどうかに問わず。
     卒業写真特有の妙な笑顔を浮かべている彼ら彼女らを眺めていると、ふと感じるのだ。どうしてこういったものに映る顔はどれも憐れに、そしていくらか歪んで見えるのだろうか。

     写真で見た時の彼女の顔はまだ幼く、幼い少女のわりに男性的な要素を窺わせるものだった。僕は先ほど本人とすれ違い自宅までの50メートル余りを歩きながら、そういえば小学生の頃にこの近辺の路上で初めて会ったことが少しの懐かしさを交え胸に浮かんだ。
     家族とともに引っ越してきたばかりらしかった。確かに当時は、長年の風雨に晒された外壁のトタンもだいぶ汚れ、あちこちが凹んだり浮き上がったりしていた我が家に較べれば、彼女の家は綺麗で都会的というか、とにかくも新しい家族の新しい家だったと記憶している。新居を目にした当時の印象は、あの身体[カラダ]を背景として確かに、らしく構えられていたものであった。と同時に静けさの中で妙に佇む、あるいは惑うと言ってもいい様[サマ]が何故か、必要以上の鮮烈さでこの現在にも思い出されたのだった。




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