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    タイ旅行、後日まとめ記【7月18日分】~21

    (1893字)
     擦れ違うときにやたら愛想の良い彼が渡してきた小さな紙切れを見るに、つまりスーツを安く作る店の紹介状なのだ。受け取るときに何か言われたのは、多分その紙をトゥクトゥクの運転手に見せろといった内容の言葉だったのではないか。
     伊勢丹を探している途中だったので、寺院から少し離れた場所で客待ちをしているトゥクトゥクを適当に見つけて乗せてもらう。もちろんスーツの男からもらった紙は見せなかったが、その運転手は後になって分かったがグルだったのだろう。周囲の数人がマージンを受け、店まで客を運ぶ約束でも結んでいるのかもしれない。客であるこちらの言うことも碌に聞かずに勝手に車を走らせたのだ。不安になりローマ字で伊勢丹という単語だけを大きく書いた紙を運転手に見せるも、振り向いて一瞥した相手はよく分からない鈍い反応しか起こさなかった。
     トゥクトゥクの運転手はおかしなところに寄り車を止めてしまったので、やはりそうだったのかと思い腹を立てたが、同時に自分の迂闊さにもうんざりしないというわけにいかない。なんとも面倒臭そうに指差す運転手の視線の先にはちょっと洒落た感じのしたブティックがあった。車上から確認出来る店頭には男性用紳士服が小奇麗に陳列されているところにして、これがそうなのだろう。私は当然金を払わなかった。無視をして遠ざかると最初のうちは追いかけてきた運転手はやがて諦めたのか、自分の車へ帰りすがらに何か悪態をついているらしかったが……そんなことは知ったことではない。
     
     少し歩いていると、路肩に止めた空車のトゥクトゥクの中で弁当を食べている若い運転手の姿。試しにエラワンプームに連れて行って欲しいと頼んでみた。運転手は食事を途中で切り上げこちらに座席に乗ってくれと促すのだった。ふたを閉じた弁当箱を脇に置き、やがて軽いエンジン音をさせ静かに走り出す。
     しばらく中心市街地の整備された幹線道路を走っていた。街中は白を基調にした建物が多く、左右を見ても高層ビルや瀟洒[ショウシャ]なホテルの他にもブランド品を扱う店が立ち並び、整然とした町並みを形成していた。私は場違いな世界にいるような、少し居心地の悪い気持ちになっていることに気がつくのだった。
     旅の間に随分と慣れ親しんだカオサン通り周辺は、お世辞にも綺麗とはいえない小規模の各種商店がでこぼこに並び、各々が大きさや色合い匂いを勝手気ままに自己主張をし、それでいて確かに混沌を積み上げた秩序のような何かがある。一種のカオス的なコスモスとも表現出来る街並みがトゥクトゥクやバスの車上から次々に目に飛び込んでくるとき、少々の背徳感が伴ったなんとも言えない楽しさというか高揚を感じたものだ。
     カオサンの周辺は道路も特に混雑しており、マナーの悪いタクシーや自家用車が我先にと道路にひしめきあい、さらに渋滞をひどいものにさせていたのだった。タイの車の排ガス規制がどうなっているのかは分からないが、まるで二昔前の日本のディーゼルトラック同様に濃厚な煤塵[バイジン]をそこら中に撒き散らしている。対策として交通整理をしている警官は皆、顔の半分近くを覆うしっかりとしたマスクをしていたのだ。

     10分程度車上で揺られていると、視線の先に日本の駅前にあるタクシー乗り場のような小型のロータリーが現れた。ロータリーでは十数台のトゥクトゥクが思い々々に過ごしている。近くに運転手の見られない車も数台あり、大抵は車から身体を乗り出したり寄りかかったりしながら運転手同士で雑談をしているのだった。
     運転手は二列に並んでいる縦列駐車の最後尾に向け減速を始め、ときどき見知った顔の同業者に挨拶を交わしているようで、最後尾に着くとこちらを振り返ることもなくあっさりとキーをひねり、完全にエンジンが切られてしまうのだった。ここ数日は、声を掛けたり掛けられたりした人間に半ば当然のように騙されていたせいもあり、まあこんなものかもしれないと諦めることに、とはいえ、ツイていないときにはとことんまでツイていない。

     私は周囲のビルを見回し、やはりガイドブックに掲載されている商業ビルの外観はどこにも見受けられないのを確認する。先ほどまで雑談をしていた集団がこちらの様子をちらちらと伺っているであろうこと、それが手に取るように分かるのだ。ただし無知(カモ)な旅行者を眺めにやにやとしている感じでもなく、突然自分達の居場所(一種の休憩スペースなのだろう)にひとりきりで現れた外国人を少しばかり怪訝としている様子ではあった。という点では、場合によっては多少心強くというか、敵にも味方にもなり得る可能性はなくもないが。
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