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    エッセイ1話まとめ(雑記)【10】昔見た女に再び出会う






    (2004年6月記す/2014年9月補筆修正/3482字)
    〈1〉/〈2〉
     十数年ぶりに会った。彼女はおそらく家にひきこもりがちな生活を送っているのだろうと思う。僕はいつものように家から最も近い交差点に向かって歩き、途中で当然彼女の家の前を通り過ぎることになっていた。
     あれは衝撃的な出来事で、確かに出会ったそれ自体は確率として捉えるまでもなく非常に珍しいことだ。であるとしても、それを偶然と呼んで済ませるのを否定したくなる気持ちがことのほか強かった。元々接点の無いに等しかった彼女との間にある種の出来事があったという事実、同じことが他の人間との間に起こったのであれば全く気にもかけずにいるはずなのに、僕自身どうしても深い意味を感じざるを得ない。
     
     一連の流れはある意味での僕にとっての僥倖ではあっても――冷静に日を改めて考えてみれば、半ば無意味な夢に強引に意味付けをするほど――他人からしてみればどうということが起こったわけでもない。また過剰に意味付けをしたりあえて偶然性(または必然性)の演出を理解への試みに用いるのは、単純に起こった一つの出来事を、つまり現実世界に実際に出現した無色透明な事実をそのものとして捉えることを危うくする可能性がある。
     それは僕の望むところではなく、あくまでも象徴化や過剰な意味付け、いきおい物語化の文脈からの語りを可能な限り避けた上で淡々と伝えたい。過去・現在の出来事を媒介としてありのままの姿で眼前に表現される、最も単純な手法であり真実となるであろう。

     久しぶりに見た彼女は少しきつい目をしている印象を受けた。ただ現実のストレスから日常でもその目付きが癖になっているといったふうではなく、彼女の対社会への漠然とした態度や一般的な心理構成が、人に注がれる瞳をきついものにさせていたようにと思う。
     同時にその時は少しばかり怪訝さを覚えている様子だった。髪は長めのショートというか、短めのロングと表現したらいいか。体つきは細く、膝が少し内側へ向いた脚が長く。

     彼女は僕の横を通り抜けて行った。いろいろな記憶の断片やら、最近目にした誰かの写真について数葉の印象などが頭の中で複雑に絡まりあい、なにがしかの形をこの頭の中に現そうとしていることを気がつく。混乱と出所の分からぬ躊躇、僅かばかりの羞恥が無闇な方向への視線の往還を起こしているあいだにも彼女は横を通り過ぎ、さらに足早と遠ざかって行く。数メートル離れたところで記憶が巡る。数日前にたまたま見た卒業アルバムに載っていたのだ。
     僕とは全くと言っていいくらい接点の無い女性だった。というのもそれは姉の卒業アルバムだったから、載っている大半の小学生達(当時の)とは互いに顔を知らないのは、当然といえば当然だろう。
     昭和が終わりに差し掛かっていた頃のアルバムで、角もいくらか傷んでいた。ごくたまに、何故か昔の卒業アルバムを押入れから引き出してはなんの感慨も大抵はなく、クラスの集合写真やカメラ屋の指示で無理に作らされた笑顔の収められている、上半身のみからの出席番号順の写真を端から順番に眺めた。自分のものであるかどうかに問わず。
     卒業写真特有の妙な笑顔を浮かべている彼ら彼女らを眺めていると、ふと感じるのだ。どうしてこういったものに映る顔はどれも憐れに、そしていくらか歪んで見えるのだろうか。

     写真で見た時の彼女の顔はまだ幼く、幼い少女のわりに男性的な要素を窺わせるものだった。僕は先ほど本人とすれ違い自宅までの50メートル余りを歩きながら、そういえば小学生の頃にこの近辺の路上で初めて会ったことが少しの懐かしさを交え胸に浮かんだ。
     家族とともに引っ越してきたばかりらしかった。確かに当時は、長年の風雨に晒された外壁のトタンもだいぶ汚れ、あちこちが凹んだり浮き上がったりしていた我が家に較べれば、彼女の家は綺麗で都会的というか、とにかくも新しい家族の新しい家だったと記憶している。新居を目にした当時の印象は、あの身体[カラダ]を背景として確かに、らしく構えられていたものであった。と同時に静けさの中で妙に佇む、あるいは惑うと言ってもいい様[サマ]が何故か、必要以上の鮮烈さでこの現在にも思い出されたのだった。


    〈2〉/〈2〉
     相手は当然忘れてしまって(というよりも記憶しているはずがない)いることは言うまでもないだろうが、当時通っていた学校の通学路か、近くの商店街だったのかはっきりとは憶えていなくとも、であっても初対面の時の印象だけは強く残っている。
     その時は何かに恥じ入るような、または恐れる気持ちが強かった。同時に小学生の男子にありがちな反応、しかし僕にとっては珍しいといっていい、異性に対して不自然に映るくらい過剰な反発感を持ち、あえて遠ざけようとする心理もあった。ただ、凝視しつつも自身の興味の強さを気付かされ(あるいはおののいて)、直後にほとんど後ろめたさに似たものとして若干目を背けてしまう、そういった心の動きが起こるのは同年代の女の子全てに対してではなかった。感情の芽生えみたいなものが大体において遅いというか、どちらにしろ乏しかったこともまた事実であったから。
     僕は彼女の顔を見ないようにと視線を逸らせながら、やはり興味を抑えきれずに、結局は何度か視線の隅にその顔を捉えていた。微かに収まる視界の中から相手の視線の向きを受け取り、あくまでも相手に気づかれまいとしている最中にも、もう少ししっかり顔を見てみたいと何かの機会を窺っていたのだった。

     僕には人の顔や特に目を凝視する癖がある。それに対しては現在ではいい歳となった自らにありながら、どうにも収めることの難しい衝動的な欲求として居座り続けているのには辟易としているのだ。人の目を見ればある種のことは感じることは出来る。ただ結局は何かを分かったつもり、ふりでしかない。たとえば誰かがあることを考えたとして、相手の目を見たからといって具体的に何かが分かるわけではない。如何にも当然だ。
     敢えて言えば、何かが分かりそうといった感じがより強く錯覚されるというところだろうか。
     通り過ぎる人の顔ならば2、3秒ですれ違ってしまうからいいが、あの時は彼女の家の目の前で、僕は何も言わずにただじっと視線を送っていたのだ。
     自分の行動は当然気味悪がられても仕方が無いなと、今にしてみればごく自然な相手の反応だと言えるかもしれない。ただ当時は11、12歳の子供で、恋というものを実際には何も知らなかった。どういった感情を引き起こすのか、どこからの感情が恋で、それに至らない感情とは一体どこが違うのか。同学年のある少女に対して、憧れや敬いに近い感情と親近感を持ったことはあった。が、よくよく思い返してみればどちらかと言うと年長の女姉弟に対する思慕にほど近く、恋という正体不明の観念に化けることは無かった。何も知らない状態だった、そう観念的な恋すら。

     随分と長い一時にも覚え、しかしこちらが見つめていたのは1分にも満たないだろう。やがて彼女が家に入ろうとした時、こちらを一瞥する。瞬間の目は僕を軽蔑したかの見定め方で――。
     かつての視線へ現在からの意味付けが正しいかそうでないかは結局分からないが、ただ少なからず、得体の知れないものを不意に目の当たりにした時の警戒感らしきを両目は表していた。
     少女の視線は今になってみれば当然だなと理解しつつも、当時感じたことと言えば、結果として僕に対しなにがしかの興味を持たれたかもしれないといった手触りだった。自分でさえはっきり整理出来ずいくらか掴みかね持て余す、淡い、根拠のほどない無闇な期待。
     さらに現在になって振り返ってみるに、あの時の彼女の瞳に映る軽蔑や不安を表すに近い色は、あくまで心の表面しか指していなかったような気がして――つまり他人の行動に対して自らの意志がもたらした反応ではあった。とはいえ、とっさに半ば反射的にとりあえず主張する、児童期からの脱却を果たしかけ本格的な社会性を獲得しだしたくらいの年齢の最も初期的な段階に表れやすい、一種の習慣に近い女子児童の心理であって――、心の底では興味を惹かれていた部分があったのではないか、と。玄関を開けたのち一瞬立ち止まり、斜めに振り返られた顔ではあっても、相変わらず僕を直視して見据える姿を思い出すにつれ、これらの記憶をより確かに辿ることが出来る。何かが胸に引っかかったのではないかと信じないわけにはいかなかった。
     そして内奥に宿ったものは僕にとって好ましい変化をもたらすかもしれないと、知らずに生まれ未だ少女自身にはっきり意識されることなくすぐさま隠された、心への色付きの仄めかしからどうしても目を逸らせずにいたのだ。




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