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    エッセイ(雑記)【13】壊れた時計と五十時間〜1





    (1732字)
     僕のことを語ってみたい。壊れかけた安っぽい時計は部屋の隅に打ち捨てられ、次第に積もる塵埃をも、気の端へわずか思わずに済ませられる。自身へ限ってみれば僕の語りは、その類のものではないはずだ。
     この物語はすでに産まれたときから始まっていたのかもしれない。それでも、このことに気がついて考え始めたのは最近になってだった。常に自分とともにあったこのあやふやな、掴みどころのない塊の形は、大体世間一般で考えられている通り、失いそうになってからあるいは失ってから多くが気付くとされているものに似ていた。そう、時計が壊れても時間は進む。僕以外の時間は。

     その頃高校を卒業したばかりで、学校の紹介した仕事には就かずにいた。卒業してから一年くらいはフリーターをしていようと思っていたのだった。何かの仕事に就けだとか、他にも日々の生活に対する態度については、多少の小言を言われることについては我慢しなくてはいけない。それは早いうちに解決されなければならない問題であると両親は思っていたようだったが、続いて二十歳前後の身の振り方がはっきり覚束ずにいる若者にありがちな質問としてなされるであろう、交友関係の問題については必要以上に詮索されなかった。
     実際には当面生活に困らない程度にアルバイトをやるつもりだったし、昔から質の悪い友人との付き合いは無かった。その点では本当に潔白だったといってもいい。親の心配のうち、高校を卒業してから何もせずにぶらぶらしているという点に関しては、確かにこちらに非があった。とりあえずアルバイトを探すとの口約束でその目に備えていたのだ。

     一つ忘れてはならないことがある。僕は小説家になろうと思っていたのだ。高校のときに読んだ様々な作家の小説に影響を受け、自分も文章を書いて生活をしていけたらどれほどいいだろうかと。
     子供の頃から本を読むことはそれなりに好きだったし、ある時に知って以降も文章を書いているだけで生活している人々にはいまいち実感が湧かなかったものの、興味程度は持っていた。小説家になろうとわりにはっきり思うようになったのは、高校三年生くらいだった。世間では小説が好きで小説家を目指す(目指した)人間に聞いてみれば、本当かどうかは別にして中学生くらいか、場合によってはもっと子供の頃になりたいと決意したなどという人もいるのだろう。
     当時の僕は、適当に頭に浮かんだ物語の核になりそうないくつかのイメージの断片を紙に書き付けたり、せいぜい数枚の画に過ぎないまでの物語の種から、いくつかのそれらしい場面や世界観のようなものを捻り出したりといった、いわば助走の兼ねた遊びと訓練をしていた。または頭の中で考えて色々といじりました挙句に、思っていたよりもつまらない場面しか浮かばないということになると、ノートを開く機会は次に送り頭の中の空想は混沌の暗がり中に消えていった。
     
     いまにして思えば、紙に書き出してない時点で相当の筆不精だったのか、確かにそれは事実なのだけど。僕が頭の片隅に浮かべた、ほとんど無意味でまとまりのない言葉のきりぎれが口からついて出るとき、それを一言も逃す暇[イトマ]すらなく、出来るならば言おうと思っていてつい失念したり、また場合によっては様々な理由から躊躇や遠慮したことまでも、控えめに補足して記してくれる人がいてくれればいいと本気で思っていた。昭和の初めの頃の小説家の話だったか、奥さんに口述筆記をして貰っている場面が書かれた私小説を読んだことがある。
     どちらにしろ情熱はそこそこにはあったとしても、心理的な情景として思いついた一つの場面だったり如何にも釣り合った心理を持ち合わせていそうな、それでいて興味深いと感じる人物像を文章にする技術は全然無かった。小説家になりたいと思った当時を思い出すと、いややはり、いまでも同様にまともな文章を紡ぎだす能力というものが欠如している。
     僕はどんな物事でもゆっくりやればいいさと考える質なので、徐々に文章の腕を磨いていけばいいだろうくらいに考えていた。地道にやっていれば小説家にでもいつかはなれるかもしれない。デビュー作で文壇に華々しく現れる自分の姿をしばし想像したりもした。



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