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    夢見【3】誕生日騒動記~1





    (1100字)
        学生が団体旅行で泊まる時に利用するような安宿の宴会場に向かう、私。前日が誕生日だったが特に何かがあったわけではなく、まあこの齢になればそんなもんさと思いつつ、実際にはどんよりと続いている落胆が少なからずあることは隠しきれずにいた。その未練がましさが余計憂鬱な気持ちにさせていた。
     入り口にたどり着き、安っぽい材質で立て付けの悪い襖を開け顔を左に向けると意外に広い部屋となっていた。襖を引いた目の前の天井がやけに低く見えたが、それは部屋の天井中央部から隅の畳の縁部分辺りまでを斜めに貫く、非常に太く漆喰で塗り固められた柱のせいだと分かる。
     
     部屋の中の間取りはT字の形をしていて、つまり入口部分はTの長い方の一番端のあたりという具合だ。目の前には浴衣を着た男女が一列に整然と座り、旅館向けの一人用座卓が銘々の前に用意されている。
     そして、何か嫌な予感がした。遅れて到着した私を待ち構えていたかのような、タイミングを見込んだある瞬間まで何かを無理に抑えている雰囲気と言ったらいいか、あるいは空気がガラっと入れ替わるこちらの行動一つを、今や遅しとしている集団の息遣いとも呼べる熱気がそこかしこから紛々と漏れ出していた。

     短い線と長い線の交差する地点までとりあえず周囲を見回しながら歩く。天井や一般的な家屋の造りよりもやや高い位置にある鴨居あたりから、紐やら飾り付けやらが多数ぶら下がっている。折り紙を六等分くらいに切り輪っかにしたものをつなげたアレだ。小中学生が何かの行事のたびに無理やり学校に作らされるアレが、そこら中に様々な色の橋をかけていた。
     こりゃ手作り感満載だなと少し小っ恥ずかしいような気になるも、見慣れてくるとそう悪いもんじゃない。むしろ、わざわざこんな慣れもしないことを不器用な手先でやっとこ拵えていたのかと思うと、余程大変な苦労だっただろうにと感謝感動の気さえしてくる。
     交差する地点の前までたどり着き、ふと見上げて右を向くとそこには鋲打ちされた大きな白い紙に、綺麗とは言えない字で大書された私の誕生日を祝う文句が踊っていた。
     皆がニコニコしながらこちらを向いていた。一旦落ち着いて周りをぐるりと見渡せば、ゆうに五十人以上は集まっているのだった。端緒になる言葉がなにか一言でも発せられれば、瞬間後には堰を切った怒涛のどんちゃん騒ぎが始まってしまいそうな勢い……!!
     感謝の気持は勿論ないわけではないが、大人がたまにしかしないはずの彼らの屈託ない心からの笑顔を見ていると、私はその表情に応えられる言葉を持っていなかったことに気がついた。恥ずかしさに耐えられなくなり、近くにあった掛け布団を頭までかぶってしまう。




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