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    エッセイ(物語構成)【2】パラソル・パラダイム~5





    (1027字)
        すぼめた傘を持った彼女がそこに立っていた。授業中の廊下で他人と突然に遭遇したことを若干驚いている表情でもあり、自分は正当な理由でここにいるがそちらはどうなんだといった探りを入れてくるような視線も感じられなくもなかった。大体何故傘を持っているのだろう。いまさっき登校して来たのか、こんな時間に? 用事があって外にでも行くつもりだったのか。

     目の前の彼女は急に傘を開きこちらに先端を向け、そして勢いをつけ僕に向かって押し出した。わっ! なにをされているのか意味が分からずに、一瞬判断に迷い立ち尽くす。こちらが何も反応を示せないにも関わらず、開いたままの傘をその身ごと若干引いてから押し出してくるを数回繰り返し、途中からは一旦閉じた傘を勢い良く開きながらやはり同様の掛け声とともに困惑する僕に向けた。口元は次第に緩み、白い歯が覗いていた。
     拙い遊びの一種だったのかもしれない。だとしても、そこには淡い恋心を持つ男子生徒を少しだけ喜ばせ、なによりもいくらか切なくさせる期待があった。どんな行動が最もこの瞬間にふさわしいものなのかと悩んで一旦相手の目を覗き見た後、耐え切れずすぐに逸らしてしまった。
     再び些細[ササイ]な糸口としてでも、意図を切れ端でも理解したいと思い視線を向ける動悸に駆られ、しかし僕の身も心もすでに、目の前の彼女に縛られて自分の自由にはならなくなってしまっていた。やはりこちらを見つめる瞳をどうしても直視出来ない。

     少女は少し困ったような顔をしていたが、やがてイタズラっぽい笑顔で小首を傾げた。その表情は一直線に届き、確かに見事なまでに、目の前の少年の心を鷲掴みにした。甘く疼く痛みを与えたままに――。

     遊びでもなんであっても、とにかくよく分からないが目の前で行われた一連の行動や遊びに含まれる期待と、なにより笑顔に応えたい一心で僕はわざとらしく後ろにのけぞってみせ、さすがに転ぶような演技まではどうしても躊躇に打ち克つことが難しかった。一番の理由は、自分がそんなことをしても本当にいいのかという自信の無さだったと思う。

     どれだけ無様であっても、あるいは正しいか間違っているかも関係なく、大袈裟で傍目から見れば滑稽に見えるかもしれない動きの中に、例えばこちらの感情が少しでも相手に伝わりそうな演技があったのではないか。何故もっと真剣にやってみなかったのかとそれから数日のあいだ、十数枚の連続写真を何度もめくり直しては眺めるように、相当に繰り返し悔やんだ。




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