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    エッセイ(物語構成)【2】パラソル・パラダイム~6(了)





    (1167字)
        一瞬の邂逅と敢えて言うが、最初の頃に羞恥と戸惑いだけに囚われていた心は、もっと彼女を楽しませるために何かが出来ないか、もう少しだけでも喜んでくれる行動、反応、仕草、表情は何だろうかと、僕なりの精一杯の返事をしたいという想いに変わっていたはずだった。どれほどに不器用な振る舞いであったにせよ彼女がその表情をふと明るくする、せめてそんな一言も口の端から溢れはしなかった。
     突然に起こったことであったとしても、何よりもある瞬間以降からは積極的にこの状況を望んで受け入れているんだ、無言の声が上手く伝わればいいと、僕は祈りにも似た感情を抱いて。
     こちらがほとんどの言葉も動きも失ったまま数分が過ぎた頃だったか、見た目には未だに曖昧な笑みを浮かべながら佇んでいるだけの男子生徒の横を、彼女は小走りで通り抜けて行った。

     その子のことが好きだった僕に対して掛けられた情けだったのかもしれないと感じて、それでも冴えない男に向けられた優しさだったのでは、と。仲の良い友人(親友だと思っていた)も同じ子が好きだということを口にしていた。他にも想いを密かに持っているらしき奴は周囲に何人もいて、どう考えても自分は一番つまらない何の取り柄もない男だと知っていたのだ。
     当然自分は相手にとってふさわしいような人間ではない。ただ、束の間ではあっても二人だけの時間を彼女は与えてくれた。僕の感情を知っていてもぬくもりを灯した柔らかな手を差し出し応えることは出来ず、果たして試みとしては不器用なものであったとしても、誰もいない廊下で無邪気な姿と笑顔を見せてくれたのかもしれないのだ。
     勉強の成績が優秀なだけではなく、誰にでも別け隔てなく屈託のない笑顔をもって接していた。生命の開かれた若芽に薫る軽やかな風は周囲に自然と人を惹き寄せ、密やかに背筋の伸ばされた芯の強さは、それでも時折見せる思春期の不安の姿と同居していたけれど……。
     学年の中心的な存在でありアイドルでもあり、そして、誰よりも可愛かった。少なくない男子が彼女に憧れ、自分の気持をうまく言葉に出来ない中学生なりに恋焦がれた。頭がかなり良いことは知ってはいたが、中学の卒業後、学区内では最高偏差値の高校に進学したのだという。のちに親友から教えて貰い、まるで自分のことのように嬉しさと誇らしさを勝手に感じていた。
     元々普段から全く勉強もせず、受験対策もろくにしていなかった僕は公立高校の受験には失敗して、仕方なく滑り止めの真ん中よりやや劣る私立高に行くことになったのだった。
     
     多くの言葉を重ねるのは止そう。過ぎ去った出来事は僕にとっては現実であっても、同様に確かな形を持ったものではない。色彩溢れ、踊るままの装われたその姿、儚くも華やかに揺らめくあの時、それすらも留められた白い紙の上では心の形に寄り添う影でしかないのだから。




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