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    エッセイ(雑記)【4】ヨッチャンと不良こども~1





    (936字)
        顔を歪め顎をしゃくりながら、「ヨッちゃんがよぉおー」と苛立ちを込めた声を発しつつ腕を伸ばし、全く身構えることなくいた私の腹をおもいっきり掴んだ上級生は一体誰だったのか。顔はなんとなく憶えているが、名前は分からない。おそらく不良予備軍のようなものではなかったのか。向こうは六年生、こちらは三、四年生くらいだと思う。
     ちなみに「ヨッちゃん」とは前年か当年度あたりに着任した新校長である。下の名前からそういったあだ名を勝手に彼がつけたのだと予想した。
     一教師に対してなら場合によっては親しみの視線とともにあるいは皮肉や嘲り蔑みを込めて、特に後者の場合結局は直接的過ぎてひねりのない、または身体的な特徴などから安易に考えだされた幼稚な名前が与えられることもあるとはいえ、小学生が校長にあだ名をつけようとする自体が普通はありえないだろう。
     一番の理由としては相手の反応が帰ってこないからまず面白くもないし、仮に学年中に広がり自分が言い出したことがもしバレでもすれば、上からの叱責を恐れる(この部分の場合によってシビアな関係性は、小学生ではあまり理解していないかもしれないが)担任にひどく怒られるかもしれない、と子供特有の空想的な慴れの感情があるきっかけで突然に生まれ形を成し、わずかにでもそれに思い至れば。

     校長という存在は自分たちのクラスを受け持つ一般教師とは異なり、接点を持つ機会がない。
     それにある意味では、人生で初めて身近に接する『偉い人』である。自分たちを教育する教師の上に立ち、まとめ上げ命令を下す――従来までは大人である担任の先生であっても、接する機会の多い人間に対しての情を基にした関係性から、相応程度の親密さを込めたコミュニケーションを取ることが出来たとして、校長にはそれがほとんど難しい。彼らにとっては校長への距離は限りなく遠いのだ。
     まるで社会の厳格さを表す最も外側の殻を初めて目にする現実でもあり、自分のような子供のことなど歯牙にもかけない人間によって構成されている、社会の成り立ちの強度を、また『偉い人』のいる場所は一見近しく感じられながらも、越えがたい壁の分厚さがあるのだと思い知らされる。小学生ごとき者にとっては不可侵な存在といっても言い過ぎではない気がするのだ。




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