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    エッセイ(物語構成)【5】人生の仕事はじめに~1    小改訂版




     
    (2479字) 
     僕のような人間であっても、ある程度の年齢に達すれば何らかの仕事をしないわけにはいかなくなる。またはそのことに気づく。

        今までにいくつかの職場を経験してきた。長くて五年半くらい、短ければ一ヶ月といったところか。楽しみつつも自分にしては長く勤まった、アルバイトの貴重な記憶が胸の内を様々な糧となって巡りもすれば、如何ともし難い上司の元で仕事も碌に覚える前に辞めた(クビになった)正社員もあった。
     ともあれ、現在のこの地点にいるということは、連綿(おそらくボロ綿に違いない)と続く過去と呼んで差し支えないものが一応曲がりなりにも存在していた証でもあり、つまり過去を振り返るのならばあらゆる物事には始まりというものがある。
     今回語ってみようと思う事柄は仕事始めについてだ。それは一般の例に漏れず、学生アルバイトからの始まりを見ることになる。

     アルバイトと言えば通常高校生からだろう。まずは仕事のそれより一歩手前でなされた、新たな生活の始まりへ少し触れたい。

        当時僕は男子校に通い始めた。別にどんなとこでも入れさえすればいいやくらいに考えていた僕には、入学式から続いていたなんとなく浮かれた気分があったのだったが、それも醒めやらぬままの第一週目の終わり、不意討ち的にこれから試験をやると告げられた。
        週明けに朝一で早速結果が配られ、点数と順位を記す細長い巻き紙の簡易的な成績表を見て目を疑った。しばらくして壇上から教師に声を掛けられ周囲の視線が一点へと集まる。こちらの曖昧な返事をほとんど受け流し気味でさらに一方的な話は続き、若干目元を緩ませた彼の口からのあくまでも他意のない風でしかない調子で報告がされた。直後には今回の全体テストで学年でも結構上位の成績だった人間がクラスにいるのだと皆に知れ渡った。なんで、……俺?

        ともかく、答案用紙の返却と同時で学力テストの結果が正式に発表される頃になると、僕の周囲にはいくらかの人が集まることとなった。勉強を一緒にやろうぜ、教えてくれないか、今度の試験のときにカンニングさせろ云々と様々に。試験の成績が少しの自信につながったことは違いなかったが、それだけだった。
     どうにも未だに実感がなかったというのもあったし、公立高校の受験を無勉強で受けて失敗したような人間である僕は、結果の点数や順位はたまたま問題の巡り合わせと運が良すぎただけと理解していた。滑り止めの私立高に無事入学し、いわば命拾いしたつもりで充分に満足していたので、さらに自分が望んだりする必要のあるものなどない――。と、本気で思っていた。これを機に心を入れ替え勉強にもう少し注力してもいいか、などとの考えは露ほども頭に浮かんでこなかったのだ。
     学校の成績自体や、まじめに取り組む姿勢等々の価値を認めていないわけではなかったし、「社会に出ていく際には重要な武器になるんだろう」くらいに、当時は当時なりの感覚で大まかに世の中の仕組みを分かっているつもりではいたが。ただ、わざわざ試験前に教科書を開き重要な項目をチェックして理解が及ぶまで数度読み込み、ノートを見なおして練習問題を繰り返しやる、という程度に面倒を進んでやる気にはなれなかったからだ。
     クラスの同級生とぼちぼちに上手くやって無事に卒業出来ればいい、そのことだけが目標だった。

     高校生活初の席決めは出席番号順だったか、隣に座ることになったD村はサッカー部に所属しているのだと、早速本人から教わった。この学校の運動系の部活はなかなか精力的に取り組んでいて成績も悪くなく、一部の球技などでは都大会上位や全国に出場するほどの実力だという。
    彼の背格好は大体僕と同じくらいに、いや、向こうはスマートな筋肉質の身体といった大きな違いはあった。
     朝練から帰ってきて教室に上気した顔で入ってくるサッカー部員の姿は、毎朝の日課となっていた。どうやら彼はまじめに練習に取り組んでいたみたいだし、特に身体の肉付きは充実したものにも映る。チームにも貢献出来るくらいの結構なレベルの腕を持っているのではないかと、傍目からに過ぎずも感じさせた。

     
        しかし彼は国立競技場に出場する(真面目に目指す)選ばれた高校生たちの多くがほぼ例外なくであるように、常にサッカーのことだけを四六時中考え、それを中心にして生活が廻っているというわけでもなさそうだった。
     大事な試合どころか他校とのちょっとした親善のイベント戦が近づくにつれ、周囲に張り詰めた空気の如きを伝播させる(場合によってはちょっと迷惑)でもなく、また将来の国立のスターになるかもしれない自分たちとお前らでは住んでいる世界が少し違うんだぜと、特にスポーツに力を入れている学校ではまま見受ける、校内エリートにありがちな傲岸さを欠片も持ち合わせていそうもない感じは好ましかった。
        言ってみれば彼らの雛型と、中学時代に少しの関わりを持った程度からの勝手なイメージで敬遠していたから。
        クラス内では自分が所属する部活の仲間以外との付き合いのほうがむしろあったくらいで、僕以外の多くの帰宅部連中とも普段から色々と馬鹿話をして笑い合っていたようだった。
     高校第一号の友人と言って間違いない。三年に進級する頃には徐々に付き合いが薄れていったものの、彼がいたからこそ、非常に充実した学校生活となった。まず始めるにあたっての順調な滑り出しとなり、以降もある意味ではその勢いがあったから上手くやっていけたのだ。とても感謝している。

     あるとき彼は「アルバイトをしないか」と誘ってきたのだった。確かに彼とは教室でよく話したし時々一緒に帰ったりもしたが、なぜ僕なのだろう。
     時折、途中から少しばかりの緊張と困惑が僕自身に生まれつつあるとはたと気づかせる。

        彼との会話、笑顔自体は明るいあけすけなものの中にも真剣な表情をもって、ほとんど一方的に何かを質問してきたり時には相談をしてきたり、そうしてこちらの言葉に目を逸らさず、要所々々で相槌[アイヅチ]を打ち頷きながらも真面目な顔つきで聞いてくれているその姿を目の前にしていると、どうにも居た堪[タマ]れなくなってくるのだった。必要以上に自分が買われているこそばゆさがあり、照れくさいような何やら落ち着かない気分だった。いつか化けの皮が剥がれ、彼は失望して僕の元を去っていく――。
     そんな嫌な想像が時々頭に浮かんでくるのだった。人によっては考え過ぎだと笑い飛ばす類のものであっても、自分の中では正体の掴めない妙な焦りや苛立ち、諦めに似た感覚が完全になくなることは高校生活中、他の友人と接しているときも常に片隅にあった。




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