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    小説メモ(イメージとしての習作)【1】僕、森星~1






    (2445字)

     なんにしても他愛のないことの数々で、日本中の中学生を二人一組で無作為に入れ替えても特に問題はなく、いくつかの話題に対しての反応は――それらはつまり限られた狭い世界についての、または自分が知っている世の中のごく一部だけ姿を見て、感じたことが大半ではあったが――誰とどこでといった一切の要素など関係なく、ほとんど似たようになされる互いの無理解を理解していない話し合いとして、その際示し合わせたわりにぎこちない笑顔が伴い、あるいは思わせ振りの上手さが競われるだけの結局内容の乏しいやり取りが全ての場所で繰り返されていたに違いない。

     クラスの中の一部の男子がたまたまどこかから入手した男性用避妊具[ヒニング]が、早速休み時間には教室内で行われる秘密の閲覧会の出展作品となっていた。
     順番が回ってきた僕も、それをどうということもないといった風に掌[テノヒラ]の上に乗せいじくり回してみたが、結局どちらが表裏なのかすら分からなかったし、先端の膨らみや、指先に微かに残ったさらりとしたゼリーは何なのだろうかとの様々な疑問も浮かび、周囲で笑い声やら奇声を発する男子生徒の様子から何かが分かるかもしれないと窺ってみることにした。
     ひょっとして体に有害だったりしたらと、いつまでも皮膚の上にあることに対してこわごわとした気持ちもいくらかはある。ただ、それをなんとなく、授業が始まるまでのあと数分のあいだに洗面所で洗い流してしまうのがもったいないような気がして、先程より惜しむ気持ちで多少真剣に匂いを嗅いだり色を確かめているうち、自然と掌全体に馴染んで消えてしまった。
     何も口に出さず誰にも問わず、最後にもう一度だけ根元から先までを眺め手をくるりと返す。裏返した指先が内側からほんの少し熱を発していることが少し怖くもあり、机の下に隠した。

     周囲の世界から差し出される様々な視線や、他人から別の他人に向けて放たれた言葉が口の端をこぼれ僕の耳に滑りこんでくる時、それは曖昧[アイマイ]に意味を持ちながらも不器用に噛み砕かれ解きほぐされて、自分にも何か関係があるのだとするとどのように思えばいいのだろうかと、試行錯誤と理解――大抵は、誤解を繰り返していた。
     青い実は外から触れられるあらゆる手に対して自らの固い皮膚が拒絶と恐れを表すが、それでも少しずつ世界を知り内部の膨張とともに圧力の高まった皮膚は、その力に適応するために段々と世界に馴染みやすい柔らかさに落ち着こうと日々努力する。淡いほんの淡い紅色に染まりつつある時期。
     まだ中学最後の始業式が終わってから1週間も経っていなかったころ、森星に出会った。

     小学生の後半あたりから徐々に肥りだしていた僕は、中学3年に上がる時点でクラスでもかなり大きいほうだった。横幅はもちろん言うまでもないが、身長も後ろから点呼[テンコ]を取ればすぐに返事をする番が回ってくるといった具合に。
     当時はそれでも、自分にはいくらかは格好の良いところもあると根拠の乏しい希望を持っていた。元々は、皆が似たような感覚を持っているのではないかと思えたから、それならば当然、自分にも勝手に信じるくらいのことは許されてもいいはずではないか、と。
     全ての中学生はどこかしら身体のバランスが悪いように見えた。それは疑う余地なく受け入れる事実として僕の前にあった。
     自然な成長過程においてでも、個人間の発達段階に差が生じたりするのは至極当たり前で、さらに積極的な運動やちょっとした生活傾向の積み重ねによって、ある部分だけ大人以上に成長(変化)が著しく起こり易[ヤス]かろうと、むしろ全く珍しくもないのではないかと思う。だから多少の肥満にしても、成長の一過程に大きくは括られる現れでしかなく、僕にとってはちょっとした不都合な面が表に出たに過ぎないと軽く考えていた。
     中学時代にあってはあらゆる部分が決定されてはいなかった。

     当時はたぶんそのことをある程度意識していたはずで、現在でも同じ感じ方を失ってはいない。
     たとえば、黒人解放運動のリーダーになることは出来なくとも、東大文学部に入ってノーベル文学賞を獲るであれば、可能性としては充分あるだろうということだ。何故そんな例になるのかというと、当時から読書が趣味で将来は小説家など文章を扱う仕事に就ければいいなくらいに、漠然とした夢とも呼べない曖昧な空想を抱いていたからだ。ちなみにノーベル文学賞が政治色の強いものであると知ったのは、だいぶ後年のこととなるが。

     森星は隣のクラスの男子で、そのころ小学校の当時から知り合いだった男子と休み時間になれば遊んでいた僕に彼は声を掛けてきた。「ねえ、君は○○だろう? 今日一緒に帰らないか。家が近いはずなんだ」
     あまりに唐突に話しかけられたものだから少し戸惑い、特に乱れているわけでもないはずの鼓動を抑える間をおいてみてから妙に慇懃[インギン]に答えた。
    「君の名前はなんていうの。僕のことは何で知っているわけ?」(今でもそうだが、初対面の人に対しては「僕」と自分のことを呼んでいる)
     言い終わった後で、なんとなくバツが悪い気分になった。少し男子相手に動揺している自分が恥ずかしくなり、相手の正面に立ち向かうように顔だけでなく身体ごと向き直った。そして今度は少し後悔した。
    「まあ、それは帰りに話すよ。じゃあ君のクラスにホームルームが終わったら行くから」
     彼は振り向いて帰ろうとしたが、その時自分でも驚くほどの早さで前へと振りだされようとする相手の腕を掴んだ。半ばこちらとしても突然の動作、予期していた以上に強く手首を握ってしまった気がして、意外に細い腕からすぐに力を緩めた。
    「ちょっと待って。名前のことは別にいいけど、帰りの待ち合わせは正門を出たところの横で待っててくれない?」矢継ぎ早[ヤツギバヤ]に、僕からの連絡事項を確認し終えたばかりのその背中に投げかける、もう一言。
    「10分待っててもこなかったら帰るから。……いいよね」
    「必ず行くよ、君より早く」




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