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    日記2004【4】輪郭が風化する。残されたものは~1





    (1180字/2004年3月1日に記す/2013年10月補筆修正)
     今日はこんな話。
     戦時中に仲間をくじ引きの結果殺し、その肉を食べた人の話。
     元戦友の一人をついに執念で探し出した当ドキュメンタリー作品の主人公である老人(O氏)。居場所を突然尋ねられ運命の忌まわしき日のことについて詰め寄られた老人(?氏)はO氏以上に随分と弱弱しい様子で、はっきり言えば病み老いさらばえた悲しい老人としか映らない。しかし相対する二人は、かつて残酷にもくじ引きで生死のやり取りをした、固い絆に結ばれた部隊の仲間であった。

     彼らは一体どんな戦場を体験してきたのか? それはもちろん私にも現代の若者にも分かりようが無い。旧友でありかつては戦場で命を預けあった仲間の家を初めて尋ねた彼は、土産一つ持たず玄関の前に仁王立ちになった。老人同士の挨拶ついでにといった具合に、ありふれた昔話を持ち出して話の端緒を作り出すことも一切せず、蒲団に寝付く老人に早速詰め寄る。
     O氏の表情や言動からすると、やはりどうしても当事者である元戦友が忘れてしまったり、遠い過去の出来事として、価値のないものであると打ち捨ててしまったりを断じて許さないという、決然たる様子なのだ。自分たちが平穏な世界で安逸に生きることは許されないとし、また過去の罪業を背負った形であれ、それを一人で胸のうちに隠し続け、人生もろとも墓場に持っていく貝の如き罪人の真似も認められないと頑なに主張をするのだった。

     O氏は当時の出来事を白日のもとに晒す中で、戦争を幻想化し兵士と戦場を美化する傾向のある当時の若者に、実際にあった現実の不条理さや残酷さを伝えんとしたらしい。
     言動は一見すると冷静で、過去の自身の行為に強い自責を感じ、そのような行いにまで至った部隊に所属する同僚の極限的な心理状況を理解すること、つまり過去を振り返り真摯に現実へと向き合うことが最も重要だと考えていた。どうして最悪の結論を導いてしまったのかについて理由を、自分自身の記憶やある意味では煎じ詰め過ぎた観念だけでなく、当時の共犯者の話を聞き明白にしたいというのだった。
     その姿勢自体は自分たちの行為の罪深さを真正面から見つめ、最大のタブーとされる一線を何故踏み越えてしまったのかを、自身に向かってひたすら問うているようにも見える。
     罪を受け入れ、受け入れつつも一瞬のちには再び罪を犯せずにはおれない人間の原罪ともいえる愚かさ、とある瞬間に突然姿を表す我が身を滅ぼしかねないほどの強烈な生への執着、そういったものから目を逸らさずにいる、あるいは何かを見出そうと希求する精神をO氏に見ることも出来なくもないが……。
     何かにつまづいたかのように、少しよろめきながら前のめりになる勢いもあってか玄関から土間を一気に渡りきった。氏は至って冷静な顔をしているとも見えたが、やはり内心は名状しがたい想いに囚われていたのではないか。蒲団に寝入る、見るからに病身と思われる戦友に掴みかかったのだった。




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