スポンサーサイト

    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。

    エッセイ1話まとめ(雑記)【4】ヨッチャンと不良子供





    (2002字)
    〔1〕/〔2〕
     顔を歪め顎をしゃくりながら、「ヨッちゃんがよぉおー」と苛立ちを込めた声を発しつつ腕を伸ばし、全く身構えることなくいた私の腹をおもいっきり掴んだ上級生は一体誰だったのか。顔はなんとなく憶えているが、名前は分からない。おそらく不良予備軍のようなものではなかったのか。向こうは六年生、こちらは三、四年生くらいだと思う。
     ちなみに「ヨッちゃん」とは前年か当年度あたりに着任した新校長である。下の名前からそういったあだ名を勝手に彼がつけたのだと予想した。
     一教師に対してなら場合によっては親しみの視線とともにあるいは皮肉や嘲り蔑みを込めて、特に後者の場合結局は直接的過ぎてひねりのない、または身体的な特徴などから安易に考えだされた幼稚な名前が与えられることもあるとはいえ、小学生が校長にあだ名をつけようとする自体が普通はありえないだろう。
     一番の理由としては相手の反応が帰ってこないからまず面白くもないし、仮に学年中に広がり自分が言い出したことがもしバレでもすれば、上からの叱責を恐れる(この部分の場合によってシビアな関係性は、小学生ではあまり理解していないかもしれないが)担任にひどく怒られるかもしれない、と子供特有の空想的な慴れの感情があるきっかけで突然に生まれ形を成し、わずかにでもそれに思い至れば。

     校長という存在は自分たちのクラスを受け持つ一般教師とは異なり、接点を持つ機会がない。
     それにある意味では、人生で初めて身近に接する『偉い人』である。自分たちを教育する教師の上に立ち、まとめ上げ命令を下す――従来までは大人である担任の先生であっても、接する機会の多い人間に対しての情を基にした関係性から、相応程度の親密さを込めたコミュニケーションを取ることが出来たとして、校長にはそれがほとんど難しい。彼らにとっては校長への距離は限りなく遠いのだ。
     まるで社会の厳格さを表す最も外側の殻を初めて目にする現実でもあり、自分のような子供のことなど歯牙にもかけない人間によって構成されている、社会の成り立ちの強度を、また『偉い人』のいる場所は一見近しく感じられながらも、越えがたい壁の分厚さがあるのだと思い知らされる。小学生ごとき者にとっては不可侵な存在といっても言い過ぎではない気がするのだ。


    〔2〕/〔2〕
     校長に対して多少でも小学生が負の感情を持つこと自体がかなり珍しく、具体的に何かを言われたり、あるいは新任の校長にいきなり目をつけられるくらいの悪ガキだったのだろうか?
     彼が相当の札付きであったととしても所詮は小学生である。どれほどクラス内で粋がってみせようが、やはり特に大人側の教師からは子供の悪ふざけ程度にしか映らないわけだ。
     しかし、学校の中で最高の権威を持つ校長をあえて「ヨッちゃん」などと軽々しくあだ名で呼ぶとき、実は一見親しみの感じさせる呼称の裏に校長の個的な人格に直接触れることを期待する、いわば一線の踏み越えといった彼の密かな企みがそこに発揮される。立場や権力によって虚飾された権威の一部分を剥ぎ取り、自分と同じ一人間にまで引きずり下ろし相対化し自らに近づける。
     その結果、期せずして周囲の児童からの「恐れ知らず」という評判を手にすることが出来る。また教師は恐慌や腹立ちよりさらにも、自分が全てを把握し調整、操作可能な、どこまでいっても所詮子どもという枠を半歩でも踏み越えた者に対し、実際には全体像を掴み切れていないと思い知らされたことへ、根源的な気味悪さを覚えたのではないか。つまり彼という児童から提出された、無力な付き従うのみの存在として規定した大人への、一つの反抗の態度だったのではなかったかと私は見て取るのだ。
     あくまでも憶測、というよりかは現時点の私から見た面白がりとしての視点であり、それにしても彼をある意味で買い被り過ぎといえるかもしれないが。
     確かにいくらかの子どもでは社会の強固さを知り驚かされると同時、自らの無力さとの兼ね合いからそれを無視するか認めないか、または理解が及ばないままではあっても脊髄反射的な、あるいはもう少し根源的な要請からとりあえずの、しかし止むに止まれぬ攻撃性・嫌悪を代表的とされる対象へ向けることもある。余程こじらせない限り、そう遅くない時期に誰もが悟らされるにせよ。

     大体彼と私にどんな関係があったのかを全く憶えていない。そういえばそれが行われた場所は、確か人気のあまりない校庭の裏側だったはず。学校を囲う壁とグランドの間には緩衝地帯のような小さな森があり、そこを訪れると静かで気持ちが落ち着く場所というわけでも全然なく、むしろ日中は鬱蒼とした木々に日を遮られ昼間でもただ薄暗い、少しばかり陰気な感じのするところだった。
     中程まで行くとちょっとした庭園風の小さな池があるのだが、欄干のない古びた石橋が架かった袂近くでの出来事だったと思う。一度あったきりで、以降声を掛けられたこともない。




    [貴方の応援が励みになります!!]

    エッセイ・随筆ランキングへ
    にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
    にほんブログ村
    関連記事
    スポンサーサイト
    天気予報

    -天気予報コム- -FC2-
    プロフィール

    Ununz

    Author:Ununz
    Ununzです。自作小説・エッセイ・他雑文・ 夢日記・旅行記を発表していきます。御用の方は[junejulyonline55@gmail.com]か、ページ下部にあるFC2メールフォームからお願いします

    なおリンクを随時募集しております。相互リンクを御希望の際はカテゴリ【リンク関連】へコメントを頂ければ助かります

    ランキングに参加しています
    まだまだ、もっと大きくなります。これからです
    最新記事
    月別アーカイブ
    カテゴリ
    全記事表示リンク

    全ての記事を表示する

    お気に入り 修正版
    登録&ひろがるリンク(BlogPeople用)
    ブロとも一覧

    LEVEL1 FX-BLOG
    リンク
    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    メールフォーム

    名前:
    メール:
    件名:
    本文:

    検索フォーム
    RSSリンクの表示
    CustomRssReader
    村内回覧板
    QRコード
    QR
    カウンター
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。